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認知から購買への“見えない回路”をつくる、ソーシャル・ブリッジ・マーケティング【令和の漫画の広げ方】

ナンバーナインが取り組む漫画マーケティングについて紹介する短期集中連載。「漫画とマーケティング」「漫画とメディアとSNS」「ナンバーナイン流漫画マーケティング」の3つの切り口について、出版・漫画業界の状況やナンバーナインの最新の取り組みについても触れながら考えます。

語っていただくのは、マーケティング局局長の大貫剛寛さん。ぜひ最後までお読みいただき、皆さんで漫画×マーケティングについて考えていけたら嬉しいです。

はじめに

こんにちは。ナンバーナインでマーケティングの責任者を務める大貫です。ナンバーナインでは”漫画のマーケティングを科学する”にチャレンジしており、今の自分たちなりの「漫画とマーケティング」の考えをオープンにする連載をしています。ここまで2回にわたって「そもそも漫画のマーケティングとは何か?」「漫画とメディア、SNSとの関係性」についてお伝えしてきました。

今回はそれらを踏まえて「漫画で待ち遠しい未来(あした)をつくる。」を掲げる漫画スタートアップとして、ナンバーナインが実際にやっている取り組みや課題感、今後のチャレンジについて「ナンバーナイン流漫画マーケティング」と題して、お伝えしていきます。
※ここからは、より専門的なマーケティング用語が出てきます

マーケティングチームのミッションは「漫画の売上最大化」

今回の連載テーマが「ナンバーナイン流漫画マーケティング」ということで、前提としてナンバーナインのマーケティングを担うチームの体制について紹介します。そもそものナンバーナインの組織体制については、こちらのnoteを見ていただけるとわかりやすいと思います。

現在、ナンバーナインのマーケティング局は10名ほどの社員で構成されています。ミッションは「漫画の売上を最大化」すること。そのためにマーケティング局には、セールスプランニング部・メディアコミュニケーション部・グロース部という3つのチーム(部)があり、それぞれがさまざまな施策を展開しています。簡単に各部の取り組みを紹介します。

  • セールスプランニング

    • 作家さんからお預かりした作品を他の電子書籍ストアへ販売するための企画・施策(割引率の設定など)・売上の分析等を担う。

  • メディアコミュニケーション

    • 「ナンバーナイン公式漫画紹介者 (@no9accel) あくせるちゃん」や「創作BL大豊作まつり」をはじめとしたSNSアカウントの運用や各種イベントの企画運営やライセンス施策周りの管理を担う。

  • グロース

    • 漫画IPパブリッシャーとして、自社IPの売上を拡大させていくための役割を担う。

まだまだ人数も少ないチームですが、経歴・個性豊かなメンバーたちが活躍しています。メンバーは新卒から中途まで年齢はさまざま。若いメンバーが多いのも、ナンバーナインの特徴です。また、中途入社組は前職がコンサル、エンタメ、映像制作、広告代理店など広くマーケティングに関わっているメンバーがほとんどです。ちなみに、私の前職はアパレルやヘルス&ビューティ系の企業のマーケターをやっていました。

これは全社的に言えることですが、ナンバーナインは出版・漫画業界にバックグラウンドがある人は、実はほとんどいません。だからこそ漫画が好きで、作品の魅力を広げたい!というモチベーションが高いメンバーが集まって、日々仕事に向き合っています。

ナンバーナインが挑む「ソーシャル・ブリッジ・マーケティング」とは

そんな少数精鋭で日々試行錯誤しながら、漫画のマーケティングに取り組んでいますが、目下、私たちがチャレンジしているのは「ソーシャル・ブリッジ・マーケティング(SBM)」の実践です。

“SNSでの認知から買うまで”の心理回路を設計する

「ソーシャル・ブリッジ・マーケティング」とは、ただのSNS活用じゃない。認知から購買への“見えない回路”をつくる、ただバズってその場で買ってもらうだけではないマーケティングです。

一言で言うと、あらゆるSNSを駆使して読者との接点を生み出し、その繋がりを維持させながら、実際に漫画の購入に促すしくみを、各電子ストアと連携してつくっていく取り組みです。これが実現できると、読者は『いつでも』『どこでも』作品と出会うことが可能になります。

①エコノミー構築のための「架け橋」

「ソーシャル・ブリッジ・マーケティング」は、SNS上でのバズやエンゲージメントを「橋」にして、電子書籍ストアや他の購買チャネルへの導線を張り巡らせる、ナンバーナインというブランド独自の“経済圏”づくりです。

