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『あの夢をなぞって』ハッピーエンド考察その9

 ここからサビです。通常のJ-POPであれば、1番サビ、1番サビ繰り返しです。ここからは『へビーローテーション』(AKB48)にふれないわけにはいかないでしょう。筆者も当初は非常に似ていると思っていました。しかし、ここでは高音弦楽器を聴いてみましょう(公式バンド譜にはない)。そのコードは焦燥感のある恋のコードといえましょう。『ひとは見た目が100%』(フジテレビ)でも出てくるコードです。この後、ここでも「♪不安~」のところでminorであるもののすぐにMajorになります。サビを繰り返します。歌詞に注目す要ると、1回目では
「♪夜をぬけて 夢の先へ 辿り着きたい 未来へ」、「♪きっと」
というように確信にはいたらず希望となっています。2回目では 
「♪今を抜けて 明日の先へ~」、「♪あの未来で 待っているよ」
と前向きに未来時制となっています。ここでもaメロが出てきました。コードもminorからMajorへの変化あがり、気分・和音が解消・解決されます。ここで1番がおわります。
 この後、インストの間奏が10数小節続きます。というのも、13小節が純粋にインストであり、14小節目は次から始まるCメロのアウフタクトととなっています。ここで少し奇数小節になっているように聞こえます。間奏の後半は歌のメロディラインをなぞっています。
 Cメロに入ります。「♪誰も知らない~」。このあたりのリズムは裏拍から入るというYOASOBIO風になっています(譜例3)。ボーカル以外の音も減ることで情景に集中させる効果を出していますし、描写をうきたたせています。「♪誰も知らない二人だけの夜~」。場所は2人だけでしょうが、どこなのかはわからなくて良いと思います。岡本真夜で言えば、「♪おやすみダーリン~」という詩があります。「♪未来と今~」という歌詞で予知夢が叶い、「♪キミとあの夢をなぞる」とされタイトルと一致します。時制も未来と現在が一致します。クライマックスに入っていきます。いったん決めのリズムが入ります。またサビがありここでも音がうすくなり、花火大会を描写します。「♪二つの未来が今重なり合う」でも予知夢が実現されたことが断定できます。
 この後ブリッジが3小節あります。少しくわしく見ておきましょう。コードはE♭からEになります。in Cの楽譜で言えば♭4個から#3個となります。A♭MajorからGMajorになります。YOASOBIらしい転調です。唯一この曲で3拍子系が現れ、簡単な決めもあります。
 最後のサビです。「♪ah, 夜の中で~」の3拍目でGPが入ります。別の記事で指摘されていることを元に解釈すると、空白が花火があがる前の静けさであり、その後の音が花火の音であることを強調させています(ブラームス:『交響曲第二番ニ長調』4楽章終結部)。「♪キミと二人辿り着いた未来で」と前とは違い変化したことをはっきりと現在形で話しています。サビの繰り返しでは下降音型が現れ、次第に落ち着いていきます。「♪響いた 好きだよ」というよう「響いているから」を「響いた」と受け、また冒頭のaメロの3回目で「好きだよ」として夢から現実になっています。リズムは少しかわり、話し方も確信のある現在進行形になります。音も減らされています。
 コーダではイントロと同様のインストのメロディです。メロディはシンメトリーをなしますが、歌詞としては夢から現実になってアシンメトリーとなっています。またMajorでハッピーエンドになります。最終音も簡単にならしてYOASOBI風といえます。
 どこまでも肯定的なのが多くのオーディエンスに受け入れられています。
(おわり)
 


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