
仮面をした男性(その4)
「都会で生きる男性の多くは仮面をかぶっている。やましいことがある者はたいてい仮面をかぶっている」
言うまでもなく、仮面をしている男性は世渡りが上手だ(じゃあ、そもそもそんな社会はどうなのよ?という話は抜きにして……)。
でも、そんな男性にも悩みはあるようだ(人間だから誰にも悩みはある!とか、そもそも悩んでいるから仮面みたいな陳腐な物をしているんじゃないの?という話は抜きにして……)。
ある男性は自分の存在意義を見失っているようだ。
例えるなら、自分の手で自分という存在をつかめていない状態。
これは仮面をしない人たちにはほとんど理解できない状態であり、世界でもある(まあ、わざわざ理解することもないんだけどね……)。
男性は自分という存在をつかめていない分、手が空いているから、自分の目についた物にとりあえず触れてみる。
そこで、男性は自分の触れた物が何かを知る。
でも、そこまで……。
男性は自分自身というものをわかっていないから、それ以上のことはしない(と言うよりできない。自分が何をしたいのかがわかっていないから……)。
ただ、こうして触れた物は男性の中に知識として残る。
自分のない男性は基本的に手が空いているから、このような行為を繰り返す。
そして知識を得る。たくさんの知識を得る……。
「でも、それってただの雑学でしょう?……」
はい。私もそうだと思います。だから、つまらないですし、そんな知識をひけらかしても、基本、人には伝わらないんです……。
「そんな訳のわからないことしか言わない人がなんで世渡り上手になれるの?……」
そうですよね。正直、私も疑問です……。
ただ、物事というのは理屈さえ合えば違った見方ができますので、仮にそれを実証するのなら、ある程度の知識が必要になってきます。だから、知識のある人はその時大切にされますよね……。
「そもそも雑学というのは知識にならないと思いますが?……」
そうですよね。私もそう思います……。
ただ「類は友を呼ぶ」とでも言うのでしょうか?……そういう人たちが集まれば、それなりの集団と言いますか、それなりのサークルと言いますか、そういうものができて、それなりの力だったり、立場だったり、発言権というものを得るのではないかと思います……。
「じゃあ、単なる雑学に過ぎないものが知識と同等になるのですか?」
いや、さすがにそこまではならないと思います。ただ「必要な知識」というものと「雑学程度の知識」というものを混同してしまう人もそれなりにいますので、そんな人たちが雑学の価値を無理やり押し上げているところはあると思います。
「うーん、それはひどい話ですね……それで、そんな理不尽な集団は認めてもよいのでしょうか?」
うーん、難しい話ですね……。
仮に、そのような集団を認めなくすることができたとしても、変われる人は少ないと思います。
だって、自分の存在意義を見失ってしまうような人たちなのですから……。
結局は、その辺に落ちている知識を拾うことくらいしかできないんです……。
「うーん、それでは何ともならないですし、困りましたね……」
はい、確かに……でも、そんな彼らにも呪縛と言いますか、制約と言いますか、そういうものはかかります……。
「ん?……呪縛?……制約がかかる?……」
はい、そうです。
実は、彼らは仮面を外せないのです。
仮面を外してしまったら、何も成長していない自分、そして、のっぺらぼうな自分に気づかされるだけですので……。
だから、彼らはこの先ずっと仮面を外すことができませんし、またそうやって生きていくしかないのです……。
「ふーん……それで、仮面をしているこの男性は悩んでいるのですか?……」
さあ?……どうなんでしょうね?……ハハハハハハ……。
「都会で生きる男性の多くは仮面をかぶっている。やましいことがある者はたいてい仮面をかぶっている」