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【不定期通信】ポテトのMOTHER。③マジカント発動篇
YES or NO
MOTHERをプレイ中、どうしても「MOTHER」に関する感想文などをまとめたネット記事を読みたくなり、ほぼ日あたりを漁っていたところ、糸井重里が語る『MOTHER』のことば。にてあるシーンの核心に迫るネタバレを先に読んでしまった。
すなわち、あるシーンで一度しか選択できない「はい」か「いいえ」のことだ。
どうせそこへ至るのだから最初に受けた印象を噛み締めればいいと思ったものの、実際にその場へと至るに、やはりここは自分の体験として何も知らずに来たかった、と思ったので「MOTHER」未プレイの読者のために可能な限り遠まわしな表現をする。
「はい」か「いいえ」か、それは非常にむずかしい選択だった。
その「はい」が本当に「はい」ならそれはおかしいというか、ちょっと待ったが入るだろうという体験をマジカントでしている。
しかしここで「いいえ」と言うと、自分を裏切るし、「いいえ」と言った相手をも裏切るのではないかというイメージを持つ。
きっと昔の自分だったら、何の気なしに「はい」と何度もうなずくような気安さで答えただろう、とは思う。僕はそういう軽さがあり、そうやって(まだ両手で数えられるけれど)何人ものひとに「はい」と言ってきた実績が消されずに残っている。
ここは「はい」と言うのが社交的なコミュニケーションなんじゃないだろうか。最終的にはそんな下心もあって「はい」を選んだけれど、プレイヤーの僕は恥ずかしくなってボタンを押しながらうつむいてしまった。
そんなふうに遊んでいたらとんとん拍子に話が進んでちょっと待って! まだ整理がついてない! 情緒がおかしくなる! と思ったものだ。
そして最終ダンジョン、ホーリーローリーマウンテンの冒険は、最後の最後で進め方がよくわからず結局攻略チャートを読んだものの、イヴとスイッチオンラインの巻き戻し機能がなかったら何度も病院送りになっていたな……という過酷なものだった。即死級のPSIがどんどん飛んできたり、三人では到底対処しきれない強敵がわらわらと現れてくるので大変だった。
Take a melody. Simple as can be.
こうして記事にすると淡泊になってしまうが、エイトメロディーズをめぐる冒険の旅はリアルタイムで10日ほどかかったので、次はどんな冒険が待っているだろうとワクワクしながら朝を待って寝たり、見る場面場面でグッときたりすることがあった。
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有名な「エンディングまで、泣くんじゃない」のキャッチコピーはどちらかというと肝心なところで涙を流せなくなってしまう足かせだと僕は思っているけれど、終盤でもっとも感動した……と言うと陳腐でも、クイーンマリーから最後の歌を教えてもらうシーンで、この「エイトメロディーズ」を一緒に口ずさむ(ついている歌詞は覚えられないが……)と、やはりたまらないものがあった。
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そもそも僕は、MOTHER本編はやっていないけれど、ファミコン音源のエイトメロディーズはかなり好きといういかにも動画配信世代らしい人間だった。
この動画が好きで(自分が視聴していたのはニコニコ動画版)、よく布団に横になって聴いていた。観客が演奏の再現度に驚く声が入っているのも含めて、いい動画だと思う。
双極性障害で気分が沈み込んでしんどい時、このエイトメロディーズの旋律を聴くたびに涙と鼻水を流した。束の間こころが安らぐ感じがした。
「マリアが幼いギーグに愛情を注ぎこんで歌った子守歌なんだよな」という理屈は先んじて知っているけれど、それ以上に、この独唱のような、聖歌のようなフレーズに聞き惚れた。
ゲームの中のポテトにとって曾祖母にあたる彼女に会いに行くことができて、彼女の口から直接エイトメロディーズを伝えてもらうことができて、本当に良かったなと思う。
最後の戦いでもこの歌がカギになるわけだけれど、本当に武力じゃラスボスにはまったくかなわないんだな、ということを思い知らされた。「いしきふめい」にならないようにするだけで精一杯だった。
それでも完全に決着がついて、エンディングを迎えたあと…………ポテトたちが去っていったホーリーローリーマウンテンの洞窟で、プレイヤーの僕は立ち止まる(リセットしないとタイトル画面には戻らない)。
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この光景には見覚えがある。「Contact」というDSのゲームで、登場人物全員が姿を消した機械仕掛けの船内で、僕はゲームをリセットすることもゲーム機の電源を切ることもできず、ただ固まっていたことを。
「なんだ、またひとりぼっちになっちゃったのか」
そう思った。また僕のタマシイの15パーセントくらいが、ゲームの中に閉じ込められた。
一応、ポテトたちがこちらを向いた時点で別れのあいさつは言ったつもりだけどな。
そうして、そう遠くない未来、また次に「MOTHER」をやるときが来たら、今度は好きな献立を「たいのさしみ(鯛の刺身)」にしようかな……などと妄想した。
(終)