マイクケーブルを比較したら、おっと誰か来たようだ
(2023年7月8日更新)
この記事は、マイクケーブルや機材ケーブルの違いに疑心暗鬼なDTMer(宅録ミュージシャン)やサウンドエンジニア対象です。自作マイクケーブルや某高級オーディオケーブルしか認められない勢は回れ右しましょう。
安くても使えるんだし、それで良くね?
初心者の頃などでお金の配分先をシビアにせざるを得ない時期は、CLASSIC PROのケーブルで済ませたりする。
安価な上に色や長さも豊富で文句はない。マイクやオーディオインターフェースとの相性次第では抜き差しで少々固かったりするけれども、肌触りも良くて取り回ししやすい。ノイズも乗らない。話はオシマイ、、、と思いきや、、、。
ところがどっこい我がスタジオにGLMが来てしまった
上の投稿を読んだ方にはご理解いただけると思うが、大音量再生が可能な音楽スタジオを手に入れた上にGLMシステムを導入してしまった。うん十万するシステム相手にCLASSIC PROのケーブルを挿しているのはどういう了見かということになりかねない。折角なので、ケーブル検証も兼ねて何本か試してみようという気になったのが、今回の投稿のきっかけ。
機材セッティングは以下の通り。直接の影響がありそうなところを交換していく。
前提として、スピーカの高さや角度、壁からの距離をGENELECの推奨する仕様に従ってセッティングしてからのお話。GENELECではないモニタースピーカを使っていても、リスニングポイントに対する角度調整だけで不満が解消されることはザラにあるので、ちゃんと見直してみましょう。お兄さんとのお約束だぞ。
今回のエントリーケーブルたち。
エントリー1
お金がなくてもあなたの優しさに溺れたい、マイクケーブル界の都合の良い恋人。
皆大好き、CLASSIC PRO MIX。金欠宅録バンドマン、音響学徒の味方。
肌触りが良くて綺麗に巻けるし、もうコレで良くね!?
エントリー2
マイクケーブル界のお母さん。
プロからアマまで品質を担保してきた業界標準(※異論認めます)のCANARE L4E6S。コネクタにNEUTRIK NC3(F&M)XX-Bを採用した、まさしく標準で固めたケーブル。この世界で業界標準というのは絶対的な価値を持つ(かもしれない)。肌触りも良い。
今回の条件においては1.5〜2m程度の取り回ししかしないので、ノイズ耐性において有意差がないのは予見出来るものの、4芯ケーブルによる抜群のノイズ耐性でもって安心且つ手軽にワイヤリングしたい場合はコレが一番コスパ良さげ。
エントリー3
マイクケーブル界のお父さん。
アメリカ産の太い音が欲しいと言うとコレが候補に上がる、BELDEN 8412。コネクタはエントリー2と同じく、NEUTRIK NC3(F&M)XX-B。実はアメリカではBELDENではなく、別のメーカーのケーブルがワイヤリングされることが多いとかなんだとかそういう話もあるぐらいには情報が錯綜している。なんでも良いのだろう(思考停止)。
肌触り良くない。なんかベタッとしていて、埃がいっぱい付きそう。取り回すの嫌だ・・・。
絶対採用したくない。
リファレンス曲はEric Clapton - Change the World
まずはCLASSIC PRO MIXを繋げた状態で耳慣らし。紹介順とは異なるが、CANAREから順番に聴いていこう。
1. リスニングレビュー(CANARE L4E6S)
上質な絹糸のような音。さすがお母さん。周波数全体でバランス良く聴こえる。嫌らしくない綺羅びやかさがあって、ボーカルの伸びもとても良い。中低音も変に靄が掛かることなく、前に出る。
ポップスにとても合いそう。
2.リスニングレビュー(BELDEN 8412)
まさに風林火山を掲げた武田信玄の如く芯の強い音。お父さんだね、って感じがムンムン。ケーブルカバーに粘り気があるだけあって(嫌味)、低域の粘りと高域のキレの良さは素晴らしいの一言。
ロックに合いそう。
ケーブルカバーの肌触りは、ホント無理。
3.リスニングレビュー(CLASSIC PRO MIX)
透明感のあるスッキリした音。後腐れなく付き合える都合の良い恋人(もしくは未満)といったところ。音の芯の痩せ具合を感じなくもないけれども、中高音域に重きを置くタイプのアコースティックな音源では本領発揮するのでは?と思った。
