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GIGAスクールを支える「ロイロノート・スクール」の舞台裏(1)

毎月専門家のゲストをお招きして、旬なネタ、トレンドのお話を伺います。


今回からの対談は、株式会社LoiLo代表取締役 杉山浩二さんにお願いしている。多くの人は、誰? という感じだろうが、「ロイロノート・スクール」の開発者といえば、おわかりになる方も多いだろう。

現在GIGAスクール構想によって小中学校に1人1台端末が導入された。選択肢としてはiPad、WIndows、ChromeBookのいずれかを選ぶことになっているが、iPadの導入台数はおよそ210万台で、シェア28.1%となっている。

このiPadのほとんどにインストールされているのが、学習支援ツールの「ロイロノート・スクール」である。

元々は動画編集ソフトの「ロイロスコープ」というアプリで、2008年に一度レビューしている。

その後、LoiLoからご連絡をいただき、マニュアル本を作りたいというご相談をいただいて打ち合わせなどもさせていただいたが、教育向けの「ロイロノート」に軸足を移すことになり、立ち消えになったという経緯がある。

当時のLoiLoは、杉山浩二さんは開発担当で、お兄さんの杉山龍太郎さんが社長で営業担当という格好だったが、今はお二人で代表取締役になっている。

学校向けiPadのほとんどに導入されるアプリに成長した「ロイロノート・スクール」。そうした経緯について、全4回でお話を伺っていく。


小寺:GIGAスクール構想でiPadを導入した小中学校って大体3分の1ぐらいあるのかなと思ってるんですけど、その中でロイロノートの採用率って結構高いと思うんですね。現時点での出荷本数とかって、わかるんですかね?

杉山:あ、正確なところはわかんないですね。

小寺:わかんないんですか(苦笑)。

杉山:トラフィックとしては把握してるんですけど、販売形態としては1年間無料とかやってたり、短い無料期間とかもあったりして、その無料期間を出荷本数としてカウントするのかどうか。その辺が意外と難しいんですよね。

小寺:なるほど。ちょっと今現在利用されている「規模感」みたいなのが知りたいんですけど。

杉山:DAU(デイリーアクティブユーザー)でいうと、227万人と。

小寺:は? 227万人?

杉山:227万アクセスというか、人、ユーザー。1日に1回でもログインした人が227万人いる感じです。

小寺:これ、単一のアプリとしてはものすごい数じゃないですか。

杉山:すごい数ですよね。全体として学校関係者って1300万人ぐらいしかいないんで。そのうち200万人ぐらい使ってるので、本当にシェアとしては、20%ぐらい。それぐらい毎日使ってるってことですよね。


株式会社LoiLo代表取締役 杉山浩二さん

小寺:いやー。以前のロイロを知っている者からすれば、まあよくここまで成長したっていうか。

杉山:本当にもう一気に。結構サーバ落ちたりとかして、多重化が大変でしたけど(苦笑)。10倍ぐらいわりと余裕持ってるかなと思ってたら、全然リソース足りなくて、初めは大変でしたけど。

小寺:ああ。227万人来るんじゃあ…

杉山:全員でもう、お通夜みたいになって(苦笑)。「うわあ、何これ……あー来た!」「やべえ何これ!」みたいな。CPU(使用率)10パーセントから、いきなり100パーに張り付いて、うわあああ、なんじゃこりゃあ!みたいな。

小寺:ロイロノート使うと、そちら側のサーバーにどんどん負荷がかかっていく感じ?

杉山:データベースがボトルネックでしたね。他のものはスケールするんですけど、データベースは単純にはスケールできないんで。サーバーを一番いいやつにしても、結局全然性能が上がらなくて、お金かけても全然ダメで。結局、MySQLのバージョンが古くて、それをアップロードしたら直りました。そのあと他のやつに乗り換えていったりとかして、だんだん強くなってるんで。今は全然問題なくなってます。

サーバの負荷状況はサイトから誰でも確認できるようになっている

小寺:ああ、よかったですね。これ、使われているバージョンとしては、やっぱりiPad版が一番多いですかね。

杉山:そうですね。iPad版とWeb版とがあるんですけど、Web版の方が多分4割ぐらいで、iPadの方が6割ぐらいな感じですかね。アクセス数的には。

小寺:要はローカルで動くか、クラウド上で動くかの差なんですか?

杉山:機能的にはネイティブで書いてるのか、ブラウザベースで動くのか、という違いです。iPadのアプリの方は完全にもうネイティブで作ってるので。Web版のほうはWebベースの技術で。Canvasでガリガリ書いてる。

小寺:できることは同じなんですかね。

杉山:できることは基本的には同じですね。ちょっとリリースするタイミングの差みたいのはあるんですけど。先にiPadでとりあえず実装してみて、それをweb版にとか。逆にWeb版の方を先にやってかたiPadの方に、とか。並行していろいろやってる、みたいな感じです。

■「ロイロノート・スクール」誕生の経緯

小寺:GIGAスクール構想で導入されたiPadでロイロノートを使っていくみたいな流れって、営業をかけたりとかしたんですか。

杉山:営業はもうかなりしてますね。もともと学校向けにはGIGAスクールが始まる前から営業やってましたけど。自治体って、基本的には入札じゃないですか。なので、ほっとくと全然何も入れてくれないっすよね。

小寺:ああ、そういうことなんですね。

杉山:そうそう。やっぱり、業者さんが入れたいというか、儲かる製品を持ってくるだけなんで。教育的な効果とか、使いやすさとかほぼ関係ないです。

小寺:マジか(笑)。

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