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その③:ステキなうつ病治療ガイドラインの歩き方
こんにちは!こんにちわ!どっちが正解ですか?こんにちは..かな…?
『自由診療で、対話を重視した心療内科診療を提案するnote』の第3回目になります。
今回は、日本うつ病学会(Japanese Society of Mood Disorders)という組織が作成しております「日本うつ病学会治療ガイドライン」の中の「Ⅱ.大うつ病性障害(最新版:2016年7月31日※2019年7月24日序文改訂)」のうち、第2章「軽症うつ病」の部分を…
突然ですが、私には見えます…
ここまでで約5割の読者が脱落した…ということが…
そんなうつ病治療ガイドラインの一部(軽症うつ病の治療)を
わかりやすく!
明るく!...?
楽しく!
ステキに!
解説してみましょうー…という記事になります。
残りの5割の読者さま、かろうじて踏みとどまってるのが見えます…
ステキに!と書きましたが、実際、この日本うつ病学会治療ガイドラインの「軽症うつ病」部分は素敵なんですよ…(どこがステキなのかはまた後でお話しますね)
Q:先生~!そもそも、医者はガイドラインを勉強しているのでしょうか?
Doctor~! Do doctors study the guidelines in the first place?
A:いいえ、あまり勉強しておりません…(私だけではないはずです…笑)
No, They have not studied much... ( I am not the only one... lol )
なぜなら…ガイドラインって見た目がこんなだから…です…
Because... guidelines look like this....
↓
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医者は日々の業務で忙しくしておりますので、こんなイカツイ文章を読む気力も体力もモチベーションも枯渇しているのです(私だけではないはず…)
むしろ、こんなあんちょこマニュアルとかは大好物です!(私だけでは…)
↓
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ペンネームK.K.先生はドクターフレンドリーな精神科マニュアルをたくさん発表されていて私もファンの一人なのですが、こんなマニュアルも出されていました。
↓
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よーく見てみてください。なぜ精神科医が心理カウンセリングを行わないのかの理由がこれ以上なくズバッと書かれているではないですか!?
↓
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わかる…!笑
なぜ精神科医が心理カウンセリングを行わないのか。
行いたくても保険診療の枠組みではそれが難しいのかについての理由は、先日アップした「その①」の記事に簡単に書きましたが、もう一度書きます。
ようするに…
私がたとえば10分間、患者さんとお話ししてお薬を処方したら、4,000円弱くらいもらえるし…
90分間、じっくりと患者さんと対話して「今日もお薬なしでも大丈夫だよ」と安心してご帰宅いただいても、4,000円くらいしかもらえないんですね…
(倒産しちゃいます。倒産しちゃいそうなクリニックの事を業界用語でつぶクリと呼びます…)
おっと、前置きが長くなってしまいました…
あちゃ~😵
読者…もう3割しかついてきてくれてないよ~…見えてますよ
では、さっそくこれからステキな日本うつ病学会治療ガイドラインを楽しく歩いてみようと思いますが、なんかすでに1,000文字を超えてしまっているので、私の方で内容をかいつまんで置いておきますね。
高校の時、空手道部の同期の間で「かいつまむ」が流行ったな~笑
おい、かいつまめよ!かいつまんで言えよ!もうちょっとかいつまんでワンツー出せよ!…
かいつまみの①
【なにはなくとも…うつ病の診断基準】
以下の症状のうち、少なくとも1つある。
1.抑うつ気分
2.興味または喜びの喪失
さらに、以下の症状を併せて、合計で5つ以上が認められる。
3.食欲の減退あるいは増加、体重の減少あるいは増加
4.不眠あるいは睡眠過多
5.精神運動性の焦燥または制止(沈滞)
6.易疲労感または気力の減退
7.無価値感または過剰(不適切)な罪責感
8.思考力や集中力の減退または決断困難
9.死についての反復思考、自殺念慮、自殺企図
上記症状がほとんど1日中、ほとんど毎日、2週間以上続いている。
あの子…もう半月以上もずっと…①落ち込んだみたいに元気がなくって、②全然笑わなくなって、③ごはんもあまり口をつけなくなって、④夜もあまり眠れないみたい…⑤時々無性に「将来が心配」と言っては焦ってみたり…⑥かといえば、「身体がだるい」と言ってベッドで一日中ふせっていたり…⑦「こんな私なんて生きる意味なんてあるのかな?」なんてドキッとすることも言ってたわ…⑧そういえば、この間おつかいで卵とほうれん草をお願いしたんだけど、パクチーだけ買って帰ってきたときはびっくりしたわよ、どうしたの?って。「ぼーっとしてた…」なんて言ってたけど…⑨「おつかいもまともにできない私なんか、もう役立たず…消えていなくなりたい…どうやって消えればいいんだろう…」なんて言われたから、そんなことないわよ!今夜はお母さんがカオマンガイ作るわよ!って励ましてみたんだけど…
