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なぜ小さいスピーカーで重低音が出せるのか (4)

毎月専門家のゲストをお招きして、旬なネタ、トレンドのお話を伺います。


低音の秘密を探る対談も今回で最終回。ソニー株式会社の音響デバイス技術開発部 関 英木さん、ULTの商品企画を担当した滝本 菜月さんにお話を伺っていく。

今回はこの5月に新シリーズとして登場した「ULT POWER SOUND」シリーズのお話しを伺っていく。ご承知のように低音を重視したシリーズとして、大型の「ULT FIELD 7」、ポータブルサイズの「ULT FIELD 1」、ワイヤレスヘッドフォンの「ULT WEAR」の3種類を同時に投入した。今後はこれ以外の商品も、ULTシリーズとして登場するだろう。

一方で従来低音重視のシリーズとして展開してきたXBシリーズは終売となる。なぜ今このタイミングでシリーズを一新することになったのか、音楽トレンドやライフスタイルの面から探っていく。


小寺:今回ULTシリーズを立ち上げたわけですけど、以前のXBシリーズは終了という格好になるんですよね。このタイミングでブランドを変えて新展開をしようという理由はどういうところでしょう。

滝本:Extra Bassをやっていた当時って、一番流行ってた音楽がEDMみたいなものでした。一方で昨今は結構ジャンルをまたがって、低音表現がすごく特徴的な、すごく低いところまで入ってるものもあります。いろいろな低音の表現があるようなところが、音楽トレンドとして変化してきているところを捉えています。

またコロナも落ち着いてきたところもあって、音楽ライブやフェスも再開してきました。生の音を体験した音楽ファンに対して、日常でも迫力の重低音や、まるでライブやフェスの場にいるような臨場感を体験できるような製品をお届けしたいというところから、ULT POWER SOUNDシリーズをこのタイミングで新たに提供開始した、という経緯になります。

小寺:なるほど。ULTシリーズって、タイミング的には先にアメリカで発表になってませんでしたっけ。

滝本:そうです。プレスリリースのタイミングは結構ワールドワイドで、英語でまずYouTube上で発表して、そこから各エリアでのプレスリリースというような形になっています。

小寺:商品展開の面でも、米国向けは一番でっかい「ULT TOWER 10」があるわけですけど、日本では売ってないという。日本で売らない理由はなんですか。

滝本:本当に大きいパーティースピーカーと呼ばれているようなところですね。そこはアメリカ限定というよりは、ラテンだったりとかアジア、インドだったりとか、欧州でもあるんですけど、結構ホームパーティーだったり、あとイベント、教室とかも含めて、大音量で音楽を楽しみたいというニーズに合わせてご提供している製品になります。特にアメリカだけというわけではなく、ホームパーティーのカルチャーがあるようなエリアをメインに、日本ではちょっと大きすぎるULT TOWER 10という製品を作っております。

関:ULTは重低音のコンセプトではあるんですけれども、Extra Bassシリーズの後継シリーズというわけではなく、また別のコンセプトを持った新シリーズということで、今回新たに出させていただいているところです。

小寺:わかりました。とはいえですね、日本でも売られている「FIELD 7」もまあまあでかいですよね。あのぐらいのサイズでも、やっぱり個人で買われるんですかね。

滝本:そうですね。個人で購入されるお客様もいらっしゃいます。国内でも結構ダンスのトレンドが上がってきてるので、ダンスの関係者だったりとか、あとはイベントの運営をされている方とか。

あとはやっぱりすごく低音が大好き!みたいな方は、大きいのを購入していただけるお客様が、日本でも結構さまざまいらっしゃいます。

小寺:ああ、わかります。最近、うちの妻がスポーツジムでダンスをやってるんですけど、ああいうダンス教室って、そこにちょうどいいサイズのスピーカーがないみたいなんですよね。そういうところには結構いいかもしれないですね。

滝本:そうですね。やっぱりせっかく踊る時はビートを感じながら踊りたいというところはあるので、ダンスのサークルだったり、学校のサークルだったり、部活、教室みたいなスクールだったりはニーズがあるかなというふうに思います。

■高音質と低音重視は両立するのか

小寺:FIELD 7ってLDACでも通信できますけど、いわゆるハイレゾと、低音重視の方向性みたいなのって、設計的には両立できるんですかね。

関:技術的観点でいくと、ハイレゾという言い方がちょっとあれだとしても、高音質と低域重視というのは、ある程度両立できるんじゃないかなと思うんですね。

ただ、DSPだけを使ってガリガリに、100ヘルツだけ持ち上げたりとか、そういう形を取っちゃうと、当然帯域バランスを崩しちゃうだけですし、いわゆる特性的にも、ハイレゾスペックに沿わない形になっちゃったりがあると思うんですよね。

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