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034『内向的思考型IN;タイプ論』-ユングを詠む

1.   イントロ

ユング『タイプ論』の紹介に一区切りをつける。優越機能又は主機能と呼ばれる下記の8種類からなるユングオリジナルの心理学的タイプがどのようなものか、これまで読んできた文献からまとめておくシリーズをやっている。

⭕️ユングの心理学的タイプ8つの優越機能(又は主要機能とか主機能とも呼ばれる)とは
これらのこと。

1.外向的思考型[ET]→032『外向的思考型ET;タイプ論』
2.外向的感情型[EF]→035『外向的感情型EF;タイプ論』
3.外向的感覚型[ES]→036『外向的感覚型ES;タイプ論』
4.外向的直観型[EN]→038『外向的直観型EN;タイプ論』
5.内向的思考型[IT]→034『内向的思考型IT;タイプ論』
6.内向的感情型[IF]→033『内向的感情型IF;タイプ論』
7.内向的感覚型[IS]→037『内向的感覚型IS;タイプ論』
8.内向的直観型[IN]→039『内向的直観型IN;タイプ論』

 外向的、内向的という2つの一般的態度と、思考型、感情型、感覚型、直観型という4つの心的機能の説明を、あらためて説明し直しながらまとめていく。

注意;下記2〜5項の詳細説明は033『内向的感情型IF;タイプ論を参照方。

2.外向(E; Extraversion)の定義

「リビドーが外へ向かうことを意味する。主体が公然と客体に関係していること、すなわち主体の関心が積極的に客体に向けられていることを表す。(中略)したがって外向とはいわば関心が主体から客体に移ることである」

[3]p461

3.内向(I; Introversion)の定義

「リビドーが内に向かうことである。これは主体が客体に対して消極的な関係を持っていることを表している。関心が客体に向かわずに、客体から主体へ引き戻されるのである」

内向的な構えをとる人は誰でも考え・感じ・行動する・さいに、はっきりと見分けがつくほどに、何よりも主体が動機づける側ではあり客体はせいぜい副次的な価値しか持たないという態度をとる。

内向はより知的な性格をも、より感情的な性格をも持ちうる。同様にそれは直観や感覚によっても特徴付けられることができる。

内向が能動的であるのは主体が客体を何らかの形で排除しようと意図するときであり、受動的であるのは客体から逆流してくるリビドーを再びか客体に戻せない時である。

内向が習慣的になっているときに内向的タイプと呼ぶ

[3]p475

 リビドーとは心的エネルギーのこと。神経細胞などの活動に必要なエネルギーと還元的に解釈を私はしている。

4.心的機能

  感覚型、直観型、思考型、感情型、という4つの心的機能の説明。

4.1心的機能;「感覚(S; Sensation)」
「五感による感覚、すなわち感覚器官や身体感覚(運動感覚や脈拍感覚など)による知覚」[3]p458

4.2心的機能;「直観(N; iNtution)」
「知覚を無意識的な方法によって伝える心的機能 」[3]p475
「その内容がどのようにして生じたのか示すことも発見することもできない。直観はその内容がなんであれ、一種の本能的把握である」[3]p476

4.3心的機能;「思考(T; Thinking)」
「それ固有の法則に即して、与えられた表象内容を(概念的に)関連付ける心的機能」[3]p452

4.4心的機能;「感情(F; Feeling)」
「自我と与えられた内容との間に生じる活動であり、しかもその内容に対して受け容れるか拒むか(「快」か「不快」か)という意味で、一定の価値を付与する活動」[3]p462

ユングは、感情も一種の判断と見做している。

5. 優越機能と補助機能

5.1優越機能
まず、優越機能とはこのようなものだ。先に説明した一般的態度と心的機能のコンビネーションで形成される。単に足し算しただけではない特徴を示す。この効果はタイプダイナミクスと呼ばれる。

ちなみに第1補助機能、第2補助機能、劣後機能も一般的態度と心的機能の単なる足し算にはならない。

イントロで8つの一般的態度と心的機能のコンビネーションからなる優越機能を列記した。最も習慣的に使っている、あるいはもっぱら意識されている状態にあるコンビネーションが優越機能と呼ばれる。内向的な優越機能は他人からは観察されにくい。

優越機能はそのほかの機能のコンビネーション(一般的態度と心的機能のコンビネーション)に対して優位にある、つまりよく使われる。よく使われるから分化して発達している。

起きて活動しているときに時間的に最もよく使っている心的機能ということになる。この後説明する第1補助機能、第2補助機能もその順番で顕在意識の下に出てくる。劣後機能はほとんど出てくることはない。

