見出し画像

僕は夢のない人間である


いや、正しくは昔、輝かしい夢を抱いていた。最初は保育士、その次が警察官、バンドマン、バーテンダー。
憧れて目指そうと思った職業だが、上記の職業になろうとして努力した事は無い。

「努力は裏切らない」

その言葉を口に出来る人間は何人居るだろうか。僕は裏切られた経験もないし、努力という物から逃げ続けた男だ。

努力とは、常に面倒くさいものであり、並大抵の精神力では持続出来ないと思っている。

最近妻に、「お腹出過ぎ。少し痩せてよ」なんて言われて、その時はよし、腹筋するぞ。なんて思っても、次の日の朝にはまぁいいか。と自分を甘やかしてしまう。

そんな人間に夢を叶える権利など神様は与えてくれないし、チャンスも巡りはしない。
今の平々凡々な人生に嫌気が差しても、それはこれまで努力から逃げ続けた結果であり、受け入れる以外ないのだ。

さて、そんな男の妻はというと、極めたいと思った事にはとことん手を出して行く人だ。

形から入るタイプであり、ダイエットすると決めたらまずは、ランニングウェア、シューズを買い、自宅で出来る筋トレ用のフラフープも購入した。

しかしながら、インドア派である妻は外に出て走ることが苦手であり、これらは日の目を見ることは無くなった。

続いて、始まったのが歌を唄うこと。
元々カラオケに行けば上手な方で、僕は妻の歌声が好きだった。

コロナ禍で、カラオケにも行けなくなり自宅で簡単に歌を唄えるアプリを見つけそこに歌を投稿するようになる。
名前も知らない誰かが妻の歌をイイネと、スタンプを押してくれる。
妻は喜び、歌うための機材をネットで購入した。

インドア派であるお陰でその機材は未だに大活躍している。

何が言いたいかと言うと、妻の持つエネルギーに僕は脱帽なのだ。

最後までやり遂げるとか、そういうのは置いといても、やりたい!やる!と決めたことには全力を注ぐ。

僕はやりたいと思っても行動する前に嫌になるか諦めるタイプなので妻の行動力が時々羨ましくなる。

そして、いつしか羨ましいから単純に妻が生き生きとしている姿を見るのが好き。に代わり、妻の夢を叶える手伝いがしたいと思えてきた。

今、妻は自作の小説を自費出版しようとしている。
時代は代わり、何と電子書籍として。
表紙はネットで見つけた絵師さんに描いて頂くのだそうだ。
妻の夢が大きな声を上げて動き出す。
やはり夢は努力なくして叶わないのだと痛感する。
来年の夏には僕も引き締まった体で水着を着て海に入れるように努力するしかないのかもしれない。
(来年の夏を目標にする辺りがまだまだダメ人間なのだが)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?