小寺の論壇:「排除ベンチ」は誰から何を守っているのか
ここのところ個人的に気になっている話題が、いわゆる「排除ベンチ」についてである。ことの発端は、4月11日のこのツイートのようだ。
・京橋のデカいモンベルの前に、北欧っぽい可愛らしいデザインの〝排除〟ベンチという、コンセプト的にはバンクシーが嫌がらせで設置する様な代物だよなと思った。
https://twitter.com/DiRRKDiGGLER/status/1381079717059555329
これに関して、withnewsというメディアが深堀りしはじめてから、話題になったようだ。
・巧妙化する「排除アート」 誰にもやさしくない都市が牙をむく時
https://withnews.jp/article/f0210712003qq000000000000000W02c10101qq000023308A
・「排除ベンチ」抵抗した制作者が突起に仕込んだ「せめてもの思い」
https://withnews.jp/article/f0210713003qq000000000000000W08k10201qq000023319A
ただ今回のムーブメントの前、2020年に美術手帖が「排除アートと過防備都市の誕生。不寛容をめぐるアートとデザイン」というタイトルで、東北大学大学院の五十嵐太郎教授の寄稿文を上げている。上記withnewsの記事も、この寄稿を下敷きにしているものと思われる。
・排除アートと過防備都市の誕生。不寛容をめぐるアートとデザイン
https://bijutsutecho.com/magazine/insight/23127
実際にこうした排除ベンチは、首都圏ではよく見かけたものだ。既存のフラットなベンチに、わざわざ仕切りをあと付けしたものも多く見られる。ホームのベンチまで、ただの金属パイプになっている駅もある。またベンチだけでなく、花壇の縁石のようなところにまで仕切りを設けてある公園もある。
こうした手すりや仕切りの目的は、人が横にならないようにするためである。端的に言えば、ホームレスの宿化することを防止するためと言っていいだろう。
しかしただ嫌がらせするだけでは、そこで寝そべるつもりのない人にも不快感を与える。そこでアート的な被せものをして、オブジェとして設置するといった方法が取られることとなった。
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