ツイッタージャパンはわざとポンコツのフリをしている
本人でさえ忘れているような10年も前のツイートが突如掘り返され、文脈を無視してただ機械的にNGワードが含まれているなどの廉で規約違反が取られアカウント凍結ということが度々あり、Twitterは(もちろん本社ではなくツイッタージャパンのことだ)ポンコツなのだと市井で認知されている。
本当にただ無能なだけなのか。
「Twitterは大した理由もなく時々凍結になる」という風評を予め醸成しておくこと、まさにそれが目的でわざとポンコツのフリをしているのではないだろうか。つまりある時言論を封じ込めたいアカウントがあったとする。そのとき恣意的に凍結しても不自然に見えないよう平時から伏線を張っているのではないか。日常的に起こる大手アカウントの停止に既に誰もが「Twitterだからしょうがない」と気にも留めない。この中に時々「本命」が混ざっていても、もはや誰も気にかける者はいないのだ。
この考えはハンロンの剃刀——無能で十分説明できることに悪意を見出してはいけない——の真逆であり陰謀説そのものである。(ちなみに申し添えておくと知能の低い人ほど陰謀説を信じやすいそうだ。)
しかし嘘をつくなら堂々と・大胆にやった方が逆にバレづらいと昔から言われる通り、良い嘘が必ずしも巧妙な嘘とは限らない。稚拙な立て付けだが実はシンプルにして濃厚、弱点を長所に転じる一流の詐術なのかも知れない。「Twitterのような大手SNSがそんな真似をするわけがない」という固定観念は意識に隙を作ってしまう。更にこのやり方には「指摘するとバカが陰謀説を唱えているように見えるだけ」というメリットまであるのだ。いかにもトンデモといった話だが、しかし現に攻防一体の優れた施策になっているのが分かるだろうか。
他所の国の話だがこのような実例がある。
CIAが国民の通話を盗聴しているなどと言われても、それが10年前なら「何をバカなことを」「そんなことあるわけがない」とインテリほど相手にせず一笑に付しただろう。しかし後にスノーデンの暴露によってそれが事実だったと分かってしまった。半可通が常識を振りかざしていると真っ先に騙される。そして国家が公正に振る舞うだなんて時に幻想に過ぎないのだ。
日本政府に限っては大丈夫だなんてどうして言い切れるのか。国民の税金を注ぎ込んでSNSで世論誘導の工作をしているだなんて、信じがたい話だが「そんなはずはない」とは言い切れないものがある。
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さて、疑惑のツイッタージャパンだが、今年の2月に日本青年会議所とパートナーシップを結んだと報じられた。
リンクした記事の公平性はさておき「日本青年会議所とパートナーシップを結んだ」ことは事実だ。この団体の影響で思想的な偏りが生まれることを懸念する声があったが、僕は元々偏っていたところついにおおっぴらにやり始めたと感じた。これ以前からTwitter(もちろん本社ではなくTwitter Japan)のネトウヨアカウントの放置ぶりは目に余るものがあり、件の「ほとんど意味もなく時々起こるように見える凍結騒ぎ」も何故だか彼らには無縁だったからだ。百田尚樹、はすみとしこ、高須克弥など、無実の罪どころか明確に差別丸出しのネトウヨ諸氏が凍結されるところを不思議なことに一度も見たことがない。この手のアカウントは幾度となく通報されているであろうにも関わらず。誰が見ても分かるように、ツイッタージャパンは明らかに頰っ被りを決め込んでいる。
陰謀説を続けるので読んでほしい。
2017年に初の黒字化を果たしたTwitterだが日本の売上が特に好調で34%増だったと。確かに一時期広告が急増して邪魔だった記憶があるが、あれは黒字発表の直後だった気がするし、ただのカモフラージュだったのではないか。今はだいぶ落ち着いて広告も減ったが、再び赤字転落したという話は聞かない。タイムラインの仕様変更など(余計なことを)やり始めたのも黒字化発表のあとだったはずだ。
つまりツイッタージャパンの高収益には何か別の理由があるのではないだろうか。例えば内閣府から間接的に資金提供されている、といった理由が。(陰謀説をやると先に断ったはずだ。)
