タンカーの事故処理研究から生まれた易生分解性の洗剤
TVCMで目にしない日はないくらい盛んに宣伝されているものの一つが洗剤や柔軟剤だ。
洗剤は如何に殺菌力や洗浄力が高いかを喧伝し、柔軟剤は香りがとても長く続くことを主張している。
スポットライトが当てられているのは洗浄力や香りの持続力だけで、CMではその影の部分が伝えられる事はない。
では光が当たらない部分に目を向けてみよう。
例えば、強い殺菌力があるものが下水道や浄化槽に流れ込むとどうなるだろう。
下水処理は、活性汚泥法という微生物の力による分解方法が用いられているが、殺菌力の強いものは当然この処理に負担をかけてしまう。
また、洗浄力の強い物には、自然界で分解されにくい合成界面活性剤が用いられていることが多い。柔軟剤の香りが長く続くというのも、自然界で分解されにくいということを現している。
人工の化学物質で、自然界で分解されにくいことを「難分解性」という。
自然界で分解されにくいため、下水処理場や浄化槽に負荷をかけ、場合によっては処理しきれずに流れてしまう可能性もある。
難分解性と反対に自然界の微生物の力で分解されやすいことを、「生分解性」が高いと言われる。しかし、洗剤のTVCMで生分解性の高さを謳った商品を見かける事はない。 そこに消費者の需要が少ないことも原因の一つだ。
年々周りの水が汚くなってしまっている事は誰もが感じていることだが、その原因にまで思いを馳せる人は少ない。
逆にどちらかというと目を背けてしまいがちだ。
水が汚れているといっても、どうせ牧場とか工場の排水なんでしょ!?と思っている人も多い。
しかし、実際は水質汚濁の原因の6〜7割は家庭排水からが原因だ。
これは人口の多い都会に行けば行くほど顕著だ。
水はどこかの誰かが汚しているのではなく、私(たち)の日々の暮らしの結果で汚れてしまっていることを再認識したい。
そのため、自分自身の家から流す水がどうなっているのか、何を流しているのかを意識して把握する事は大切であり、地球の水環境を良くしていくために欠かせないことだ。
では、洗濯ではどんな洗剤を使うのが良いのだろう。
実は、環境に対する意識の高い消費者に人気の洗剤がある。有限会社がんこ本舗が開発した「海へ・・・」という洗剤である。
がんこ本舗
がんこ本舗代表の木村正宏氏は元々登山家で、ヒマラヤに登頂したり自然に親しんできたことから、ゴミを拾うことを福拾いとした活動や、自然保護の活動なども行ってきた。
登山家として世界の頂から地球の美しさを体感してきたが、登山家を引退して始めた事業は、やはり地球環境に良い商品の開発や取り扱いだった。
自然と密接な生活を続けてきて感じでいたのは、山から川へ、川から海へと流れていく水が年々汚れていっていることだった
そんな中、海洋タンカーの事故処理研究から生まれた基材のことを知ったそうだ。この基材は海洋タンカーから流出した大量の油を水溶性にするというもの。
この基材を用いて開発された洗剤が、「海へ・・・Step」だ。
「海へ・・・Step」は、生分解性の国際的な試験法であるDOC試験法において、OECD基準をクリアしている。
生分解性の高さに加えて、使用量は5mlとごくわずかな上に、すすぎ0回でも問題ないレベルの洗浄力を実現している。
界面活性作用が優れており油分を分解し、さらに界面活性剤濃度が洗濯水30リットル中洗浄成分0.8mlと極端に薄く、通常の約1/30(一般的には約25ml、界面活性剤の濃度がある程度高いほうが、汚れ落ちがいいとされている )と驚異的だ。
よく見かけるのが、生分解性は高い洗剤かもしれないが、洗浄力が弱く、日常で使用するには負担が大きいというもの。
その点「海へ・・・Step」の洗浄力は通常の洗剤と比べても高く、日常で全くストレスなく快適に使用できる。
2021年12月に博多湾でパナマ船籍の貨物船「レディー・ローズマリー」が防波堤に乗り上げるという事故が発生した。
船首部分の亀裂から燃料の重油が流出し、福岡海上保安部などがオイルフェンスで囲ったものの、長さ約12キロ、幅約2キロの範囲で油の膜が漂った。
がんこ本舗では、その博多湾での重油流出に対しボランティアで参加していた漁師に洗剤を提供した。
元々はタンカーの事故処理研究から生まれた洗剤である。
どの中和剤よりも分解ができたと漁師の間でも評判となり、地元TV局の報道でも話題となったそうだ。
普通なら、洗剤を海に撒けば魚に影響が出ると、嫌がられるはず。
ところが、油の除去に使える「海へ…Step」は、図らずもその効果を実証することになったのだ。
環境に優しい洗剤がなかなか広まらない原因の一つには、我々消費者側の需要の問題もあるだろう。
消費者の関心が過度の洗浄力や香りの持続力でなく、環境に対する配慮に到れば、洗剤メーカーの多くがそういった商品を開発するに違いない。
そういった意味では、日頃の私たちがどんな商品を選択するかが重要である。