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043『元型論』(03)-能動的創造

043『元型論』(03)-能動的創造

 041『元型論』(01)で「能動的創造」という手法を紹介した。これは集合的無意識及び個人的無意識と自我を結合して変容に導くユング心理学派の奥義であると言えよう。私が長年探してきたものだ!

 無意識の中にある価値観とかメンタルモデルを探索する方法とかはいくつか体験してみたが、それを自我あるいは顕在意識と結合して変容に結びつける確実性の高い手法を国内でお目にかかることはなかった。海外ではあることを昨年あたりから知るようになっていた矢先であった。

 集合的無意識について最初に研究を始めたCGユングも結合、変容に導く方法を編み出し使っていたことは今年の後半になって知ることとなった。それが「能動的創造(Active Imagination)」である。

 警告しておくが、生半可な気持ちの人や経験の浅い人は、能動的創造は知りもしない方が良い。勝手なことを言うが、この文章を読まないでほしい!集合的無意識の中には邪悪な意識も含まれている。そうした意識に遭遇した場合に精神的健康を損なったりその他の悪影響を被っても一切保証は致しかねるのでご留意のこと。

  さて、ユングの直弟子であるマリー-ルイーゼ-フランツ女史(1915~1998)は、「能動的創造」[10]についての著書の序文でこう書いている。

                                                               序
 CGユングはフロイトとの訣別以後、 自分自身の神話を見つけるための探索を続けた。 その時彼は集合的無意識の領域に、道案内もなく一人きりで踏み込んだのであった。独自の対決の中で試行錯誤を続けたのである。そして創造的ファンタジーと言う一元的なリアリティーの中で無意識内容と話をつけていく、新しいやり方を発見した。ユングは後にこの方法を「能動的創造(Active Imagination)」と呼び、たくさんの患者に熱心に進めた。彼は能動的創造について、テストや 夢解釈などを媒介を用いずに無意識のリアリティーと 直接出会う、唯一の方法だと記している。彼はセミナーで能動的創造の記録を取り上げて論じたが、どれも出版する事はなかった。おそらく、その内容が彼の時代の集合的、意識的な考え方からいかにかけ離れているか、分かっていたからだろう。

 しかしそれ以降、大きな変化が起こってきた。アメリカと同様ヨーロッパでも、無意識のファンタジーを覚醒状態で解き放とうとして、無数のテクニックが登場してきたのである。 それらはいずれも有益であった。ところが、全てパッシブ(受動的)イマジネーションの形をとるものばかりだったのである。今日では、患者が問題を表出する手助けに、描画やモデリング、ダンス音楽、あるいは何か書くと言うやり方を用いない精神病院など存在しない。 晩年になっては、パッシブ・イマジネーションは多少とも世間で理解されるようになってきたが、能動的創造はまだまだだと、述べている。 要するに、ファンタジードラマにアクティブかつ倫理的に対決すること、アクティブに関わると言うことが欠けているのである。 しかし私の経験では、このことを本当に理解するのは大変難しい。本書は厳選された事例を通してこの点を理解されてくれさせてくれるユニークなものである。物語や対話のポイントにつけられた著者のコメントは見事なもので、非常に役に立つ。無意識の像は力強く、かつ弱い。慈悲深く、かつ悪賢い。そんな無意識を扱うときには、うっかり足を踏み入れやすい罠を慎重に避ける必要がある。

 人がそのドラマに参加するには、ある面では既に潜在的に「全体的」でなければならない。さもなければ、苦痛の体験を経ておのずと全体的になれるように促される。能動的創造は、全体性を実現するユング心理学の最強の道具であり、夢解釈を単独で用いるよりもはるかに効果的である。本書においては、 様々な事例を通して、無意識と出会うための諸段階、陥りやすい陥穽、効果を目のあたりにすることができる。私はこのような本を他に見たことがない。

 無数にある既存のパッシブ・イマジネーションのテクニックとは対照的に、能動的創造は1人で行うものである。また相当な抵抗にも打ち勝たねばならない。それは1種の遊びのようでありながら、血まみれの真剣なものである。それ故に、抵抗を示す人が多いのはもっともだし、軽々しく強いるべきものでもない。 確かに、絶望の淵に陥った人の場合に限っては、こちらが最初にそのドアを開けなければならないかもしれない。しかしただ能動的創造と言うものを知ったなら、 もう誰もそれを手放そうとはしないだろう。内容的な変容と言う奇跡を文字通り達成することができるからである。

 バーバラ・ハナーは、 現代の時代のみならず、2つの注目すべき歴史的事例にも言及している。多くの錬金術師たちがその仕事の中で、「真正にして幻想にあらざるイマジネーション」を 用いたことが知られているが、これは能動的創造の一形態だったのだ。このことは、ここで私たちの扱うものが怪しい新発明ではなく、長い歴史を持つ人間的経験があることを教えている。レリギオ(religio)とは「ヌミノースが諸力に対して注意深い配慮を払う」という意味だが、その最古の諸形態の1つが新しい形を獲得したもの、それが能動的創造に外ならない。

マリー−ルイーゼ・フォン・フランツ

[10]

 この序文では、「能動的創造」は一人で行うものと書かれているが、創造の作業時は一人個室のようなところで実行するという意味で、指導者なりパートナーなしでは成果が出せないし危険である。間違えないでほしい。

今回はここまで。

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参考文献[10] アクティヴ・イマジネーションの世界ー内なる魂との出逢い バーバラ・ハナー

参考文献[9]心と身体のあいだ 老松克博。

参考文献[8] 『ユング心理学入門』https://amzn.asia/d/0gCq7JP9

参考文献[7] <ミヒャエル・エンデ『モモ』 2020年8月 (NHK100分de名著) ムック – 2020/7/22>https://amzn.asia/d/0cuD1g7M

参考文献[6]『ユング――魂の現実性(リアリティー) (岩波現代文庫)』https://amzn.asia/d/cUEvxPS

参考文献[5] 『元型論』https://amzn.asia/d/eyGjgdX

参考文献[4] ユングのタイプ論に関する研究: 「こころの羅針盤」としての現代的意義 (箱庭療法学モノグラフ第21巻) https://amzn.asia/d/aAROzTI

参考文献[3] 『タイプ論』https://amzn.asia/d/2t5symt

参考文献[2] MBTIタイプ入門 タイプダイナミクスとタイプ発達編https://amzn.asia/d/70n8tG2

参考文献[1] MBTIタイプ入門(第6版)https://amzn.asia/d/gYIF9uL

背景画像:原案:経営を語るユング研究者 小河節生。
     作画:ChatGTP4o。
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こころざし創研 代表

「コーチやめました」
経営を語るユング研究者 小河節生

E-mail: info@teal-coach.com
URL: 工事中
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