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どうしても「夜のカフェテラス」が見たくって/クレラー・ミュラー美術館までの行き方

昔、美術館があまり得意じゃなかったのは、家から一番近い美術館が「現代アート」を取り扱っている横浜美術館だったからかもしれない。

いまだに、あまり得意ではない。西洋画は宗教を知らないとポカーンとなってしまうし、全般的に鑑賞の仕方がよくわからない。

絵画の世界が気になり出したのは、実は文学からで。

サマセット・モームが書いた「月と六ペンス」が、画家の人生を描くストーリーだった。それも、ポール・ゴーギャンという画家をモデルにしたもの。

「月と六ペンス」を読んでから、画家の生涯というものに興味を持つようになった。いつかタヒチに行ってみたいと思い出したのも、ゴーギャンが最期に過ごした場所がタヒチだったからだ。

ゴーギャンの作品が見たくて、大原美術館にも行った。ひろしま美術館にも。それまでは美術館など足を運んだとて、「この絵の女の子かわいいな〜、モデルの子素敵だったんだろうな〜」くらいの感想しか浮かばないタイプだったのに。


ゴッホは、ゴーギャンの友達らしい。

もちろん、ゴッホという画家の存在は知っていた。ひまわりの人。何枚もひまわりを描いた人。

でも、ゆーて、「ゴッホより〜、ふつうに〜、ラッセンが、好き〜っ!!!」なタイプだった。ラッセンはわかりやすく綺麗だ。

でも、ゴッホも、ゴーギャンの友達っていうなら、面白い人なのかもしれない。

そう思って、色々調べて、色々観てみた結果、ゴッホという人物の味わい深さを感じられるようになった。

ゴッホという人物も、物語の題材にされやすい人物だ。だから、ゴッホを題材にした小説もたくさんある。絵画を観るのと同時に、やはりまた本を読んでいた。結局、絵を観るよりも、文を読む方が得意なんだろう。

でも、絵画そのものと物語がリンクしてくると、絵画から読み取れることが多くなっていった。そういう絵画の見方もあるのか、と思った。

そうこうしているうちに、いつ知ったのか、もう全く定かではないが、ゴッホの「夜のカフェテラス」という作品を知って、いつの間にかそれは、私の好きな絵第一位になっていた。

一昨年行った動くゴッホ展(レプリカ)

本物の「夜のカフェテラス」を観に行こう!

そう言ってくれたのは、パートナーの方からである。

観たい観たいとは思っていたものの、作品が展示されている「クレラー・ミュラー美術館」は遠いのだ。

オランダにあることは知っていた。それだけでも十分遠いのに、Googleマップで調べてみるとアムステルダム中心部から公共交通機関を使って約2時間半もかかるのだ!せっかちな私は、それなら観なくていっか。と単純に思った。

それなのに、特に絵画が好きな訳でも、ゴッホが好きな訳でもないパートナーは、「でも、きよなの好きな絵、観たいな〜」と言ってくれるものだから、それならばと思ったのだ。

そうして、ヨーロッパ旅行の貴重な一日を、「夜のカフェテラス」のために使うこととした。

遠いし、と渋っていたが、実際の道のりは、すごく楽しいものだった。

クレラー・ミュラー美術館までの行き方

有名な美術館でありながら、個人で行くのはなかなか難易度が高いと言われるクレラー・ミュラー美術館。2024年12月時点での移動方法を以下に記しておく。

オランダの高速鉄道「Intercity」でEde-Wageningen駅まで向かう。Utrecht Centraal駅から向かったので、所要時間は約25分。「Intercity」は、快適な列車で好きだった。

初Intercity🚃

オランダの交通公共機関は、イギリスと同様カード決済ができる。わざわざ切符を買わずとも、クレジットカード/デビットカードをピッとするだけで乗れてしまうのだ。旅行者からしたら、かなり有り難い。

Ede-Wageningen駅は、綺麗で、静かな駅だった。田舎にポツンとできた近代的な駅舎という感じ。

Ede-Wageningen駅

駅前から出るバスを待つこと、約20分。バス停は駅を出て目の前にあるからわかりやすい。寒かったが、待合所もあってなんとか風を凌ぎながらバスを待った。バス停についたのは、よくある普通のバス。これもカードをピッてすれば乗れた。108番。

バスの運転手はイケメンが多かった。

降車駅は、Otterlo, Rotonde。ここからもう一本バスを乗り継ぐ。そしてGoogleマップが提示したルート通りに行こうとすると、なんと乗り継ぎ時間1時間!!!都心部から2時間半の大半はこれか!

