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こういうのを知ってるか?

五代雄介、こういうのを知ってるか?
古代ローマで満足できる、納得できる行動をしたものにだけ与えられる仕草だ。
お前もこれに相応しい男になれ。
(中略)
いつでも誰かの笑顔の為に頑張れるって、すごく素敵な事だと思わないか。
先生は……先生は、そう、思う。

仮面ライダークウガ第12話「恩師」より

 現Xで何かを下げて何かを上げようとする、ありふれた、けれど無視できない意地悪なポストを見てむかついた。

 僕は両方ともその作品が好きだから、両方取って、その人物に「あなたのおかげでそのことを知りました! ありがとう!」というリプライと一緒にこの写真を送り付けようとしていた(「あなたにもこのサムズアップの意味がわかるよね?」という仮面ライダーオタクとしての知識マウントとも言えた)のだが、該当の映画が地元の映画館で上映していなかったので、「ヒーローなら両方」作戦は失敗した。

 まあ、急に知らねえ男の笑顔が送りつけられたら「気持ち悪っ」と思ってその人の記憶にちょっとは残るかなといういたずら心に比べてデジタルタトゥーのリスクは高めだったけれど。

 ただ僕は、そのポストを見た瞬間からなんかむかついて、言ってみれば懲らしめてやらなきゃ気が済まないと思ってしまった。

 引用リプライでどんな返しをするかな、みたいな。

 でも少し時間をかけて考えて、そんなんじゃ争ってばかりでダメだなと思った。

 僕はその悔しい心の涙を仮面で隠して、「ヒーローなら両方」作戦で両方ともその作品を楽しみ、そのことを自分のXアカウントから世界に広めなくちゃいけないと考えた。

 なぜなら、今日はそのふたつが初めてみんなのもとに届く最高の金曜日だったから。

 結局それってお金が少しはあるから成立するんだよな、ということはわかっている。先のポスト、あのひがみも「両方」は取れない身の上と懐事情を感じさせた。

 仮面ライダーWで例えれば、僕はハードボイルドでもハーフボイルドでもなく、火や熱に弱い生たまごである。

 だからこそ「人の振り見て我が振りなおせ」……だな、と。何かを上げようとして何かを下げるんじゃなくて、素直に応援したいもののためにどんなことばを尽くすか、考え抜かなきゃならない。そう思った。

 という、面と向かってしゃべれないSNS時代の陰口であった。

(終)

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