033『内向的感情型IF;タイプ論』-ユングを詠む
1. イントロ
ユング『タイプ論』の紹介に一区切りをつける。優越機能又は主機能と呼ばれる下記の8種類からなるユングオリジナルの心理学的タイプがどのようなものか、これまで読んできた文献からまとめておくシリーズをやっている。
⭕️ユングの心理学的タイプ8つの優越機能(又は主要機能とか主機能とも呼ばれる)とはこれらのこと。
1.外向的思考型[ET]→032『外向的思考型ET;タイプ論』
2.外向的感情型[EF]→035『外向的感情型EF;タイプ論』
3.外向的感覚型[ES]→036『外向的感覚型ES;タイプ論』
4.外向的直観型[EN]→038『外向的直観型EN;タイプ論』
5.内向的思考型[IT]→034『内向的思考型IT;タイプ論』
6.内向的感情型[IF]→033『内向的感情型IF;タイプ論』
7.内向的感覚型[IS]→037『内向的感覚型IS;タイプ論』
8.内向的直観型[IN]→039『内向的直観型IN;タイプ論』
外向的、内向的という2つの一般的態度と、思考型、感情型、感覚型、直観型という4つの心的機能の説明を、あらためて説明し直しながらまとめていく。
2. 外向と内向の特徴
外向と内向は合わせて、一般的態度と呼ばれる。
2.1外向(E; Extraversion)の特徴
もう少し具体的なケースで説明する。
世間の人が皆賞賛しているという理由で新進のミュージシャンを賞賛(外向)。
そのミュージシャンが自分の好みに合わないから賞賛しない(内向)。
ある評論家があるお酒を絶賛するので美味しいと勧められたので他人に勧めている。しかし勧めている本人はそのお酒の味がいいのか悪いのかわからない(外向)。
その評論家の好みと自分の好みが違うので絶賛しない(内向)。
こんな具合となる。
重要な決断や行動が主観的な意見ではなく客観的な状況に左右される場合、これを外向的構えと呼ぶ。これが習慣的になったものを『外向的タイプ』と呼ぶというわけだ。
◎外向(E; Extraversion)の定義も再掲する。
2.2内向(I; Introversion)の特徴
客体とは他者のことと取ってよい。
◎内向(I; Introversion)の定義も再掲する。
リビドーとは心的エネルギーのこと。神経細胞などの活動に必要なエネルギーと還元的に解釈を私はしている。
幼年期の特徴について記述がある。
3.内向型の注意点
◎内向型はエゴイストか?
ユングは自我と自己を明確に分けて語っている。その心的構造から内向型はエゴイストと取られる背景を作るという。
ここでいう自己こそ心的構造をなすものであるとユングは書いている。それは集合的無意識とつながる構造という。
この奥底にある主体が自己であるという。
これは結構スピリチャルな主張であり、タイプでも内向と外向が生まれつきという主張に繋がっている。遺伝するという主張に対して河合隼雄先生は明確に否定していた。まだまだ似非科学っぽいがエピジェネティクス(後成遺伝学)に遺伝とのつながり解明のヒントがあるように感じる。
集合的無意識とつながる構造ということを受けて説明が続く。
では、内向型の人はどうすべきか? 無意識的だが全く普遍的に妥当な前提条件が、その人の主観的な判断や知覚に含まれていることが説明できるようにすることだと書かれている。だから、自分の内面を内省して認識し、自己実現を図ることになる。大変なことだが。
一方で、自我が自己とほぼ完全に同一化してしまった時に、自我が膨れ上がり困った状態になることもあるという。飽くことのない権力追求とか子供じみた自己中心性が生み出される。例として病的になった晩年のニーチェが例としてあげられている。
自我を見失わないことが肝要であろう。
4.心的機能
感覚型、直観型、思考型、感情型、という4つの心的機能の説明。
4.1心的機能;「感覚(S; Sensation)」
目、鼻、口、耳、肌などの感覚器官からやってくる情報のこと。日本語で感覚というと感情とか気持ちとかが混じってしまうが、ここでは純粋に神経信号のことと捉える。
ただしその神経信号も主体の中で変質してしまうこともあり得る。例えば色弱があるとか視神経に疾患があれば多くの人とは違った感覚を受け取ることになる。
4.2心的機能;「直観(N; iNtution)」
閃いたとか、降りてきたとか、ビジョンが見えたとかいった類のものもこれに入るだろう。
そして、直観は前述の“感覚”と補償関係にあるとユングは記している。
4.3心的機能;「思考(T; Thinking)」
