小寺の論壇:次の技術トレンドは「繋がる」。InterBEEで見えてきた世界
知財、IT産業、ネット、放送、買ったもの、ライフハックなど、コデラの気になるところを語ります。
InterBEE2023を取材したのはもう先々週の話になるが、これから徐々に各メディアで細かい部分に特化した記事を書いて行くつもりである。今どのネタをどのメディアに書こうか仕分けしているところであるが、技術トレンドというよりは未来へのシナリオに近いネタがあるので、ここで先に大放出してしまいたい。
■コンプライアンス強化の裏で活躍するAI技術
昨今はテレビ番組もコンプライアンスが非常に厳しくなり、特に番組と無関係なものや人の写り込みは、極力ボカシを入れるようになっている。これが1人2人ならまだしも、街の雑踏を手持ちカメラが歩くようなシーンでのボカシとなると、とたんに難易度が上がる。従来の手作業による追っかけでは、2分程度のシーンでも、ボカシを入れるだけで5時間ぐらいかかるという。
そもそもボカシの付加は、生産的な作業ではない。こうした非クリエイティブな作業のために編集者は5時間も拘束され、制作会社は5時間分の編集費を払わなければならないわけで、番組制作費を圧迫していた。
そこで2年ほど前から、AIを使った画像解析をベースに自動でボカシを入れられないかというトライアルが続いていた。昨年筆者は新型コロナウイルス感染のためにInterBEEを取材できていないので、ちょうどこの辺が見逃していたトレンドである。
株式会社Vuenceが開発した「MetaVu」は、ボカシ専用のツールだ。ボカシを入れたいシーンを切り出してVetaVuへ読み込ませ、顔認識技術を使って顔の位置を特定し、そこにボカシをかけるところからスタートした。
今では多くの現場の声をフィードバックした結果、人物の顔が隠れても追跡できたり、ナンバープレートのようなものもピンポイントでボカシが入れられるようになった。
また人が画面外からフレームインしてくるような場合や、顔がわからないほど遠くへ行った場合に突然ボカシが現われたり消えたりする違和感を押さえるため、ボカシをフェードイン・アウトできるようになった。
さらに、企業の看板など文字をぼかしても配色でわかるようなもの、例えばセブンイレブンの店舗外装のようなものに対応するため、ボカシをモノクロにするという機能も追加されている。
トラッキング機能も追加され、特定の人物に矢印を付けて追従させると行ったこともできる。すでにフジテレビなどで導入されており、成果を上げているという。
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