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ここでTwitterを離れてあのランサーズの話をしよう。
首相動静(2月25日)には確かに次のように書いてある。ゴシップ臭い記事しか見つからなかったが、ランサーズ社長と安倍首相が会食しているのは事実だ。
午後6時37分、官邸発。同38分、公邸着。金丸恭文フューチャー会長兼社長、秋好陽介ランサーズ社長、菅谷俊二オプティム社長らと会食。同9時11分、全員出た。
自民党擁護の書き込みをしろという依頼がランサーズで発注されているのは以前から度々話題になっていた。(毎度出てくるのは自民党だけで他の政党の話は見たことがない。)依頼元がどこの誰だか分からなくても、そういう “案件” が出回っていたのは事実だ。つまり受注した人もいるということ。SNSに特定の内容を書き込むだけで100円、200円。何度も繰り返せば少しはまとまった額になる。この少額の副収入を切実に必要とする人がいるというのは今の貧困化した日本では想像に難くない話だ。物笑いの種だった「工作員」が、まさか実在したなんて。
自民党総裁がこのような会社の社長と会食とは一体何の用だろうか。勿論分かるはずもない。だからゴシップ記事しか出てこないのだ。
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Twitterに限らずネットを良く見ていると肌感覚である程度の傾向が掴めるものだ。自分は本当はネトウヨなんてもうとっくに絶滅していているんじゃないかと感じている。では、ネトウヨのように見えるあの大量のアカウント群は何なのだろう。
ネトウヨ定型文には幾つかのパターンがある。“反日勢力” がそこかしこに潜んでいて日本はもうすっかり侵食されている、“奴ら” は国家転覆に向けて着々と活動している、といったB層の旺盛な愛国心・差別意識を刺激するもの。民主党議員は中国系・韓国系だというレッテル貼り。「やっぱり共産党は…」という仄めかし。野党が足を引っ張っている(つまり与党のやることは正しい)という印象操作。或いは「10年前の民主党政権の負の遺産に未だに苦しめられている」といったお決まりのもの。
マスゴミが報じないのは都合が悪いからだと自説を強化するのに利用し、報じた時には偏向があると嘯く。パヨクがAを批判したのにBを批判しないのはおかしいとズレた切り口で批判を始める。本来比較できないものを比較して強引な二択を作るということを良くやるが、事実がどちらに転んでもネトウヨの勝ちになる誤った二分法がいつも取り入れられる。お笑いにおいてツッコミ(後)がボケ(先)の行動の意味を遡って書き換えてみせるように野党議員の発言を「ブーメラン」の一言で別の文脈に組み替える。等々、極めて高度な詐術・詭弁術が駆使されている。
バズっているネトウヨ(彼らを「保守」とは呼べない)系のツイートを見ていると、これらのパターン(ガイドライン)を守りながらその時々の時事ネタを練り込んだ、非常に良くできたものが多かった。いつも感じていたのは知性と反知性が奇妙に共存しているという違和感だ。明らかに長期間に渡って広範な事例をカバーしていて、政治に詳しくなければ指摘できないようなことを取り上げながら、しかし同時にバカでなければできないような事実の歪曲をしているのだ。
最近だとまた傾向が変わっていて、議院内閣制や立法の仕組みを根本的に誤解したまま、一目でそれと分かる矛盾の上にデタラメな野党批判を組み立てているものが多くなった。まともな人間なら前提の矛盾や誤謬にすぐに気付くが、しかしあまりにもバカらしいので反論するのも面倒になり捨て置いてしまうようなものだ。
これには明確な利点がある。意図的に流言飛語を広めたい側からすれば、これに気付く層は扇動できないので元々相手にしていない。むしろツッコミを入れられたら台無しなので邪魔なだけなのだ。だからわざと指摘するのも面倒になるほどの馬鹿げた理論を展開しておく。すると無視してもらえるのでツッコまれずに済んで安全に活動でき「これを信じる程度の奴だけは信じる」ので効果は上がる。B層でも一票は一票だ。大いにやる価値がある。ついにデマどころか詐欺の手口を取り入れたのかと、気付いた時は嘆息したものだ。