これについては説明する必要はあまりないだろう。最も客観的に意識内容を整理・分析・評価・判断する機能のことだ。
4.4心的機能;「感情(F; Feeling)」
ユングは、感情も一種の判断と見做している。
自我という言葉が入っている。ユングは自我と自己をしっかり分けて使っている。
(私の解釈では、たった今、自分が意識している狭い範囲での自分とイメージ。CPUと演算に使っているデータといったらわかるだろうか。自己というといつでも取り出して意識下に持って来られる記憶などを含む自分とでも言ったらいいか。SDDとかHDDにデータが入っているような感じ。)
感情と激情は区別すると説明されている。激情とは感情の強さが高まった神経性身体現象(表情が変わったり顔色が変わったりとかだろう)を伴った状態。
思考が意識内容を概念によって整理するように、感情は意識内容をその価値(受け容れるか否かの判断という意味で)に即して整理する。
感情と思考は、互いに共通項のない範疇に属しているとされる。感情を概念で説明することはできないとしている。
5. 優越機能と補助機能
5.1優越機能
まず、優越機能とはこのようなものだ。先に説明した一般的態度と心的機能のコンビネーションで形成される。単に足し算しただけではない特徴を示す。この効果はタイプダイナミクスと呼ばれる。
ちなみに第1補助機能、第2補助機能、劣後機能も一般的態度と心的機能の単なる足し算にはならない。
イントロで8つの一般的態度と心的機能のコンビネーションからなる優越機能を列記した。最も習慣的に使っている、あるいはもっぱら意識されている状態にあるコンビネーションが優越機能と呼ばれる。内向的な優越機能は他人からは観察されにくい。
優越機能はそのほかの機能のコンビネーション(一般的態度と心的機能のコンビネーション)に対して優位にある、つまりよく使われる。よく使われるから分化して発達している。
起きて活動しているときに時間的に最もよく使っている心的機能ということになる。この後説明する第1補助機能、第2補助機能もその順番で顕在意識の下に出てくる。劣後機能はほとんど出てくることはない。
第1補助機能、第2補助機能、劣後機能ともに無意識下で機能している。ただ顕在意識として自我がその活動を認識できないことが多い。
優越機能に話を戻して、『タイプ論』からその説明文を拾ってみよう.
5.2 補助機能
補助機能の前に、不合理的機能と合理的機能について説明が必要であった。
非合理的機能とは、感覚(S; Sensation)、直観(N; iNtution)の2つ。知覚機能とも呼ばれる。
合理的機能とは、思考(T; Thinking)、感情(F; Feeling)の2つである。判断機能とも呼ばれる。
優越機能が、非合理的機能ならば補助機能は合理的機能が担う。また逆も然り。文末に掲載した“こころの羅針盤”のイメージのように非合理的機能と合理的機能の軸が直交する。
6.内向的感情型[IF]
特徴:グループ内において良心的存在としての役割を取りやすい。自分の内的な価値観を通じて、あらゆる判断、行動、考えについて評価し、日々の生活でその価値観を貫き、実現して行こうとする。[2]p17
動機づけ:自分の核となる価値観を確立し、その価値観に一致するような外的生活を築くこと。個人一人ひとりやひいては人類全般の望みを叶えられるよう援助すること。[2]p17
優越機能として内向[I]と感情[F]のコンビネーションが現れるものだ。
第1補助機能に感覚[S]がくるものと直観[N]が来るものの2種類がある。MBTI®︎では優越機能が内向[I]の場合であるので、この第1補助機能が、必ず外向[E]となる。しかし、ユングのオリジナルのタイプやマイヤー親子以外の研究では外向[E]になることもあるとされている。MBTI®︎との差別化の意味でも第1補助機能を外向[E]に限定しない立場とする。
◎内向的感情型[IF]の特徴[2]p17
・自分にとって強烈で、意義深く、複雑な内的な情緒的体験を得ようとする。
・自分の個人的な価値観と外界での生活との間の矛盾に対して敏感である。
・相手が求めていることや何に価値を置いているのかを見出し、静かに支援し、その見本を示すことで他者に影響を与えようとする。
・自分の価値観を行動における明確性や一貫性に焦点をおくことにエネルギーを注ぐ。
・人間関係に対する自分の信念や想いについて表現することは少ない。
・目標を共有し、支援してくれる人に親しみを感じ、信頼を寄せる。
