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ネットからリアルへ。川井拓也さんに聞く、「モノとコトの融合」(1)

今回からの対談は、「絶滅メディア博物館」館長、川井拓也さんにお願いししている。

なんだよあの川井さんなら知ってる、と思われる方も多いだろう。以前本メルマガでも、10年以上前に対談をお願いしている、ネットの著名人である。

こうして長いこと付き合いを続けていると、やってることがどんどん変わってくるのが川井さんの面白いところだ。技術者目線で見ると、川井さんのやってることって訳が分からないところがあったのだが、最近大学で芸術を勉強していると、だんだん川井さん的なものの見方というのが理解できるようになってきた、というのが正直なところなのだ。

そうした、これまで見過ごしてきた川井さんの活動をもう一度振り返って再評価するべきじゃないのか。そうした思いから、今回の対談をお願いしたところである。

ネットからリアルへ。川井拓也さんに聞く、「モノとコトの融合」(1)  


小寺:以前川井さんにお話を伺った時って、Ustreamが全盛の時代だったわけですけど。そこから今まで川井さんの活動を追っていくと、ネット上で人を集めるというところから、リアルで人を集めていくみたいな方向へ変わってきてるのかなという気がして、そこの流れをちょっと追いたいなと思ってるところなんですよ。

Ustreamとかをやってた頃って、やっぱり震災の前後ですよね。2011年前後で一番盛り上がったのかなという気がするんですけども。あの時に川井さんが書かれたUstreamの本とかを拝読すると、あの時からすでに僕が見ているUstreamと違うものを見てたんだなというのも、今さらながらちょっと思うところなんですよ。

というのは、僕はUstreamってテレビメディアに近いものだと思ってたんですけど、川井さんはどっちかというと、「Ustreamをやるような人」を見てたんじゃないのかなという気がしていて。

川井:当時、そらのちゃんという人がUstreamで最初の日本のスターになった感じがあったと思うんですけど、やっぱり普通の女の子がいろんなイベントから中継をすると。そんなに技術的知識がなくてもハンディカム1個持って、その場所のムードをみんなに伝えるという。それが最初受けてたのが面白かった。

小寺:うん。

川井:自分自身は少しテクニカルなことは知ってましたけども、ああいう感じを面白がってたとこはありますね。だから、もちろん完成されたイベントが中継されるというものより、僕が興味があったのは、プロセス。向谷さん(向谷実:ミュージシャン)とかがレコーディングをやってる途中を、メイキングとしてライブ中継するとか。

文化祭なんかが行われる時に、文化祭ってその前夜が楽しいわけじゃないですか。そういう、途中のプロセスを配信できるというのが、あの当時、Webカム1個でできるようになったことを面白がってたとこがありましたかね。

小寺:ってことは、イベント性みたいなものを見てたってことですかね。

川井:そうですね。同時性ですよね。普通のコンテンツとかイベントとかもそうですけど、準備の段階というのは公開しないものじゃないですか。それはスタッフが粛々とやって、映画もそうですけど、3年、5年かけて公開の時にプロモーションするわけですけど、そうじゃないことができるのは、逆にそういう風習がない素人の人だったり、AKB的なことですよね。途中を応援していくことによって“成長”を見るみたいな。

2014年9月に開催された「タイムラプス部」イベント

そういうのにすごくUstreamが向いてたし、そこが面白かった気はしましたね。僕が受けた仕事はちょっと、いわゆるイベントの配信とか代行配信に過ぎないので、それほど革命的なことはなかったんですけど、個人的には面白がってたのはそういう部分だったと思います。

小寺:Ustreamをキーにして、いろんな人が集まってきて。で、タイムラプス部とか作ったじゃないですか。あと、UST工学部とか。

川井:その節は司会ありがとうございます。あれは面白かったです。

2014年9月に開催された「タイムラプス部」イベントで司会を務めた

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