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『名探偵ボディビルディング』(毎週ショートショートnote)
私はしばしの間「名探偵ボディビルディング」
の文字を見つめていたが
意を決してドアノブに手をかけ
そこから1分躊躇した末に
そろりそろりとドアを押すと
おそるおそる中を覗き込んだ。
すると中にいた男性がドアに駆け寄り
私を中に招き入れた。
突然開かれたドアの勢いに私は
ドアノブを掴んだ手を離すことが出来ず
部屋に転がり込んだ。
男性は私の肩にそっと手を添えてやさしく立たせると
応接室の3人掛けのソファーにエスコートして
自らは正面の一人掛けの椅子に深く腰掛ける。
そして両手を腹の上で組み合わせると
前のめりになって顔で質問を促した。
「ここは探偵事務所なのでしょうか?
それともボディビルジムなのでしょうか?」
男性は私の質問に満足したようにうなずくと
満面の笑みを浮かべてこう言った。
「当ててみてください」
私は考えた。
知らぬ間に独り言がぼそりと口をつく。
「ビルの名前ってオチはないよなぁ
それじゃあまりにもベタだよなぁ」
男性の顔がみるみる曇っていった。
(410文字)
<あとがき>
最初は「男性」と「私」が逆で、
おかしな私に戸惑う男性という構図でした。
ラストがどうしてもまとまらず、
こんな形に、、、。