良くできたデマだったり、良くできた詐欺だったりするが、いずれにしても気になるのはおよそ一定期間ごとにバズるのはどれも単発で同時多発性がないことだ。同調者があれだけ多い割には妙に層が薄い感じがする。何故ネトウヨ大絶賛ツイートは間隔を開けて個別にバズるんだろうか。投稿元のアカウントは毎度違えど「優秀なシナリオライターと、動員された工作員」の二者しかいないと考えると、この多様性の無さ・個性の乏しさにも説明がつきそうだ。
号令をかけている奴は優秀そうだというのは強調しておきたい。自分は本当にそう感じている。「狡猾」と言った方が正確か。小泉劇場の時みたいに広告会社が受注しているのかも知れない。
一方、イナゴのように現れては消える同調者には毎度北朝鮮の国民みたいなエキストラ感がある。昔のテレビショッピング感と言ってもいい。全く同じような投稿が、異口同音・付和雷同どころかほとんどコピペみたいに繰り返される。特定キーワードをちりばめる事に一定のノルマがあるかのようだ。リプライにぶら下がってるのにみんながみんな(まるでBOTみたいに)同じ言葉を繰り返す必要があるのかと、直感的に違和感を覚えるあの光景が、単に査定の都合だとするとなかなか面白い気がする。
実際のところ大量に書き込んでなんぼのテキストを文脈まで判断しながら評価するのは困難なはずだ。書き込み自体は人力でもその評価にスクリプトを使うのでスクリプト臭くなるのだとしたらちょっとした寓話性さえ感じる。
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果たして真相はどうなのだろうか。正式な公文書さえ改竄・紛失が当たり前の状況なのに、工作の証拠など出てくるはずがない。永遠に闇に葬り去られるのである。しかし何度追求されてもその度に無傷で逃げおおせるという成功体験を重ねると、人は次第に大胆になっていくものなのか。予算が大きくなると隠しきれなくなるものなのか。
政府はCOVID-19の世論対策のため海外向けに予算を計上した。以前から常態的にやっていなければこのスピード感で出てくる発想ではないと感じた。事実、このワシントンポストの記事を読んでみると次のように書いてある。(翻訳はDeepLを使った。)
Japan’s global public relations budget has risen sharply since Abe took over as prime minister in 2012, in an attempt to bolster Japan’s reputation as a reliable ally of the United States and as a democratic leader in Asia to counter authoritarian China.
2012年に安倍首相が就任して以来、日本のグローバル広報予算は急増している。これは、米国の信頼できる同盟国として、また権威主義的な中国に対抗するためのアジアの民主的リーダーとしての日本の評判を高める為である。
昨日今日の話ではなく2012年の安倍就任から予算が急増していると。海外向けにこれだけやっているのに、国内向けには全くやっていないなんてことがあるだろうか。
実際内閣府でも国内広報のために100億円もの予算が組まれたという記事があった。(新聞は軽減税率で黙らされ、大手マスコミは電通に逆らえないので、日本の政治について正しい報道をするものはもう海外記事とゴシップ誌しかないのである。)
小泉政権時代にテレビ・マスコミを大々的に利用するようになった自民党が、時代が変わりネットには手をつけないなんてはずがない。むしろこれだけの予算が割かれていてSNS工作が無いと考える方が不自然だろう。
本来世論操作はもっと巧妙に・自然にやらなければ意味がない。こんなにあからさまにやったらすぐにバレてしまう。孫正義のアンケートの件はこれが工作なら失敗なんじゃないかという気がするが、その通り事実これは失敗だったのでは? というのが僕の予想だ。100億円もの予算が組まれたばかりで新しい業者や人員が投入され現場が混乱して「本当にミスった」のではないだろうか。
こんなものはあくまで想像に過ぎないし、最初から陰謀論を書くつもりで書いているのだが、これが100%ないと言い切ることもできないのである。