・控えめで、自分と同じような考えを持った人にだけ気持ちを打ち分ける。
・自分にとって大切な人、団体、考えなどに忠実で、それらを守っていこうとする。
・毎日を入念に確立された思いや価値観から捉える姿勢を基本に持ち、その価値観に合った生活の場や支援の方法を創り出そうとする。
内向的感情型(感覚優位)[IF:S]と内向的感情型(直感優位)[IF:N]の“こころの羅針盤“イメージを7項に載せておく。
6.1内向的感情型(感覚優位)[IF:S]の特徴[2]p13
・人々や自然に関心を向け、その時の外的な環境にすんなりと順応する
・思いやりを持って対応する
・あらゆることを評価する自分の内面の中心にある人を支援し、自然界に実際に役立つことという価値観を最も重要視している。
・価値観が侵害されると、その価値観に基づいた断固とした主張をしたり、間違っていると思ったことに妥協することを頑強に拒否する
6.2内向的感情型(直感優位)[IF:N] の特徴[2]p13
・人々やアイデアに興味を持ち、周囲の世界をより良くすることにつながるような可能性に大きな関心を持つ
・人間理解についても新しい考え方を探求する
・内面では、考えや人々、行動など評価するための一貫した価値システムが“フィルター”として機能している
・自分の信じる人たちや考え方には一生懸命に関わるが、自分の価値観を侵害するものには、すべてに置いて反対の立場をとることがある
・自分の価値観と外的な世界との一致を図ることに必死になることがある
7.こころの羅針盤
7.1内向的感情型(感覚優位)[IF:S]
優越機能(主機能)が内向感情型、第一補助機能が感覚型、第2補助機能が直感型、劣等機能が思考型。
緑の文字の機能は片方が外向ならもう一方は内向になる関係。
MBTI®︎ではこのパターンはありません。
赤い大文字アルファベットが外向的、
青い大文字アルファベットが内向的を表す。
緑の文字の機能は片方が外向ならもう一方は内向になる関係。
図の上にいくほど意識されやすい機能、すなわち優越した機能。下にいくほど意識される時間が少なくなり、劣等機能はほとんど意識されないばかりか無意識下でも活動していないことも考えられる。
7.2内向的感情型(直感優位)[IF:N]
優越機能(主機能)が内向感情型、第一補助機能が直観型、第2補助機能が感覚型、劣等機能が思考型。
緑の文字の機能は片方が外向ならもう一方は内向になる関係。
MBTI®︎ではこのパターンはありません。
赤い大文字アルファベットが外向的、
青い大文字アルファベットが内向的を表す。
緑の文字の機能は片方が外向ならもう一方は内向になる関係。
図の上にいくほど意識されやすい機能、すなわち優越した機能。下にいくほど意識される時間が少なくなり、劣等機能はほとんど意識されないばかりか無意識下でも活動していないことも考えられる。
8.あとがき
今回あたらに書き加えて役に立ちそうなのが6項と思う。2項と3項のところの内向型に関する説明も加筆修正した。7項の”こころの羅針盤”は響くものがあるといい。
1項、5項はこれまでnoteに書いてきた内容を編集し直したものだ。
今回はここまで。
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参考文献[1] MBTIタイプ入門(第6版)https://amzn.asia/d/gYIF9uL
参考文献[2] MBTIタイプ入門 タイプダイナミクスとタイプ発達編https://amzn.asia/d/70n8tG2
参考文献[3] 『タイプ論』https://amzn.asia/d/2t5symt
参考文献[4] ユングのタイプ論に関する研究: 「こころの羅針盤」としての現代的意義 (箱庭療法学モノグラフ第21巻) https://amzn.asia/d/aAROzTI
参考文献[5] 『元型論』https://amzn.asia/d/eyGjgdX
参考文献[6]『ユング――魂の現実性(リアリティー) (岩波現代文庫)』https://amzn.asia/d/cUEvxPS
参考文献[7] <ミヒャエル・エンデ『モモ』 2020年8月 (NHK100分de名著) ムック – 2020/7/22>
参考文献[8] 『ユング心理学入門』https://amzn.asia/d/0gCq7JP9
背景画像:原案:経営を語るユング研究者 小河節生。
作画:ChatGTP4o。
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