小寺の論壇:揺れ動くジャーナリズム、「誤報なき報道」はあり得るか
4月7日、朝日新聞は、外交や米国・中国を専門分野とする編集委員の峯村健司記者を停職1カ月とする懲戒処分を発表した。もともと峯村氏は以前から退職の準備を進めており、処分の如何に関わらず、20日にも退職の見込みだという。
・朝日新聞社編集委員の処分決定 「報道倫理に反する」 公表前の誌面要求
https://digital.asahi.com/articles/DA3S15259004.html
記事によれば、ダイヤモンド編集部が安倍元総理に外交や安全保障に関するテーマでインタビューを行なったが、峯村記者が翌日夜、インタビューを担当した副編集長の携帯電話に連絡し、<「安倍(元)総理がインタビューの中身を心配されている。私が全ての顧問を引き受けている」と発言。「とりあえず、ゲラ(誌面)を見せてください」「ゴーサインは私が決める」などと語った>という。
この行為に対して、朝日新聞は報道倫理に反し、極めて不適切として、上記の処分を決めた。
一方で峯村氏はnoteにて、朝日新聞社の処分は不公正として、以下のエントリーを上げている。
・朝日新聞社による不公正な処分についての見解
https://note.com/kenji_minemura/n/na8bcec8efb30
詳しくは実際にエントリーを見ていただくとして、上記の行動について「最大の政治トピックの一つになっているニュークリアシェアリング(核共有)について、重大な誤報記事が掲載されそうな事態を偶然知り、それを未然に防ぐべく尽力し」としている。
安倍元総理としては、週刊ダイヤモンド側にニュークリアシェアリングに関して事実誤認があり、それが誤報として記事化されることを懸念したことから、かねてより安全保障分野の問題で交流があった峯村氏に相談したようだ。
週刊ダイヤモンド側からは、安倍氏側に対してファクトチェックを求めていたようだが、安倍氏が海外出張してしまうため、期日までに確認できないという。そこで安倍氏が峯村氏にファクトチェックを依頼したことから、話がややこしくなった。
峯村氏は週刊ダイヤモンドの記者に対して「全ての顧問を引き受けている」と詰め寄り、内容を見せるように依頼したが、拒否されている。
処罰の内容としては、朝日新聞記者行動基準の「特定の個人や勢力のために取材・報道をしない」「取材先と一体化することがあってはならない」という部分に違反したという。
■行動基準違反があったのか
峯村氏は行動基準違反について、反論している。「特定の個人や勢力のために取材・報道をしない」に関して、自分の行動は取材や報道ではないとする。過去に政治取材をしたことがなく、安倍氏は取材対象ではないというのが根拠である。
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