『イッカボッグ』 - J.K.ローリング
面白かった。スピットルワースがウザい。
子供向けのファンタジーっぽい話なんだけど意外と暗い内容でローリング病んでるのかなと少し思ってしまった。
『クリスマス・ピッグ』にしろ『ハリー・ポッター』にしろそうだが主人公の両親が大体離婚したり死別したりしてる。ここにいつだって影を感じる。作家は自分の経験したことしか書けないのだ。哀しいことだ。
ローリングは圧倒的な文才があって感情によって世界を捉えてるタイプの作家としては至高の存在と言える(これは良く分からないけど適当に大袈裟言ってる)のだが、嗚呼ローリング自身に幸福で満ち足りた人生があれば。その幸福を委細余すところなく世界中の読み手に伝えられる能力があったのに。そう思わずにいられない。——しかし彼女が幸福で充実した毎日を送る英国人女性だったとしたら、そもそも小説なんて書こうと思っただろうか。創作とは常に病んだ人間の救済としてしか存在し得ないのではないか。…
文の作り
簡単な言葉で平易に説明する。余計な文学的修辞を使わない。難解な言葉や構文を避ける。こういう基本が徹底されていて感心した。内容への自信の現われだとも感じた。集中力がない時でもガンガン頭に入ってくるこの異常な読みやすさはすごいと思った。(単に児童書だからかも知れない。)
時々「ここで皆さんは○○と思うかも知れませんね」みたいに語り手が読者に向かってメタに語りかけてくる部分がある。芥川龍之介もしばしばこういう書き方をしていたのを思い出した。ちゃんと読み手のことを意識しながら書いてる文章の上手い人が自然にやるやつという気がする。
松嶋菜々子
Audible版ナレーションは松嶋菜々子。最初の出だしはまだ慣れてないようで少し聞き苦しいと感じたがすぐ気にならなくなった。そのうち(松嶋菜々子が)読み上げに慣れたからだと思う。誰が読んでるかなんて全く忘れて内容の方に集中できた。
俳優・女優を起用するのは悪くないと思う。日本市場で苦戦してる(に違いない)Audibleがユーザーに何が受けるのか試してる試行錯誤の痕が見えるようだ。少なくともそれをやろうとする姿勢には好感が持てる。色々試してほしい。個人的にアニメ声優が嫌いだからというのもある。(なんで嫌いかと言うと演じ分けが不自然なくらい大袈裟なのがイヤだから。)