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「海外渡航」の今(3)

今回の対談は、PC/IT系ライターの矢作晃さんにお願いしている。

今年1月頭にCES2022が開催された。日本ではオミクロン株の感染爆発直前で、頑張れば渡米して取材できるギリギリのタイミングであった。ライター仲間でも渡航をキャンセルする人も多かったが、矢作さんは実際に渡米してCESを取材してきた。

日本に帰国する際にも、現地でのPCR検査が必要だ。それがないと、航空会社が帰りの便に乗せてくれないからである。だが日本で認められている検査方式が限定的なので、それを海外で行なうとなると、日本ではあり得ないことが普通に起こる。(全6回予定)


小寺:取材終わって出国のほうへ移るわけですが。まず、米国出国に際しては何を用意しないといけないわけですか。

矢作:日本への入国がいちばん厳しいわけです。まず現地でPCR検査して陰性という条件があるんですけど、日本はね、検査方法、検体の採取方法というのがすごくうるさいんですよ。

小寺:ああ。

矢作:これはもう、去年アメリカから帰国したいと思った人が散々はまってたことで、アメリカのどんな検査機関を使っても、アメリカでやってる検査方法だと、厚生労働省がOKださないんですよ。

小寺:おお……それは。

矢作:カリフォルニアのシリコンバレーのあたりに日本人がいっぱいいるので、ようやく日本が要求する検査方法をしてくれる医療機関が出てきた、とかいう話になってたわけ。だから帰国前に、わりと「どう検査するか」というのがかなり重要だったんですよ。

小寺:うん。

矢作:で、いろいろ下調べしたら、ANAが紹介してるのは、たぶん日本語ができる医者かなにかなんですね。やっぱりそこは至れり尽くせりの航空会社。でもそこは個人クリニックなので、平日の朝9時しかやってないんですよ。

小寺:まあ、普通の病院ならそうなりますよね。

矢作:で、個人クリニックだからストリップ通りになんかないし、350ドルぐらいするんですよ。

小寺:うわあ、まあまあなお値段しますね!

矢作:うん。で、そのあといろいろ調べたら、トランプタワーとウィンの間に中国資本のリゾートワールドという新しいホテルができたんですよ。ホテル自体はヒルトンが運営してるんですけど、お金を出してるのは中国なんですよね。で、そこにクリニックができたと。

小寺:おっ、いいじゃないですか。

矢作:そこはちゃんと、観光客向けなので、日本人向けの書式を出してくれる。日本語の、厚生労働省フォーマットというのがあるんですけど、それを作ってくれる。で、それが199ドル。いけるじゃん、これだな、とずっと思ってたんですよ。12月の中旬ぐらいまではね。

小寺:うん。

矢作:で、わりと年末の押し迫ったころにCESが、アメリカ以外から来た人には、帰国用のPCR検査を補助する、と言い出したわけですよ。そりゃ、199ドル浮くわ、と思うじゃないですか、単純に。でも、僕らは過去何回もアメリカに騙されてきたわけじゃないですか。

小寺:あははは、騙されてきましたねえ(笑)。

矢作:うん(笑)。で、CESの日本の広報代理店というのがあって、そこからもメールが来たんですよ、日本語で。「海外からの来場者には、CESが帰りの便のPCR検査を提供いたします」って。もう絶対ダメだと思って、すぐメールしたんです、広報に(笑)。

小寺:はははは(笑)。信じてない。

矢作:「これ、日本の厚生労働省のやつはうるさいんだけど、大丈夫ですか?」と聞いたら、3日ぐらいしてから返事があって、「向こうは『大丈夫だ』と言っている」という一番ダメな返答が来たんです(笑)。

小寺:はっはっは(笑)、「向こう」ってアメリカでしょ?

矢作:そう、「アメリカが大丈夫だって言ってる」という。これは信用ならないな、と思ったわけですよね。とりあえず会期が始まって、会期中3日間だけなんですよ、CTA(Consumer Technology Association/CESの主催者)が提供してくれる検査って。

小寺:なるほど。

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