SNSを単なるプロモーションチャネルとしてではなく、購買体験を繋ぎ、読者を育てる基盤として捉えています。

②「認知→信頼→購買」の心理トリガーを連鎖させる

普通のマーケティングは「バズ」や「リーチ」を注視しがちですが、ソーシャルブリッジマーケティングでは、それだけでなく、ユーザーの心理的変化に基づいた「信頼のトリガー設計」に焦点を置きます。SNSで見たコンテンツをきっかけに興味を引き、心理的な安心感を与え、最終的に購買に至る“回路”を一本のストーリーとして設計します。

気になって買いたいと思った瞬間に、買いたい場所で買える。これが常時可能になるには接触回数を圧倒的に増やした露出の先にあり、これが「あたりまえ」になることを目指します。これは、単なるバズとは異なり、購買に結びつく信頼構築の連鎖です。

③「触発型エコノミー」を実現するユーザー参加型エンゲージメント

ユーザーが購入後、再びSNSで共有し、それが別のユーザーの購買を促す。いわゆるUGC(ユーザージェネレイテッドコンテンツ)を可能な限り能動的に作り上げるための「触発型エコノミー」を生む仕組みがこの手法の核になります。

エンゲージメントの度に次の購買行動が触発され、企業が手を入れなくてもSNS上でユーザー主導の「購買ループ」が動き出すように設計されています。SNSを“ゴール”ではなく“スタート”にするのがポイントです。

従来のSNSマーケティングが注目を集めることをゴールにしているのに対し、ソーシャルブリッジマーケティングは、SNSを起点にして購買までの体験を「顧客目線」で繋げる手法です。「SNSで知った、試してみた、買ってみた、薦めた」というサイクルがユーザー間で自然と循環する“購買スタートライン”を作ります。

俗に言う、界隈の中で話題になってそれぞれが広がっていくイメージです。

ナンバーナインが考える、漫画のマーケティングの現在地とこれから

初回の連載で「マーケティング」とは人の感情を掴むこと、売れる仕組みを作ること、と書きました。

ここまでの連載を踏まえて、今のナンバーナインが考える漫画のマーケティングを一言で表すなら「複数SNSを起点としたクロスメディア展開で、IPのブランド価値を最大化すること」だと思っています。

もちろん、これは今の私たちの考えに過ぎません。デジタル化やSNSの台頭然り、テクノロジーの発展によって漫画のマーケティングのあり方も、きっとまた変わってくるはずです。ですが、漫画のマーケティングの役割が「漫画の売上を最大化させる仕組みづくりを担うこと」であることは揺るがないでしょう。

繰り返しになりますが、私たちナンバーナインのマーケティング局のミッションも「漫画を届ける」「漫画を広げる」取り組みを通じて、漫画の売上を最大化することです。そんな私たちが理想とする漫画のマーケティングを100%としたとき、今のナンバーナインの立ち位置は正直、10〜20%といったところでしょうか。こうやって文字にすると、あらためて量やスピードがまだまだ足りていないことを痛感しています。

先ほど「ナンバーナインには漫画や出版業界経験者がほとんどいない」ということを書きましたが、これはまさに今、私たちが向き合うべき状況の一つだと思っています。

これまでは業界経験がほぼない、漫画好きのメンバーだからこそ、ある意味で業界の慣習に対してフラットかつ自由な発想で提案し、施策を展開することができてきました。一方で、ここからさらに、ナンバーナインがパワーアップしていくためには、出版・漫画業界にバックグラウンドのあるメンバーの知見や力が必要不可欠です。

今後はナンバーナインが創業以来強みとしてきた、SNSを使ったコミュニケーションを軸に、ステークホルダーとの関係構築やデータ分析により本格的に取り組んでいく予定です。そして、ゆくゆくは海外展開にも本格的にチャレンジしていきたいと思っています。

「日本のマーケティングは海外に比べて遅れをとっている」とよく言われますが、いつかナンバーナインのマーケティングチームが、世界に通用するマーケティングチームになる日を目指して、今後もさまざまなチャレンジをしていきます!

漫画のマーケティングにチャレンジする仲間を募集しています

ここまで全3回にわたってお読みいただき、ありがとうございました!このnoteが、さまざまな業界で活躍するマーケターの皆さんに漫画のマーケティングのリアルについてお伝えするとともに、WEBTOON、漫画業界を盛り上げていく一助になれば幸いです。

そして、まだまだナンバーナインの”漫画のマーケティングを科学する”チャレンジも道半ばです。私たちと一緒にチャレンジしてくれる仲間も募集しています。こちらもぜひ、よろしくお願いします。

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