『噛ませ犬ごはん・改』(毎週ショートショートnote)
ザ・定食屋といった風情の定食屋。
壁にボクシングの試合のポスターが貼られているのも
それっぽい。
昨日デビュー戦があったらしい。
相手、年取り過ぎてないか?
その店構えと店頭に貼られた手書きの
「本日のオススメ 噛ませ犬ごはん」に惹かれ
暖簾をくぐった。
さほど広くない店内。
女性が厨房に向かって注文を伝えると
奥から「あいよ」としゃがれた声が返ってきた。
夫婦でやっているのだろうか。
メニューを見なくとも生姜焼きや焼き魚に
小鉢に入った煮物、お浸しなどが思い浮かび
自然と涎が溢れてくる。
案内された席で温かいほうじ茶を啜り
「表に貼ってあるオススメの噛ませ犬ごはんですが」
と声をかけた。
するとその声が厨房にも届いたのか奥から男性が飛び出してきて
先ほど聞いたしゃがれ声で「あいつら、またこんなの貼りやがって」
とオススメメニューを剥がすとビリビリに破り捨てた。
「好きで負けたんじゃねぇよ」
ボコボコに腫らしたその顔がデビュー戦の相手の写真と重なった。
(410文字)
<あとがき>
先に書いたのが分かりにくかったので
同じ内容で書き直してみました。
状況が分かりやすくなったうえに
店主の感情がより伝わるようになったと思います。