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い~のさん・Kojiさんインタビュー 連載詩集『鯨骨生物群集』

こんにちは! まるぶんだよ!


今日は文芸部員のい~のさん、Kojiさんのお二人にテキストインタビューを行いました。

詩や小説の執筆を通して、書くことと真摯に向き合い続ける作家、い~のさん。

「文学×アート」をモットーに、イラスト・小説・ブックカバー制作とマルチな創作活動を続けるKojiさん。


さて、なぜ今回このお二人なのかと言うと、こちら。

い~のさんが現在noteで連載中の詩集『鯨骨生物群集』

全15作からなるこちらの詩集は、記事全編の表紙にKojiさんのイラストが添えられています。そう、い~のさんの詩とKojiさんの絵のコラボ作品集なのです。


深海のような密やかさ、言葉と絵が織りなす幽玄の心象風景。
そんな謎めいた魅力に溢れる本作。
読み解き方のヒントを、作者であるい~のさん自身に語っていただきました。

そしてKojiさんも含めたお二人にとって「創作」とはなにか。「書くこと」とはなにか。
貴重なお話をたくさんお聞きしました! 

◇インタビュイー(話し手) い~の、Koji
◇インタビュアー(聞き手) まるぶん、あゆみ
TwitterのグループDM上でインタビューを行いました。




はじまりは『名付け親企画』

まるぶん い~のさん、Kojiさん、今日は忙しい中時間をいただき本当にありがとうございます! あゆみさん、サポートよろしくお願いします!

い~の よろしくお願いします。

Koji よろしくお願いします~!

あゆみ 面白そうなので基本聞いちゃいますが、できるだけサポートします。よろしくお願いします~。


まるぶん 早速だけど、このコラボ作品集が生まれた背景について知りたい! 本作を制作するに至ったきっかけは?

い~の そうですね、以前にもKojiさんの『名付け親企画』に参加させてもらってたんです。

その時、絵を見て(詩の)言葉が出てくるっていう感覚をすごく新鮮に感じました。
これはもっとやってみたいなーって思った時に、..梟.._さん『表現とこころ賞』ってのを開催されてて。よしこれでKojiさんの絵を元に書いてみようと思いました。
ちなみに当初は詩集ではなく短編小説集を予定していました

まるぶん そうなんだ! なぜ詩集にシフトチェンジしたの?

い~の 小説だとなんかリアルに寄っちゃうんです。そうすると、だんだんKojiさんの絵から離れていくというか。せっかく絵があるのにこれじゃいつもと変わらないと思い、『名付け親企画』のときと同じく詩を一本書いてみました。するとかなりしっくりきたんで、そこで初めてKojiさんにお話を持っていきました。

まるぶん Kojiさんには、どのようにお話したの?

い~の 靴舐めますので書かせてくださいって送りました。

まるぶん (早速ボケてきたな……)

Koji その1000倍くらい丁寧なお言葉をいただきました。

まるぶん 結局真面目か!

Koji 正直、意外でした。実はい〜のさんの書く詩を影でこっそり「すごい」と思っていて。逆に「私の絵で!?」って。

まるぶん 実はお互いに作家としてリスペクトし合っていたんだね。

Koji 嫉妬するくらいリスペクトしていました(笑)




直感で、そして徐々に正体を探っていく ―Kojiさんと『創作』―

あゆみ 絵をもとにして書くのは、Kojiさんの絵が初めてだったんですか?

い~の そうですね。Kojiさんの絵って「好きに感じてくれていいよ」みたいなものがあるなぁと思うんです。

あゆみ 『名付け親企画』は本当に多彩な作品があるけど、投稿されたみんなの作品を通してKojiさんが気づいたことなどはありますか?

Koji ひとつだけ確かなのは、私以上にみなさんがイラストに何かを見出して下さっていることでしょうか。
私、実は写実画描けないんです。はっきりとした何かを描くのが苦手で。イラストを完成させても「これはなんだろう」と考えているときがあって。だからこそ、みなさんが名前をつけてくれることで「そうだったんだ!」と。

まるぶん 下書きや構想もなしで、いわば落書き的に描いているとも、以前の記事で書いてたよね。

Koji その時の気分でわざと適当に描いています。感覚に任せて(笑)取りやすいところにある色鉛筆使うとか、ほんと直感的に。

あゆみ 文章を書く時とは違う感覚?

