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『噛ませ犬ごはん』(毎週ショートショートnote)

客との商談を終え外に出るとちょうど昼飯時。
通りを一歩入れば昔ながらの飲食店が立ち並ぶ。
私は店頭に貼られた「噛ませ犬ごはん」の文字に惹かれ
定食屋の暖簾をくぐった。

さほど広くない店内。
先程、水とおしぼりを運んでくれた年配の女性が
隣のテーブルの注文を厨房に向かって伝えると
奥から「あいよ」としゃがれた声が返ってきた。
夫婦2人できりもりしているのだな。
メニューも見ないうちから生姜焼きや焼き魚に
小鉢に入った煮物、お浸しなどを思い浮かべて
自然と涎が溢れてくる。

噛ませ犬ごはんがメニューにないのは
材料が入荷した日だけの特別メニューか。
だとすると今日来たのはラッキーかも。
私は注文を聞く女性に「表に貼ってある噛ませ犬ごはんですが」
と声をかけた。
するとその声が厨房にも届いたのか
奥から顔をボコボコに腫らした男性が飛び出してきて
先ほど聞いたしゃがれ声で「あいつら、またこんなの貼りやがって」
と入り口の張り紙を剥がすとビリビリに破り捨てた。

(410文字)

<あとがき>
500文字近くあったのを410文字に減らしたことで
かなり分かりづらい文章になってしまった、、、。
一応説明すると、店主はボクサーもやっているが
いつも負けていて昨日もボコボコに打たれて負けた。
それを悪口として、噛ませ犬が作るごはんの意味で
「噛ませ犬ごはん」と貼ったのを
私がメニューと勘違いしたというお話。
なんて、こうして説明している時点でダメですね。

ちなみに、注文を聞く年配の女性は店主の母親で、
ボクサーの道を捨てきれずにいる息子が
父親のあとを継いで2人でやっている定食屋
という設定です。

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