弾き語りに合いそう。ドル○バ、ドル○バ(2023年でもこれが通じることを祈る)
GLM Studioで禁断の測定をしてみる。
手元にGLM Studio付属の測定用マイクがあるので、実際のところどうなのか視覚化していこう。
3ケーブルでの再生時、マイクの位置は全く同じにして、温湿度も一致させた。測定者である自分は別室から遠隔操作で測定を開始。
グラフ内赤い線がルームレスポンスなので、ケーブルによる音質差が反映されているならここに出る。
まずは、GENELEC 8330Aの測定結果。
(上:CLASSIC PRO、中:CANARE、下:BELDEN)
嘘でしょ。肉眼で見ると全く一緒じゃん、、、。皆個性豊かなケーブルだったじゃないか。そんな馬鹿な、、、。
ということで重ねてみた。(3枚の画像をそれぞれ不透明度30%でスクリーン合成してカラー補正したもの。)
くぁwせdrftgyふじこlp;@:
次にGENELEC 7350A(ウーファー)の測定結果。
(上:CLASSIC PRO、中:CANARE、下:BELDEN)
嘘でしょ。肉眼で見ると全く一緒じゃん、、、。皆個性豊かなケーブルだったじゃないか。そんな馬鹿な、、、。(本稿2回目)
ということで8330Aの測定結果画像と同じく重ねてみた。(合成方法は同じ。)
BELDEN 8412のときに140Hzあたりが少し持ち上がっているような気がする!
なんだ!やっぱりケーブル変えて音が違うんだから、数値も違ってくるよね!
と思ったが、最初に添付したセッティング図をもう一度よく見て欲しい。
解散!
じゃあ、ケーブルをどう選べばいいの?
100m、500mといった単位であれば導体抵抗の値やら出力アンプ側の設定がどうとか色々ありそうだけれども、いま本記事で問題にしているのは1m、2mの話である。そこでどう選ぶか。
耳の好みで良いと思う。
聴いていて気持ち良いとかそういった主観的感想を大事にするのも時には必要。
なんだったら意味もわからず、肌触りだけで選んだりしても良いだろう。心の平穏を保つためにもヘッドホンのエイジングだのインシュレーターだのに手を出すのと似たようなものだ。
選ばれたのは
BELDEN 8412でした。
読者からすれば、あれほどまでに肌触りをディスったことによりフラグを立てているのは見え見えだっただろうけれども、、、。
決め手になったのは、リスニングレビューでも言及した、低音の粘り感と高域のキレの良さを感じたから。セルフプロデュースしているものであったりもそうだし、自分が好み・得意としている音響処理を考えた時に見えやすいものをと思うと、BELDEN 8412という選択になった。
GENELEC 7350Aが活き活きと鳴っているような感覚を覚えたのも大きい。
もし読者がケーブル選びにに迷ったとき、魑魅魍魎たちが著述して積み重ねてきたオーディオケーブルレビューの記事に当たると思う。でも、試しにまずは買って聴いてみるのが良い。リスニングしつつ比較してみると面白い発見があったりする。それこそ、本記事のリスニングレビューと異なる感想を持つこともあると思う。でも、それで良いのだ。
あなた自身の耳で聴いて、気持ちよく編集出来るのが一番だからね。
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残された謎
本記事終わりに最大の謎を残しておく。これまでの小難しい話を全てひっくり返すような話なのだが、リスニングレビューで自分が聴いた音は全てGLM Studioで補正した後の音である。
該当ケーブルを交換する
↓
GLM Studioで測定・補正する
↓
リスニング
実は上の手順で実施されたものである。私が抱いた感想の正体は一体何なのか。
最後の最後に謎が深まる始末である。ケーブルの話をすると、ろくでもないことが起こるだけはハッキリする回であった。おっと、誰か来たようだ。
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締めのお時間
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