『斗南先生』 - 中島敦
中島敦の伯父、中島斗南の話。主人公の名前は敦ではなく三造となっている。事実を元に多少脚色したり順序を変えたりしたセミフィクションであることを強調するためなのか。
他の作品でも三造という名前の主人公がしばしば登場しているらしい。一応wikipediaを見ていたら書いてあった。知らなかった。ろくに読めてないのが分かる。
そういえば初めて買った文庫本に入っていた『李陵』も、読み終えてしまうのが勿体なくて、取っておこうと思ってそのまま20年も経ってしまった。(まさか自分の人生がここまで派手に事故って小説も読めなくなるだなんてあの頃は思いもよらなかった。そう、僕の人生は事故っているのだ。)
斗南先生というのはすごく人柄が良くて素晴らしい人なのかなと思って読み始めると全然そういう話ではなくて、むしろ親戚にいる困ったおじさんというポジションだった。敦がこの伯父に不快感や複雑な反感を持っているのがそのまま書いてある。
ちなみに落ち着きがない・良く物を無くすなど気になることが書いてある。ADHDの性質がありそう。斗南先生に似ている、将来ああならなければいいが、と事ある毎に言われた敦もやはりそうなのか。あまりそういうイメージがなかった。
こんなもん、実話でなければ誰にも書けないだろ、と思った。
想像だけでこんな複雑な人物像を描き出し、こんな複雑な感情の機微を描くのは不可能だと思う。
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