小寺の論壇:「AIが仕事を奪う」? 2例を分析してみる
知財、IT産業、ネット、放送、買ったもの、ライフハックなど、コデラの気になるところを語ります。
驚くことに、生成AIが社会にインパクトをもたらしたのは、なんとまだ今年の話である。代表的なChatGPT4は、今年3月15日リリース。そこからあっという間に「生成AIで何が変わるのか」といったテーマが大注目となった。
多くの人が興味津々だったのは、自分の仕事にどう使えるのかということより、AIによって仕事を奪われるのは誰か、という事であった。運転手、スーパーの店員、一般事務職、ライター、法務・会計関係の士業といった職業は、AIに仕事を奪われる筆頭とされた。
とはいえ、物理的にものを動かすといった職業は、ロボティクスと組み合わせなければ実現できないわけで、スーパーの品だし作業が今すぐAIに取って変わられるわけではない。一方でライターも士業も、今ChatGPT関連の書籍を探してみると、「初心者のための〜」から始まって「弁護士業務に役立つ〜」など数多くの書籍が出版されており、AIがわかるライターや弁護士先生は大忙しである。
それが一段落すれば、ということかもしれないが、基本的に企業の法的課題の解決は、AIにはできない。大丈夫かをAIに聴いて、大丈夫だと言われたからやりましたとする企業はないだろう。やはりそこは本物の弁護士先生に依頼するしかないし、AI自身も法的な責任を避けるため、具体的なところは弁護士に相談するべきと回答するケースが多い。
今回は、誰かの仕事を奪うとされた分野のAIサービスの2例を見ながら、本当にそういうことが起こるのかを分析してみたい。
■社内規定専用AI「KiteRa」の場合
株式会社KiteRaが提供する「KiteRa」は、社内規定の改定を支援するAIサービスだ。例えば新しく関連法の改正があった場合、それに基づいて就業規則などの社内規定を改定しなければならない。これをAIが補助してくれる。
・KiteRa
https://kitera-cloud.jp/news/20230710pressrelease01/
筆者もサラリーマン時代に就業規則の改定ドラフトを作ったことがあるが、改正による条項をどこに差し込むのかを考えなければならない。また差し込んだら条文番号が後ろにズレるので、他の規定、例えば詳細を規定した覚書や契約書等が参照する条文番号も全部書き直さなければならない。こうした面倒な作業を、AIがやってくれるサービスである。
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