真実の盗撮事件簿 二十 韓国盗撮の実態
盗撮、本当に許せない!!
そんな思いで日頃、空き時間を利用し、盗撮映像の販売状況等について市場調査している中で、偶然見つけたのが「潜入韓国女風呂」という盗撮ビデオだった。
「韓国女風呂盗撮」こんな文化交流は要らない。
そんな思いから、店頭で販売されているビデオを2本購入し、確認する事にしたのだ。
ジャケットの写真を見る限り、韓国の浴場施設に似ているのはすぐ分かった。
過去、韓国で事業展開していたことがあり、韓国には精通している。その話の詳細は省くが、そんな関係から自他共に認める韓国通の私にとって、韓国女風呂盗撮は見過ごすことが出来ない。
この映像を発見した頃、明洞で日本人旅行者が盗撮事件を起こしたというニュースが日本のニュース番組でも報道されていたこともあり、「浴場盗撮が行われていたとしても不思議ではないな」と考えながら事務所に着くと、すぐにパソコンの電源を入れ、再生をしながらいつもの通りキャプチャーを開始した。
日本の盗撮映像とは違い、女性の顔には全編モザイクが掛けられてはいるが、映像に映っている場所は、明らかに韓国の浴場施設である。そこで、私が事業をしていた頃の現地スタッフで、友人の姜成龍(カンソンヨン)にメールで盗撮現場のキャプチャーを送り、国際電話をかけて現場特定の協力と現地での状況を求めた。成龍は、「こんなの日本で売っているの」と笑い混じりの返事だったが、「実際に現地で探すのは簡単なことではないよ。一度心当たりはあたっておくけど。」ということで電話を切った。
2週間程して、成龍から来た解答は、「情報が乏しすぎる」とのことだった。「近い内に一度韓国へ行くから」と伝え電話を切った。
当時韓国料理を食べに行っていた店で、たわいのない雑談から、「近日中に韓国へ盗撮現場を特定しに行く」という話をすると、一度その映像を見たいということだったので、スタッフに取りに行ってもらい、店のママと従業員の女性に見せた。
書くまでもなく、韓国は儒教の文化を大切にするお国柄。
そんな方に映像を見せるのは日本の恥と思いつつ、少しでも情報が欲しかったことから見て頂いた。シーンが通常のチムジルバン(浴場施設)から汗蒸幕(ハンジュマク)韓国の伝統的サウナの映像に変わった瞬間、ママさんは「平松さん、ここで止めて!」と言った。
その場面に映像を戻したところ、画面を指差し、「ここの新村汗蒸幕と書いているよ」と言った。町の新村(シンチョン)汗蒸幕と聞き返すと、多分そうとのことだったので、その場から韓国へ国際電話をかけ、そのことを成龍に伝えた。
汗蒸幕の特徴を説明すると、汗蒸幕とは黄土や粘土で造られたドーム型の窯で松の木を炊いて熱する韓国特有のサウナで、非常に熱く、女性の方は頭から麻の布をかぶって入るのが特徴である。ソウルでは、日本同様にスーパー銭湯に類似する浴場施設は多くあるが、昔ながらの汗蒸幕はそう多くない。また場所が新村となると、数件に絞ることができる。私は今までの経緯とそのことを黒木氏に伝えた。
先でも書いたが、週刊アサヒ芸能にて、問題摘出スクープの第3弾「草津温泉の盗撮・ホテル盗撮」に続く、第4段として「韓国浴場盗撮記事」を市場に出することとなった。
海外での取材になるため、黒木氏のスケジュールと私達と成龍のスケジュールを調整し、飛行機のチケットを手配した。
平成17年11月21日、私と現場特定の為に女性スタッフYは、関西国際空港からアシアナОZ一一一便で飛び立ち、黒木氏は成田空港からアシアナОZ一〇一便で韓国仁川空港に向かった。
いつもなら韓国に行くときは、好きな韓国音楽を聴きながら気楽な空の旅を楽しむのだが、今回はそんな気楽な旅にはならない為、ノートパソコンにデータとして入れた現場のキャプションを確認しながら、約1時間20分を過ごした。
ソウル仁川空港では、現地スタッフの成龍が私達の到着を待っていた。
空港で黒木氏と合流し、ソウル特別市観光名所インサドンの近くのホテルにチェックインして荷物を置き、行きつけのカフェオレンジで簡単な打ち合わせをし、夜の調査に備えた。