Koji いえ、似てます。どんどん探っていくような感覚。それに小説はプロットを考えない派なので、これもまた直感的に書いてる部分が多いのかもしれません。あるいは、いくつも場面が浮かんでいて、それを繋げるような。



自分を隠して書く試み ―い~のさんと『創作』―

まるぶん そしたら今度はい~のくんに聞いてみよう。今までの自作品と本作『鯨骨~』では、書き方や向き合い方に違いはある?

い~の そうですね。今まではただ自分の書きたいものを書きたいように書いていたんですけど、本作は絵から浮かんだイメージとか言葉を整理して、なるべく自分を隠して書いています。

あゆみ なるほど。詩という形式もあると思うけど、文章自体もどこか、現実になる前のなにかのような、抽象画的な印象もありますね。

い~の なるべく絵のイメージを崩したくなくて。

まるぶん 今までの名付け親企画の作品って、Kojiさんの抽象的な絵にみんなの解釈(物語としての小説だったり)で「答え」を与えるような手法だったと思う。でも『鯨骨~』のアプローチは真逆で、曖昧さをそのまま言葉にしてるというか。

Koji まるぶんくんが思ってること、そっくりそのまま私も感じていました。曖昧で、とても儚い時間のことを書いているような。



クジラの骨を依り代に ―タイトルに込められたメッセージ―

まるぶん 『鯨骨生物群集』という言葉、てっきりい~のくんの造語だと思ってた。既存の用語だと知ってびっくりしたよ。

い~の ニュースかなにかで知った言葉ですね。

まるぶん このタイトルをつけた理由を知りたいな。

い~の 僕のイメージとして、Kojiさんの絵って深海みたいな感じなんですよ。
でも深海だとなんか寂しいだけっていうか。
鯨骨生物群集は、死んだクジラの骨を依り代にして色んな生物が色んな生態系を作るんです。「あぁKojiさんの絵はこれだ」と思って。

Koji ……(い~のさんのお話を聞いて)めっちゃ好き。
それに私、いつも液体みたいなものをイメージして絵を描くんです。
寂しさだけで終わらなくて、やっぱり鮮やかさがあって。『鯨骨生物群集』……的を射すぎてます。

あゆみ ひとつひとつの作品は世界観が繋がっているんでしょうか?

い~の 繋がってます。

まるぶん キャッチコピー的な目次の冒頭『彼女を隠してあげられる世界を作りたかった 彼を守ってあげられる世界を望んでいた』こちらは相当なヒントだと踏んでるんだけど、どう?

い~の そうですね。

まるぶん ほら!

い~の 本当は全部包み隠さずお話したい欲求がすごいんですが(笑)

あゆみ まるぶんくんの執念が勝ちそうな勢い(笑)

い~の まぁそれじゃあ面白くないだろってことで、目次とマガジンにだけ書きました。

まるぶん 目次もいいよね。シンプルなのに独特の世界観があって。

い~の 難しい漢字ばっかでごめんなさい。

あゆみ いやそれがかっこいいです。中二的に非常に美味しい。

い~の ちなみに各タイトルは、詩というよりは絵のタイトルとして考えました。僕ならこの絵にはこのタイトルにするなぁって。詩はおまけです。

まるぶん 絵を引き立たせたいって想いが伝わってくるのがすごくいいね。い~のくんの真摯な姿勢が垣間見える。
もはやこれは「Kojiさんの」作品集でもあるんじゃないかと思えてくる。

Koji はい、本当ですね。



心は手に、指先に

い~の 今回初めて、誰かのために書きました。KojiさんとKojiさんの絵に宛てて。今までは自分が読みたいものを自分で書いていたので。

(若干の沈黙)

Koji なんかどきどきする(笑)

