【七峰】『悪魔くん』を読み比べた
【日報】2024/10/21付
最近、夕方に二十分筋トレをするのを嫌って夜更かししながらnoteに愚痴を書いている。
こういう生活リズムを乱す単発的なマイブームを止める手立てが自分にはないので、困ってはいるが、同時に「まあ好きなだけやってみればいいじゃないか」という開き直り方もする。
どうせなんか物寂しくなって、ひたすら自分の内省的な文章を読んでもらいたくなっているのだ。
今回は日曜日に余暇の楽しみとして『悪魔くん』のいわゆる貸本版とマガジン版を読み比べた感想を書く。
どちらも小学校の図書室で読んだなという印象を改めて強くしたが、今回は通称「千年王国編」と呼ばれる「悪魔くん復活 千年王国」を手にとっていないので、両者のストーリー性の違いが際立った。
貸本版は悪魔くんと佐藤/ヤモリビトの二人がそれぞれのストーリーを展開していくのに対して、マガジン版は「ソロモンの笛で悪魔メフィストを従える悪魔くん」という基本設定のもと魔術師や妖怪・怪獣などの敵対者と対決するというミニマルな構造になっている。
どちらも「よく言えば大天才」の悪魔くんが世界を幸福にするために悪魔の力を利用するという点では同じなのだが、マガジン版は縦軸と呼べるほどのストーリーがなく偶発的事件を行きあたりばったりに解決する古き良きヒーローものの風情がある。
また、マガジン版では印象的な序章となるメフィスト博士とソロモンの笛は、貸本版では第二集の最後に登場するがそのまま第三集で完結してしまう(当時の記述によれば第五集までの構想があった模様)のでどうにも影が薄い。
貸本版のストーリー構造における相関図を最少人数で組むと、悪魔くんと佐藤の接点を両者の目上の人物である社長がつなげていて、フラン・ネールという人物が佐藤をヤモリビト化から救い彼を手下にして悪魔くん陣営に潜伏させる点がユニークだ。
結局貸本版は佐藤の裏切りによる苦々しい幕切れに終わり、マガジン版はいくらでも妖怪退治の話ができる反面これという完結編がなく終わっているわけだが、両者それぞれに興味深く注目すべきポイントはあったと思う。……それを水木しげる御大が予想図どおりに描いたかどうかはわかるまいが。
また御大がこの作品に捧げた情熱を耳にするにつけ、「世界が一つになり貧乏人や不幸のない世界を作ること」という61年前のメッセージに答えを示せない自分に不甲斐なさも覚える。
千年王国編を借りに図書館へ行ったが閉まっているので今日はここまで。
(了)