大楠は何を語るのか
佐賀県の武雄神社奥にある楠木は、樹齢三千年とも言われる武雄の大楠。その雄大な姿は歴史を感じさせます。
人は数千年先の未来に何かを残したいと思ったとき、何をどうやって残すでしょう。
その一つに石を使う方法があります。ペトログリフやペトログラフと言われる、石に文字や絵を刻んで、記録やメッセージを残す方法です。未来に直接的にメッセージを残すことができます。
そしてもう一つ私が思うのは樹です。樹は形を変えながら数百年、数千年と未来を生きます。しかし、深く文字や絵を刻むことは、若い樹にとってはダメージが大きく、枯れる危険性がありますし、成長とともに判別不可能になるでしょう。すでに巨木となった樹だと何かを刻んでもじきに枯れてしまい、遠い未来には届かないでしょう。だとすると樹では何も残せないかと言うと、違うと思うんです。
願いを込めることができるんです。
私達は後世に何を残したいですか?
何を望み、何を願いますか?
そう問われると、この地が平和であり豊かであり、幸せであってほしいと願いませんか?
それらの想いは樹に宿り、御神木として祀られ、社を建ててその地が守られる。そうやって樹は多くの人の想いを受け継いでいくと思います。
いずれは枯れて朽ちるとしても、受け継がれた想いは、人によってまたどこかで新しい芽を出すはずです。
そこにはきっと素晴らしい空間が広がると思うのです。今そこにある楠木のように。