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小寺の論壇:こうなるとわかっていたのに… 北九州母娘刺傷事件

知財、IT産業、ネット、放送、買ったもの、ライフハックなど、コデラの気になるところを語ります。


8月13日に北九州市で発生した母娘刺傷事件。幸いにして親子の命は助かったが、刺した少年は直後に電車にはねられて死亡した。現場に残されたDNAが死亡した少年と一致したことから、すでに事件は収束したかのように報道されている。

少年は葛飾区に住んでおり、北九州市に土地勘があったとは思えないが、それでも娘の自宅を把握できた理由は、位置情報共有サービス「Zenly」にて情報を把握したからではないかと見られている。事件直後、刺された娘が「GPS画面をスクリーンショットしていたみたいで、それで住所が分かって刺された」と言っていたという証言がある。

Zenlyは2015年にフランスZenly社が開発したアプリで、2017年にはSnapChatの運営元であるSnap社に買収された。SnapChatにも同様の機能が盛り込まれているが、あまり利用されておらず、Zenlyがそのまま利用されているようである。

日本で話題になり始めたのは2019年頃からで、当時からすでに情報リテラシーやセキュリティの専門家はその危険性を指摘して警鐘を鳴らしてきた。だがメディアは、「まさかそんなアプリが流行るわけないだろう」として、あまり積極的に扱ってこなかった。

Zenlyは、同アプリ上で友だちになった相手の位置情報を地図上で表示するもので、そこでの滞在時間やスマホの電池残量なども表示される。もちろん、自分の情報も同じように友だちに公開される。

インストール時には、GPSの位置情報を「常に」共有するよう求められる。「常に」に設定しないと初期設定が進まないよう設計されており、こういうところも筋が悪いアプリである。

位置情報を「常に」許可しないと先へ進めない

ザックリとした位置情報は、広く誰にでも公開することができるため、同じ地域に住む人と繋がりやすい。普通のSNSのように、電話番号のインポート機能もあり、そこから利用者を探す事もできる。

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