見出し画像

アパレル業界に一石を投じる「土に還るソール」〜GENN〜

●大量生産・大量消費の現代のビジネスモデル
産業革命以降、私たちは大量生産・大量消費で経済を発展させてきた。
そして、それに漏れなく付随することが、大量廃棄である。
ファストファッションなどのアパレルはその最たる例だ。
毎年トレンドは変わり、一年前・二年前の服は着れなくなっていく。

画像1

世界では、毎年242億足の靴が生産されている。
そのうち、一部でもリサイクルに回る物は、5〜10%。
残りの90~95%は廃棄されている。
廃棄の内訳として、焼却される物が10%、残りは全て埋め立てられている。
埋め立てられるゴミの多くは東南アジア諸国に輸出として処理され、国際問題にまで発展してきている。


●靴の構造や素材の複雑さ
靴はデザイン性や機能性を追求してきたがために、構造は複雑になり、縫製は強くなり、使われる素材も石油由来の様々な化学的な物が使われている。
そのため、分解して廃棄やリサイクルが簡単にはいかなくなっている問題はある。

画像2

しかし、石油由来の化学素材は、埋め立てられた際に生分解性がとても低く、一説には1000年も土中に残り続けるとも云われている。
しかもその過程で放出される揮発性有機化合物や温室効果ガスは健康被害や気候変動の温床にもなってきている。
埋め立て場に雨が降ると、汚染物質は河川に流出し、流域住民に影響を与えながら、海へと流れ着く。
そして、世界の海は繋がっている。


●自然科学による、世界初の天然ゴム発泡技術

画像3

そんな社会課題を解決するべく、アパレルブランドをプロデュースする「ファイブ トウキョウ」は、ソールブランド「GENN(ジェン)」を立ち上げた。
名前の由来は、“GENERATION TO THE NEXT”。
開発に15年という時間を費やした技術開発の背景には、次世代の子ども達のために環境に配慮したソールづくりを目指すという想いが込められている。

GENNのソールの最大の特徴は、石油由来の素材を一切使わず、100%天然由来の成分で天然ゴムを発泡させるという世界初の技術だ。
これまでゴムを発泡させるには石油系や化学的な薬品が必要とされていたが、長い研究開発期間を経て、鉱物を活用して自然科学的に発泡させることに成功。
この特殊な発泡技術は、PCT国際特許出願中とのことだ。
100%天然素材でつくられているため、 アパレルのリサイクルの体制が整っていない現在、不燃ごみとして処理されても生分解性が高く、 地中に埋め立てられても、土へと還すことができる。


●生分解性だけではない高い機能性
安全性と生分解性だけに目が行きがちだが、長い研究開発の過程で、高い機能性も実現していた。

画像4

1. 生分解性 100%天然素材使用。埋め立て後に生分解され土に還るので環境にも人体にも優しい
2. 防滑性 ドライ、湿潤、氷上を問わず滑りにくい〈EVAソール比較〉ドライ3倍 / 湿潤2倍 / 氷上5倍
3. 軽量性 天然ゴムを発泡させることで軽量化〈ラバーソール比較〉2.7倍軽量
4. 耐摩耗性 高い耐摩耗性を有し、機能が長期間持続する〈ラバーソール比較〉6倍〈EVAソール比較〉2.6倍
5. クッション性 クッション性が高く、卵を3mの高さから落としても割れない
6. 屈曲性 柔らかな屈曲性により、さまざまな体勢にも適応。耐屈曲性も併せ持つ

画像5

靴の構造だが、通常 靴の内側に入れるインソール、衝撃吸収として中間に入れるミッドソール、地面に触れるアウトソールという3つのソールで成り立っている。
それぞれのソールで求められる機能は異なる。
グリップ力や耐摩耗というタフな機能が求められるアウトソールや軽量性やクッション性を求められるミッドソールは、環境配慮との両立が特に難しく、まだ目立った取り組みがされていない。

GENNの高い機能性は、ミッドソールとアウトソールの機能を兼ね備えており、資材の数や製造にかかる工程や原材料の削減によっても、環境負荷を抑えることが期待できる。


●今後の展開
GENNではソールの提供のみを行う。
その理由は、ソールが靴の中でも環境負荷が大きいためだ。
年間242億足とも云われる靴のソールを変えていくことが、問題解決の近道になると考えた。

画像6


販売メニューは「オーダーメイドソール」とセミオーダーの「オープンモールドソール」の2種類だ。
「オーダーメイドソール」では、より自由度の高いデザインはもちろん、ソールの密度、硬度やグリップ力、クッション性などの機能性、重量を調整できる。
「オープンモールドソール」では、ソールのデザインをアッパーの形状によって汎用性の高い2種類から選択することができる。
技術を自分達だけの物にせず、みんなの物にしていこうという同社の共創の姿勢が見える。

画像7

そんなGENNが考えているのは、次世代の子ども達のことだ。
まだ靴が履けない子ども達が世界に約3億人もいる。
その子ども達に靴を届けたい。
ソールの現地生産で雇用を生み出し、雇用に向けた教育機関も作りたい。
GENNの活動には注目が必要だ。

持続可能な社会を我々はどうしたら実現できるか。
GENNが示してくれる可能性を大切に受け止めて、アパレルの問題は考えていきたい。

「GENN」オフィシャルサイト
https://genn.jp

いいなと思ったら応援しよう!