まるぶん まるぶん退席したほうがいいかな。

い~の だからこの詩集が出来た時、初めて僕は創作者だと名乗っていい気がします。
あと、心ってどこにあるんだろうって考えた時、たぶん自分のは指先か、手にあると思う。
頭でイメージしてたものと全然違うものが出来たんです。
だから心って、キーをタイプしたり、ペンを持ったり、筆を持ったりする手にあるんだろうなって。Kojiさんの絵が、目から僕の指に伝わった感じです。

まるぶん 今日、い~のくんカッコ良すぎ。

Koji 
今の言葉を聞いて、ますますい~のさんの感性を尊敬しました。

い~の いつもカッコいいよね。彼女いないけど。
ちなみに僕が高校生の頃、mixiで書いてた日記のタイトルが心象風景でした。

Koji えーーー!!!

い~の 僕もnoteで初めてKojiさん見つけた時、うわ心象風景だ! と思って勝手に親近感覚えたんです。それで速攻フォローしました。

Koji とにかく「心の世界」が好きなんですね、私たちは(笑)



Kojiさんの #note文芸部でやりたいこと

まるぶん ところでKojiさん。 #note文芸部でやりたいこと が実はあると聞いているけど。

Koji そうなんです。実は文芸部員の方々の文章にイラストを添えたいと思っていて。コラボ企画を月1くらいでやっていけたらなと思っているのですが、どうでしょう、まるぶんくん。

まるぶん やりたい! 月1で部員のだれかに作品を書き下ろしてもらうのかな?

Koji やり方はこれから考えていきたいですが、コラボを前提に書いてみた方が、お互いに挑戦って感じがします。

い~の 文学×アートですね~。

Koji そう! まさにそれを文芸部で実現させたい!
先程のい〜のさんの言葉を借りると、以前の幸野つみさんとのコラボで、私も初めて誰かのために絵を描いたんです。だからこれからもっと誰かの作品のために絵を描きたい。それが自分の成長にも繋がる気がしています」

い~の 創作って孤独だけど、結局はその先に誰かがいるんですよね。

Koji わかります! 公開する限り、絶対に読み手という立場がいますもんね。それだけでなく、誰かを想って書いていたりとか。



◇◇◇



い~のさんは、とってもとっても「書く」ことに誠実な人。それが今回のインタビューでより深く理解できたんだ。
Kojiさんの絵に1枚1枚向き合い、言葉にして映し出す。自分を隠して、詩はおまけ、とまで言い切れるのは、それだけKojiさんの絵を引き立たせたい想いと、そしてなにより、自分の指先へ伝わる「心」に素直でありたい、という気持ちの表れなのかな。


Kojiさん。『名付け親企画』を通して、たくさんの作家さんが彼女の絵に文章で命を吹き込み、名前を与え、作品にしてnoteに放った。

本作『鯨骨生物群集』は、まるぶんが曲解してるのかもしれないけど、こんな解釈もありかなと思っていて。

い~のさんは、自分の作品にするために本作を書き上げたわけじゃなく、いわばKojiさんの「絵そのもの」に名前を付けて、詩を添えたのかなと。
そうすることで、「名付け親」である作家さんたちのもとへ放ったKojiさんの絵が、たくさんの感動や感謝とともに、再び「生みの親」のもとへと帰ってきた。

まるぶんが「これはKojiさんの作品集でもある」とインタビュー中に言ったのは、そういう意味なんだよね。

誠実過ぎる「書き手」と「描き手」が生んだ魅力溢れる作品集。
深海で光り続ける言葉たち。
ぜひ読んでみてほしいの。



◇◇◇


余談

たくさんの貴重なお話を聞けたのは本当だけど、初めてのインタビューしかもDMを使って、という初めての試み。みんな慣れてなかったのか、読み返すとまぁまぁ取っ散らかってて編集のしがいがあったよ! まるぶんの進行下手で時間押してごめん、でも楽しかった。あとあゆみさんサポートありがとう。めっちゃ安心した。みんな忙しいところ本当にありがとうございました。


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取っ散らかっていく三人と、冷静に流れをもどそうとするあゆみさん。

部誌作るよー!!