見出し画像

小寺の論壇:テレビCMはどこへ向かうのか。TBSの調査から見えてくるもの

知財、IT産業、ネット、放送、買ったもの、ライフハックなど、コデラの気になるところを語ります。


5月30日、TBSテレビはテレビCMとインターネット広告の効果について比較調査した結果を公開した。実際に調査したのはビデオリサーチである。


これによれば、「購買にあたって非耐久消費財カテゴリー(食品・飲料・日用品など)はインターネットでの情報行動が少なく、購買ファネル全体においてテレビCMが最も効果的であるということが確認された。」という。

購買ファネルとは、昨今マーケティングでよく使われる考え方で、顧客が商品を認知し、購入するまでの一般的は心理変化の段階を示したものだ。詳しくは以下のサイトに解説がある。

 

購買ファネルの一般的な形(「ファネル」の基礎を知る!マーケティング戦略に必要な知識と活用例:One Marketingより引用)

よってテレビCMは未だその価値を失っていないということを言外に言いたいのだろうが、データの見方を変えれば、今後のCM出稿にも大きく影響する調査である。今回はこの調査結果を、別の見方で見ていこうと思う。

■グラフをもう一度分析する

調査結果詳細として、最初に「非耐久消費財、耐久消費材カテゴリーにおける購買時の情報行動の比較」というグラフを提示している。非耐久消費財とは、食品・飲料・日用品といった、いわゆる安価な消耗品を指す。一方耐久消費財とは、自動車やデジタル機器など、高価で長く使う製品を指す。このグラフの中にテレビCMは含まれておらず、様々なネット広告を比較しているのみである。

(TBSテレビ、消費財カテゴリーの購買におけるテレビCMの優位性についてインターネット広告と比較調査:Screensより引用)

このグラフを見る限り、非耐久消費財(青)についてはどの情報ソースも均等に見られており、決定打に欠ける。とはいえ、複数のアプローチから均等に影響をうける状況であるのがわかる。

一方でこれを見て、『非耐久消費財(食品・飲料・日用品など)は耐久消費財(自動車やデジタル機器など)と比較して、購買にあたり「インターネットでの情報行動が少ない」という傾向が確認できた。』という報告書のまとめは、このデータだけからは見て取れない。

一方耐久消費財(緑)については、商品・公式サイトの影響がぶっちぎりの50%を超えており、公平に評するならまずはその部分の高さに言及すべきであろう。また検索で詳しい情報やクチコミを探したというもの40%を超えており、いわゆるレビューサイトの影響もかなり決め手になっている。

次のデータとしては、非耐久消費財カテゴリを購買ファネルに基づいてメディア分析したものだ。

(TBSテレビ、消費財カテゴリーの購買におけるテレビCMの優位性についてインターネット広告と比較調査:Screensより引用)

これによれば、初期段階の接触・商品認知においてはテレビCMが圧勝しており、2位の店舗にある広告を大きく引き離している。やはり対象を絞らず大量に捲くというテレビCMは、認知には大きく影響するようだ。

ただ最終的な購買からすれば、店頭広告とほとんど差がない。ということは、商品を買った人の半分ぐらいは、店頭でお勧めを見て初めて商品を知って、そのまま買っている。ある意味店舗が推せば、そのまま推されて買っている。テレビで見ていなくても、「お買い得」とかのポップがあればそれを買う、という姿も見て取れる。

実際筆者もハムやウインナーなどは、テレビで見たことがある商品よりも、その場でイチオシのお買い得品を買っており、消費財はその場の判断に左右されやすい傾向がある。それは、失敗してもそれほど後悔しない程度の金額であり、実際に買って食べて色々試してみたいといったジャンルだからである。

一方でお中元・お歳暮といった贈答品は、自分が知っているだけでなく、相手も知っているであろうテレビ広告された品を選ぶ傾向が強い。これは良いものという認知のされ方というよりも、テレビCMで見かけるほど有名な品、高見えする品を送るという、気持ちの問題であることが大きい。

ここから先は

1,665字 / 2画像
この記事のみ ¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?