これらの基準を満たしたうえで、社会生活や職業生活に支障が出ている場合に「うつ病」と診断されます。
そして…
①と②のどちらか一つがあり、
③~⑨と併せて合計5項目ちょうどか少し超える程度で…
社会生活や職業生活の支障が比較的軽度な場合に…
「軽症うつ病」と診断されます。
また、上記基準を満たさない程度の抑うつ症状のある方は
「診断閾値下抑うつ状態」と診断されます。
一方、
9項目のほぼ全てを満たす程度の症状が揃い、
極めて苦痛が大きく
機能が著明に損なわれている場合に
「重症うつ病」と診断されます
(そのような場合には身だしなみも損なわれており、反応に乏しく、うつ病であるという病識もないことが多いんです…)。
そして、軽症うつ病と重症うつ病の中間に相当する症状の方が
「中等症うつ病」と診断されます。
日本うつ病学会治療ガイドラインでは、中等症うつ病と重症うつ病は一緒の治療ガイドラインを設定しております(基本的なサポートに加えて、薬物療法に重点を置いたガイドラインになります)。
一方、
軽症うつ病については独立した治療ガイドラインを設定しており、
私がステキ…と思っているのもこちらの
軽症うつ病に対する治療ガイドラインですので、
さっそくかいつまんでみようと思います。
かいつまみの②
【なにはなくとも…「心理教育(psychoeducation)」が治療の基本の㋖!】
すばらしいですね。
心理教育…これがすべての治療の基本になると、うつ病治療ガイドラインに明記されております。
では、心理教育とはなんじゃらほい?という話になるかと思いますが、
心理教育とはとっても奥深い概念…なんですよ…
ですので、私もこのnoteで皆さんと一緒に心理教育を深耕(しんこう)していこうと思っております。
私と一緒に心理教育を深耕されたい方はぜひごフォローくださいませ。
さあ!
さあさあ!
ちなみに深耕というワードを用いるような人物は季刊四季報を読みふけっている投資家の可能性がありますので、あまり信用してはいけません…笑
かいつまみの③
【心理教育以外の治療法は?】
軽症うつ病治療ガイドラインの結論
↓
現段階でプラセボに対し確実に有効性を示し得る治療法はほとんど存在しない!
これは衝撃的ですね!
よくぞ言い切ってくれました。
近年急増していると報告されております軽症うつ病や診断閾値下抑うつ状態ですが、科学的に軽症うつ病にはっきりと有効であると証明されている治療法は(ほとんど)ない!とうつ病治療ガイドラインで明記されているのです…
実際にはあるんですが、ガイドライン上では「ほとんど存在しない」という表現がなされております。
あるんかい?ないんかい?どっちなんだい?パワー!
かいつまみの④
【精神療法は?】
う~ん…
体系化された精神療法としては、中等症以上のうつ病では
・認知療法・認知行動療法
・対人関係療法
・力動的精神療法
・問題解決技法
の4つが有効で、特に個人セッションが有効だから、軽症うつ病でもそれに準じて検討してね。
あっ…言い忘れそうになったけど、日本で保険収載されている精神療法は認知療法・認知行動療法と標準型精神分析療法の2つだけだよ(2016年6月時点)。
そのほかは保険診療ではお金にならないよ。タダ働きになるよ。
ついでに言うと、精神分析療法はうつ病に有効というエビデンスがほとんどないから、
保険診療で精神療法をやりたいなら認知療法・認知行動療法の一択
になるからね。
あ…言い添えておくと、中等症以上なら認知療法・認知行動療法は有効という報告がそれなりに出ているんだけど、
軽症うつ病の場合はほとんど有効性のエビデンスがない上にむしろ逆効果になる可能性も示唆されているから、行う場合は気をつけてね!
という内容です…しょんぼり…
しゃんめー(しょうがない)。こちらのnoteでは認知療法・認知行動療法のその先にある最先端の心理療法メソッドを紹介していくことにしましょう。
私と一緒に(保険診療を見限って…)自由診療で世界の最先端の時流に乗りたい方は…
ぜひ、ごフォローください!笑
かいつまみの⑤
【薬物療法は?】
う~ん…
有用性そのものは否定できないんだけど、少なくとも安易な薬物療法は避けるという姿勢が、軽症うつ病の治療においては優先されるべきであろう!軽症うつ病はプラセボに対する反応率も高いことから、患者の持つ自己回復力(レジリエンス)の促進といった観点からの治療アプローチや治療戦略の構築も重要である!
あ~ん。回りくどくって素敵!
なんか、製薬会社様に忖度したいけど、現場の医師の空気感(あんま薬だけじゃ解決しないんだよな~)も織り込んで、言葉選びに慎重になりすぎた挙句に何言ってるのこいつ?みたいな文章になってしまっているのがかわいくってステキ!笑
軽症うつ病においては、どの薬剤を選択すべきかといった検討はこれまで十分に行われていない!