第1補助機能、第2補助機能、劣後機能ともに無意識下で機能している。ただ顕在意識として自我がその活動を認識できないことが多い。

5.2 補助機能
補助機能の前に、不合理的機能と合理的機能について説明が必要であった。

非合理的機能とは、感覚(S; Sensation)直観(N; iNtution)の2つ。知覚機能とも呼ばれる。

合理的機能とは、思考(T; Thinking)感情(F; Feeling)の2つである。判断機能とも呼ばれる。

 優越機能が、非合理的機能ならば補助機能は合理的機能が担う。また逆も然り。文末に掲載した“こころの羅針盤”のイメージのように非合理的機能と合理的機能の軸が直交する。

6.内向的思考型[IT]

特徴:状況から距離を置いて新しい情報を整理してまとめあげ、じっくりと考えるため、論法に巧みである。自分の考えや原理原則の体系立てが割り出され、決断が下される。[2]p16
動機づけ:自分の内界に論理的秩序を創り出すこと。ものごとを理解するのに合理的な原理原則を確立すること。 [2]p16

優越機能として内向[I]と思考[T]のコンビネーションが現れるものだ。

第1補助機能に感覚[S]がくるものと直観[N]が来るものの2種類がある。MBTI®︎では優越機能が内向[I]の場合であるので、この第1補助機能が、必ず外向[E]となる。しかし、ユングのオリジナルのタイプやマイヤー親子以外の研究では外向[E]になることもあるとされている。MBTI®︎との差別化の意味でも第1補助機能を外向[E]に限定しない立場とする。

◎内向的思考型[IT]の特徴[2]p16

・自分の内なる考えを秩序立てて、物事を理解するために、論理的な枠組みを確立する
・求められたり、自分の論理に異を唱えられたりしない限り、自分の考えや判断を表だって表現することはすくない
・思慮深い観察者という印象を与える
・情報を整理し分類し、ものごとを理解するための仕組みを確立する
・自分自身に対して期待が高く、言い訳したり、きれたりする事を好まない
・他者からの要望などを含む、外界から取り入れたデータを整理していくための枠組みを考え出そうとする
・現実を批評することで、人が見逃し安いものごとの矛盾点や的外れな点に気づく
・物事の結果を前もって予想し、状況から距離を置いて様子を見守る
・毎日を面白いパズルのようなものととらえていく姿勢を基本に持ち、一つひとつの現実世界をつなぎ合わせて、ものごとを理解していこうとする
 
内向的思考型(感覚優位)[IF:S]と内向的思考型(直感優位)[IF:N]の“こころの羅針盤“イメージを7項に載せておく。

6.1内向的思考型(感覚優位)[IT:S]の特徴[2]p13

・いろいろな事を観察し気づき、寛容な姿勢を示す
・平等主義でのんびりしている印象を周囲に与える
・論理的で効率的でないことを察知すると、それを突然に表現するため、周囲はその時になって初めて生きていることに気がつき、分析や分類と批判が継続的になされていることに気が付く
・思考機能は時に感覚機能で得られたデータを自分の結論に合うように取捨選択してしまうことがある

6.2内向的思考型(直観優位)[IT:N] の特徴[2]p13

・効率的に情報を取り入れて処理し、それを意見として人に伝えていく
・重要なことについて洞察したことが、内面の枠組みから見て論理的でなく妥当ではないとした場合は、洞察したことを度外して内向思考機能によって論理的な分析の方を優先させる
・時にこの理解をするための内的な枠組みが、関心を向ける情報や、新しい情報の取り入れ方を限定してしまうことがある
 

7.こころの羅針盤
7.1内向的思考型(感覚優位)[IT:S]

優越機能が内向思考型、第一補助機能が感覚型、第2補助機能が直感型、劣等機能が感情型。

優越機能(主機能)が内向思考型、第一補助機能が感覚型、第2補助機能が直感型、劣等機能が感情型。緑の文字の機能は片方が外向ならもう一方は内向になる関係。MBTI®︎ではこのパターンはありません。

赤い大文字アルファベットが外向的、
青い大文字アルファベットが内向的を表す。
緑の文字の機能は片方が外向ならもう一方は内向になる関係。

図の上にいくほど意識されやすい機能、すなわち優越した機能。下にいくほど意識される時間が少なくなり、劣等機能はほとんど意識されないばかりか無意識下でも活動していないことも考えられる。

7.2内向的思考型(直観優位)[IF:N]

優越機能が内向思考型、第一補助機能が直観型、第2補助機能が感覚型、劣等機能が感情型

優越機能(主機能)が内向思考型、第一補助機能が直観型、第2補助機能が感覚型、劣等機能が感情型。緑の文字の機能は片方が外向ならもう一方は内向になる関係。MBTI®︎ではこのパターンはありません。

赤い大文字アルファベットが外向的、
青い大文字アルファベットが内向的を表す。
緑の文字の機能は片方が外向ならもう一方は内向になる関係。

図の上にいくほど意識されやすい機能、すなわち優越した機能。下にいくほど意識される時間が少なくなり、劣等機能はほとんど意識されないばかりか無意識下でも活動していないことも考えられる。

8.あとがき

 今回あたらに書き加えて役に立ちそうなのが6項,7項と思う。

今回はここまで

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