午後7時頃、スタッフYと共に潜入調査に協力してくれる友人チェフィジュさんとその友人のホソジンさんと地下鉄二号線の新村駅付近で待ち合わせ、軽く夕食をとりながら今回の取材趣旨を説明し、事前に用意したキャプションを見せながら説明した。
だが、それを見たフィジュは、目を背けながら「こんな破廉恥なモノが日本で販売されているのは許せない」と強く言ったのだった。
その後、事前に成龍に目星をつけてもらっていた汗蒸幕に向かったが、私は案内されるまま2階の脱衣所に向かった。しかし、雰囲気が違った事からさっと汗を流し、彼女達が出てくるのを待った。その結果、ここは盗撮ビデオの舞台となった新村汗蒸幕と似ても似つかない場所であることが判明した。
私自身、盗撮現場を探す為に韓国へ行ったのだが、内心、映像に出てくる新村汗蒸幕が実在するところではなかったと思い、ホッとしたのも束の間だった。2件目の場所が、その盗撮の現場であることが判明した。
1件目の汗蒸幕が日本でいう、スーパー銭湯ならば、2件目に私達が訪れた汗蒸幕は、さしずめ町の銭湯とでも言うのだろうか、大通りから離れた住宅街の一角にあった。
汗蒸幕は、本来女性のみが利用するサウナであるため、私達男性が入ることが出来ない。そこで、スタッフYとフィジュら女性3名で潜入調査をし、私達は車で待機することにした。約1時間して店内から出てきた3人は、小走りで私達が待つ車に駆け寄り、スタッフYは親指を立て、フィジュは「ここに間違いはありません」と言った。
私達は、予め用意したチェックシートを取出し、店内の様子を聞いたところ、受付で入浴料を支払い、右側の女性専用通路から奥に進むと正面に汗蒸幕がありその右側に小さな浴室、左側にビデオに映っているミネラルウォーターのディスペンサー、壁、天井、韓国語で書かれた「新村汗蒸幕」の看板などが映像のままであることなどを確認した。またフィジュによると、店内には50人近くの方が入浴していたらしいのだが、入れ替わり立ち替わり訪れる人らが挨拶を交わして話しをしている状況からみて、一見の観光客が同所を訪れるとは考えにくく、「これを撮影した韓国人の恥、許せない」と激怒していた。
私とフィジュは9年近く付き合いがあるが、これ程までに怒っている彼女を見たのはこの時一回だけしかない。
ここで少し韓国の盗撮事情について書く。私の知る限り、韓国で盗撮事件というと、当時アイドル歌手Pのマネージャーで恋人が、彼女との性行為を隠し撮りし、インターネット上で公開して利益を得ようとしたが、ある少年がそのファイルを偶然に発見し、無料公開したため、一挙に世間に知れ渡ることとなった。
その結果、マネージャーが国外逃亡したため、国際手配になるという日本では考えられないほどの対応をしたのを記憶している。
そのニュースは、日本の21時のニュースでも報道されたので記憶にある人も多いのではと思うのだが。お国柄ともいえる程、盗撮に関して免疫のないのが現状である。
また話がそれるのだか、韓国の友人らと酒を飲みながら話をすると、決まって日本の乱れた性の話になる。「テレクラ」「援助交際」は日本人が韓国にもたらした悪である。
その会話がはじまる度に肩身の狭い思いをした経験がある。そんなことから、「盗撮だけは、広がる前になんとか警鐘を鳴らしたい」という思いが私の中にあった。
ここから本編に戻る。現地取材2日目、新村汗蒸幕の経営者の方に取材をするため、再度同所を訪れた。店には黒木氏と成龍が訪ねたので、店内の状況について私は直接は分からないが、成龍と黒木氏から聞いた話によると、取材に応じたのは50代の女性経営者で取材の趣旨を説明したところ、声を荒らげ「貴方たちはなんですか。」と言ったという。
そこで成龍が宥める様に丁寧な韓国語で「この新村汗蒸幕で盗撮犯罪が行われ、それが猥褻な映像なって日本で販売されているんですよ。
