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子猫との出会いで変わる世界
10年ほど前まで、犬派か猫派かと問われると、どちらも好きだと、私は回答していたと思います。
それが、今では、完全に猫派と即答してしまう生き方になってしまったようです。
その切っ掛けとなった出来事が8年前にあったのですが、それについて書き記したいと思います。
それは、2016年の春のある朝のことでした。
もう桜の花は散ってしまった頃だったと記憶しています。
日が昇ったばかりで、近所の住宅街の道を行き交う人の足音はほとんど聞こえてこない時間帯だったと思います。
平日だったので、そろそろ朝の通勤・通学のラッシュ帯に入る直前くらいの頃だったと思います。
私の場合、その日は、ちょうど休める日だったので、自宅で春の朝の心地良さを感じながら、寝ておりました。
それが、何匹かの猫のけたたましい鳴き声で目が覚めたのです。
そういえば、最近、自宅近くの古民家の庭から子猫の鳴き声がするなあと思っていたのです。
しかし、その日の鳴き声はいつもと違うと感じられ、眠れないと思い、玄関を開けて外に出ると、自分の目の前を、子猫三匹がミャー、ミャーと声を上げながら横切って懸命に走っていくのでした。
子猫は、まだ目が開ききらないほど幼い様子でした。生後2週間ほどでしょうか。
そして、驚くことに、その走り行く子猫たちを、頭上から、一羽の黒い烏が襲っていたのです。
鋭利かと思われる爪で、子猫を捕まえようと、飛びかかっていたのです。
子猫たちは、道端に止めてあった自転車やオートバイの影に隠れるなどしながら、上手く攻撃をかわしているのでした。
しかし、烏は執拗に何度も攻撃を仕掛けていたのです。
このままでは、子猫たちが捕まるのも時間の問題かと思い、私は、咄嗟に、その烏を手で払いのける仕草をしました。
すると、烏は遠くに飛んでいってしまいました。
間もなく、三匹の子猫の内の一匹が、私の方に駆けよってくるのでした。私の足にまとわりついてきて、ズボンの裾部分に爪をたてて捕まり、離れようとしないのです。
おそらく、私を母猫と勘違いしたのだと思います。
何とか、子猫をズボンの裾から離して、両手で抱えて、その子猫が生まれた場所ではないかと思われる古民家まで連れて行こうと考えました。
当時、古民家のすぐ隣に空き地があって、古民家とも行き来ができるように見えましたし、雑草が多く生えた茂みがありました。その中なら烏から見つけられにくく、身を隠せるかと思い、離そうとしたのですが、それを嫌がるかのように、より大声を出して、ミャー、ミャーと鳴くものですから、仕方なく、自宅に迎え入れました。
みかんの空き箱に、新聞紙を敷き詰め、そこに入れて手を離すと、落ち着いて休んでいる様子でした。
スキンミルクが自宅にあったので、それをぬるま湯で溶かしたものを差し出すと、ペロペロと舌を出して飲んでくれました。
その後は、たまに声を出すこともありましたが、落ち着いた声のように聞こえました。箱からその顔を出して、外の世界を見ようとしていることもありました。そうして2〜3時間ほどが過ぎました。
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その日は、たまたまゆっくり過ごせる日で、子猫の相手もできたのですが、翌日以降は相手できず、ましてや、猫を飼う訳にはいかず、動物愛護センターに電話相談することにしました。
電話先のスタッフの方に事情を説明し、引き取ってもらえるかどうかと尋ねたところ、スタッフさんの返答は、確かこうでした。
「近くに母猫がいるだろうから、まだその子猫を探しているのかもしれない。たぶん餌を求めて、子猫たちの側を離れてしまった可能性が高いけれど、すぐ元いた場所に戻ってくるはず。
ただ、母猫も半日以上経って、子猫が見つからないようなら、その子猫のことは忘れてしまい、もし会えたとしても、自分の子とは思わず、殺してしまうこともある。
だから、早めにその子猫に会わせることが大事。」
また、スタッフの方は、続けて以下のような内容を話してくれたとも記憶しています。
「もしセンターに預かることになっても、生後間もない子猫は、母猫でないと安全に上手く育てるのが難しい。
それで、引き取り手が見つからず、最悪の場合、殺処分になってしまうかもしれない。
自然界の法則として、そこで生き延びる強さを持った者のみが生き延びる資格があるという、逆らえない流れもある。
生物は、別の何かしらの生物の栄養となるという『食物連鎖』を理解してほしい。」
というような内容だったと思います。
厳しい意見とも感じられますが、自然界の真理であり、逆らえない、自然の考えだと納得できるものでした。
それで、私は、即座に子猫を抱き抱え、元々子猫がいたかもしれない、古民家の側の空き地の茂みに連れて行きました。
離そうとすると、甲高い鳴き声を出して、私の服の袖に必死に捕まって、離れようとしませんでしたが、少し強引に離して、茂みの中に離すと、開ききっていない目で前が見えないのか、迷うように奥へと駆けて行き、隣の古民家の庭へと潜り込んでいったようでした。母猫に再会してほしいと願いつつ、自分はその場を離れました。
そして、その子猫と思われる猫は、一ヶ月ほど経った頃か、近所を散歩していると、出会うことができたのです。
別の御宅で、広いお庭のある所で、その前を横切ったときに、たまたま庭で遊んでいるのを、見かけたのです。
隣には別の子猫もいました。
無事に生き延びたのかと安堵したものでした。
8年経った今でも、近所を散歩していると、その猫と出会うことが時折あります。
私と目が合うと、ゴロリと寝転び、お腹を見せることもありました。
たぶん助けた猫だろうと思うのです。身体の色柄もかなり似ているので。逞しく生き延びているようで何よりですね。
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その出来事があってからというもの、猫の目線で世界を見るようになっている気がします。
地域猫たちは、天変地異があっても、上手くやり過ごす知恵を持っているような気がします。
例えば、今夏のような猛暑では、夜中になっても、暑さは落ち着きませんが、地域猫たちの動きを見ていると、風通しが良いところを選んで、上手く涼を取って休んでいる様子です。
暑さ寒さや、雨風からも逃れて、楽に過ごす知恵を持っているような気がしています。
私たち人間も、臨機応変に楽を選んで生きている猫先生を見習って生き抜いてみたいと思うのです。
以上、実話でした。
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【了】