本当に、周りに何もないバス停である。Googleマップで探したところ、カフェやレストランは数軒あるようだったが、まだ午前中だったこともあり良い暇の潰し場所がない。

何もない

でもなぜか、なぜかわからないが、Googleマップのルート検索では出てこなかったバスが、5分後くらいにきた。ラッキーだった。(帰りのバスもこんな感じで乗り継ぎ時間なくバスに乗れた。おそらく、乗り継ぎのために時間が連動しているのだと思う。そりゃそうだよな、ふつう。)

乗り継ぐバスは106番。なんとこれが、バン。大型バスじゃなくて、バン!事前に調べている中でバンだという情報は得ていたから、「バンだ!ほんとにバンだ!🚐となったが、知らなかったら見過ごしてしまったかもしれない。黒いバン。

そしてバン、10人くらいしか乗れない。2人組の(しかも日本人っぽい)カップルが置いてけぼりにされてしまって、申し訳なくなった。

バンは、まさかの無料だった。カードマシンが壊れてるから、払わなくていいと言われた。

そしてバンが発進すると、運転手のおばちゃんが大声で何やら言っている。「チケットは用意してあるわよね!?全員持ってる!?」

そう、これがなかなかトリッキーなところ。実は、クレラー・ミュラー美術館は、入場料のかかる「デ・ホーヘ・フェルウェ国立公園」の内部に位置する。バンでそのまま国立公園内に乗り入れるため、最初からチケットを持っていないといけないのだ。

チケットはここから入手できる。

これも事前情報があったから落ち着いていられたが、知らなかったら慌ててしまいそうだ。しかし実際は、国立公園の入り口で一度下車してチケットを買うこともできるようだった。今回はバスの乗員全員が事前にチケットを予約していたので、入場口で公園のお兄さんがバスに乗り込んできて、全員のチケットを確認していた。

いざ!国立公園内へ!

国立公園は、新宿御苑の約100倍の広さらしい。森のような場所を抜けると、木のない枯れた場所もあったり、サイクリングロードが整備されていて無料の自転車が置いてあったりする。とても自然豊かな、落ち着く場所だった。

こんなところに美術館?というロケーションである。家族連れのオランダ人たちが、ゆっくり過ごすような場所だった。

そしてやっと着いた、停留所「クレラー・ミュラー美術館」

緑豊か!


「夜のカフェテラス」

そうして辿り着いた、クレラー・ミュラー美術館。平日でありながら、12月30日という年末だったからか、家族連れの人が多くきているようだった。

ゴッホの他にも、モネ、ピカソ、スーラ、シニャック、ゴーギャンと有名作品が並ぶ。

スーラさん
ルドンだ!一つ目の巨人だ!
「好きなんでしょ?」「やめなって、ちょ、服着なって」

そして、いよいよ、ゴッホのコレクションへ。

まっすぐな通路の先で待っていた、一際目をひくこの絵。

わーーーーーーーーっ!!!!!

アルルの星空の下、明るく輝くこのカフェテラス。

本物の輝きは、やはり違う。奥行きがある。綺麗だ。

今にもこの絵の中に吸い込まれてしまいそうだ。

帰りがけ、ミュージアムショップでこの絵の複製画ポスターを二枚買った。一枚は、将来お家に飾りたい。二枚目は、将来お店を開いたら、お店の一番奥に飾りたい。

持ち帰りバッグが素敵!

いつか、この絵のモデルとなったアルルのカフェにも行ってみたい。ずっとそう思ってはいるのだが、なんと脱税によって2023年から営業停止しているらしい。おいいい!

でもなんか、そういうオチも、好きだな。

デ・ホーヘ・フェルウェ国立公園

アムステルダム市街地から、案外1時間半で到着してしまうデ・ホーヘ・フェルウェ国立公園。

暇を潰すようなカフェもないし、公園とはいえベンチすらない。あったのは、たくさんの白い自転車だけ。ペダルを反対に漕ぐと、ブレーキが効く仕組みの小さな自転車。

気持ちがいい!

寒い中、手も耳も凍りそうになりながら、少しでも体が温まるようにと前に進んでいると、何やら焚き火のある広場もあった。ワインも飲めるようだった。

アムステルダム市街地からたった1時間半で着くこの大自然は、旅行の疲れを癒し、気持ちの良い時間を過ごすことができた。

クレラー・ミュラー美術館を含め、来てよかったなと思える場所。私はまだ、余韻に浸っている。ついてきてくれたパートナー、ありがとう!

おわり。

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