その事実が判明したので、彼は日本からその事実を教えると共に盗撮犯罪がこれ以上広がらない様に来た・・・」と経緯を話したところ、声のトーンが下がり、黒木氏が出したキャプチャー資料を受け取った。驚きの表情で声を震わせながら、事実を認めた。
この状況については、週刊アサヒ芸能、第六十巻四十八号平成十七年十二月十五日発売号より抜粋して書きたい。
女性オーナーは唇をへの字に曲げ、時に目を細め、何度も映像に目を凝らし、ついには苦悶の表情を浮かべてこう言った。『ここに映っている汗蒸幕はうちではありません。』もとよりわれわれはそれを認めさせるために訪ねたのではない。
事実として盗撮犯罪が存在することを知ってほしかったのである。
するとそれを察したかのように女性オーナーがこう言った。『今まで思っていなかったことが起こってびっくりしています。お客様に対して、しっかりした対応を取らなければ問題になるところだったので、自分も今自覚しました。今までは習慣どおりやってきたけど、これからは気をつけなければいけないと思います。』
取材を終え出てきた成龍は、ほっとした表情だったことから、取材が成功したのは分かったが、盗撮犯罪による私の複雑な気持ちにはかわりなかった。
その後、私達は韓国の旧電気街である鍾路三街へ向かった。現在、ソウル市内で電気街と言えば竜山(ヨンサン)電気商店街という方が多いのだが、電子パーツやマニアックな物を探すのなら鍾路三街(チョンノサンガ)の方が揃う。
またカメラ関係品も多く揃っていることから、盗撮に関する情報を求めて回ったのだが、中々そこは儒教の分化が残る街だけに情報が少ない。だが、盗撮映像を裏で販売していると噂のある店を訪ねた。
50代中半の主人は我々を警戒しているのか、最初は販売していないと言い続けていたが、成龍が食い下がって問い詰めると、「ここでは販売していないが、撮影している人から直接買い付けてきてあげる」と言った。
私は「韓国の浴場施設の盗撮が欲しいと」と言ったのだが、「オプソヨ(ない)」と言われた。仕方なく、「日本人の盗撮映像は?」と聞くと、OKとのことだったので、お願いした。10分程待たされたのだが、持ってきたのは一般に販売されているDVD一枚だけだった。
日本のセルビデオ販売店の様にジャケットを見て購入することができないのだが、不満げに「ジャケットは?」と聞くと、「違反の物だからない」とのことだったので、仕方なく5万ウォン(約五千円)を支払い、ホテルに向った。
ホテルに着くと同時に、持参したPCで再生すると、映し出されたのは、ホテル王パリス・Hの盗撮映像だった。韓国渡航7年目にして初の騙されたのがこれとは……と苦笑いしたのは言うまでもなかった。
翌朝、私達三人が向ったのは、韓国最大の女性団体社団法人性暴力相談所(KSVRC)だった。事前に広報を通じて取材趣旨を伝えたところ、女性所長のリ・ミギョン氏が快く取材に応じてくれるとのことだったので向った。
その場所は、新村汗蒸幕から徒歩圏内の住宅街であり、一軒家に社団法人性暴力相談所があった。
簡単な挨拶の後、私達が持参した新村の汗蒸幕での盗撮資料を見せたところ、「これは間違いないですね。近くなので私も何度か行ったことがありますのでわかります。」と動揺交じりで答えたのだった。
リ・ミギョン氏は、韓国の盗撮の実態について話始めたのだった。 「韓国では98年に発覚したデパートのトイレ盗撮事件を契機に、隠しカメラなどで盗撮することを防止する法律があり、すでに厳しい取り締まり体制が出来ています。
日本でも具体的な二次被害が発生する前に、法律の整備が必要です。技術の進化に伴って、新しい犯罪が生まれるのはどこの国でも同じです。これは女性だけの問題ではなく社会全体の問題なので皆にも知ってもらいたい。私はさっそく性暴力を担当する警察当局に相談します。私達はこのままで放置することはありません。」 私自身、KSVRCの対応に好感を持った。それだけではなく、さすが韓国の民族性というのか。力強い民主主義のパワーを感じた。
週刊アサヒ芸能2005.12.15