抗うつ薬の薬剤間における治療効果の差はわずかであり、どの薬剤から開始してもよいが、忍容性の面からは、SSRI、SNRI、ミルタザピンなどの新規抗うつ薬の使用が推奨される。
ただし、抗うつ薬の使用に伴って…(以下割愛しますが、つらつらと抗うつ薬の副作用が列挙されていきます)…などの副作用にも注意が必要である!
効果と安全性について説明した上で、患者の治療への要望を可能な限り反映させることが望ましい!
ステキすぎる!
どの薬から使ってもいい…なんて言いつつ…がまんできずに…薬価の高い新規抗うつ薬の使用を推奨しちゃってるあたりに忖度感じる…
患者の治療への要望を可能な限り反映させることが望ましい!だって…笑
せんせ~眠れないから眠れるくすりをください!
Sensei~ I can't sleep, please give me something to help me sleep!
あい分かった!(ガイドラインに則って…)処方して差し上げよう!
I understand! I will prescribe it for you (according to the guidelines...)!
かいつまみの⑥
【運動療法は?】
まだ確立された治療法とは言えないので、運動の有効性については今後も慎重に見極めていく必要がある…
ワタクシは軽症うつ病治療ガイドラインの運動(療法)に対する扱いには、はげしく同意いたしかねます(反対です)。
この態度…製薬会社様への忖度しか感じられません…
なぜなら!
すでに2000年の時点で、
運動は抗うつ薬と同等の抗うつ効果があり、再発率に至ってははるかに運動の方が勝っている(再発率が低い)というデーターが得られているのに、日本うつ病学会治療ガイドラインではその知見が無視されているからDETH!!!
(証拠はこちら)
↓
*アメリカのJA blumenthal は2000年に発表した論文の中で、156名の大うつ病患者を集めて、被験者を無作為に3つのグループに分けた(抗うつ薬「ゾロフト®︎」、運動「週3回、30分」、両方)。
4か月後、いずれのグループも劇的に改善したが、抗うつ薬グループと運動グループで回復した人の数は変わらなかった。
その後被験者は抗うつ薬、運動、両方の3つのグループに分かれて(被験者が自分の意思で選択)6か月後に再度フォローした所、抗うつ薬グループのうつ再発率は38%、運動グループのうつ再発率はわずか8%だった。
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論文リンク
↓
http://www.uppitysciencechick.com/babyak_dep_exercise.pdf
かいつまみの⑦
【高照度光療法は?】
季節性のうつ病に対しては考慮されるべき。
ただし、季節性のうつ病は双極性障害との関連性が指摘されているから、その旨念頭に置いておいてね。
かいつまみの⑧
【休養は?】
軽症うつ病では休養・休息が症状の改善に有効であるかどうかについての明確なエビデンスはない!
うっそーん
世間では休め、休めってよく、いうじゃない?
あれって違うの?
軽症うつ病治療ガイドライン上では、休養・休息の有効性について科学的なエビデンスが不足している為に、安易に漫然と休養のみを指示することは望ましくない、と明記されています。
私もこれには同意します!(賛成です)笑
(ちょっと世間の認識とは異なりますよね…)
その理由は今後、あれこれと記事で書こうかと思います。
かいつまみの⑨
【漢方薬は?】
加味逍遥散は抗うつ効果が期待できるよ。
漢方薬の処方に当たっては、専門の内科医が、患者さんの「証(しょう)」という…まあ、身体のタイプ?みたいなものを診察して、その体質的なもの(=証)に合った漢方薬を選ぶのが王道です。
漢方薬の中には高ぶった神経を和らげたり、眠りの質を高めてくれるような効果のあるお薬がいくつか存在しますので、お医者さんに相談してください!
まあ…実は私は父親が鍼灸師で、叔父が東洋医学専門の内科医でして、小さなころから(悪いことをしていないのに)お灸をすえられたり、苦い漢方薬を飲まされたりして育ってきており、西洋のお薬はほとんど全く飲ませてもらえない環境で育ったため…漢方薬にはとても詳しくなってしまったのですが…今ではあまり自分では飲まないですかね…(患者さんにはよく処方差し上げるのですが)
あれです。
北海道で生まれ育ったくせに、北海道の味覚が合わない…というただそれだけの理由で北海道から飛び出した思春期の頃の自分がまだ続いている感じです…(いやだわ。大人の反抗期かしら)
まとめ
今回は長文にお付き合いいただきありがとうございました。
私には見えるのですが、ここまで生き残ってきた読者の方は3名ですね。すばらしいです!勇者!
最後に軽症うつ病治療ガイドラインの中から関連する項目の写メを下に貼っておきますので、ご興味のある方はどうぞ眺めてみてください。
ガイドラインの全文ファイルはこちら
↓
https://www.secretariat.ne.jp/jsmd/iinkai/katsudou/data/160731.pdf
今日もおつかれさまでした!
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