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[19]魔女の守人

 ついにこの日が来た、という感じ。第一話から打ち切りの匂いがプンプンしていたからね。

 まずこの作品のすごかったのは、そもそもマンガというのは作者から読者へと一方的に届けられるものであって対話ではないのに、それなのに何故か「会話が噛み合わない感じ」がすることだった。
 一体この感覚の出所はどこなのか。自分なりに考えてみたのだが、多分、話の前後で(自己矛盾していると言い過ぎだけど)展開が急に飛びがちだからだと思う。普通はそれとない仄めかしや前フリがあって言外の何かに読者の意識をずらしておいて、丁度いいタイミングでそこにフォーカスするという感じで変転していく(と思う)のだけど、このマンガは突拍子もなく急に変転のタイミングがやってくる。だからちぐはぐな感じがするし、会話しているわけでもないのに「会話が噛み合わない」という一種異様な感覚に陥るのではないだろうか。

 序盤で読者の感情曲線から乖離してしまうともう何をやっても空気読めてないしスベってる感じになる。よりを戻すのは難しい。

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 ストーリーの建て付けはごく標準的。何のヒネリもない少年マンガのお約束モチーフを詰め込んだだけ。焼き鳥食いに行ったらねぎまとムネとももとカワとハツとぼんじりとレバーがあって塩かタレか聞かれた感じ。悪く言えばベタ、良く言えば王道。まあ意図的なものだろう。言ってしまえば鬼滅だってベタだったし。

 少年ジャンプの「当たるかどうか分からないけどとりあえず連載始めてみる」という姿勢は本当に素晴らしいと思う。これは「実際にやってみないと誰にも正解なんて分からないからとりあえず実装してみる」というVALVEのゲームデザインの原則と同じだ。優秀な企業ほどここを良く理解していて、逆に三一企業ほど正解だけ引こうとする。当たる馬券だけ買うなんてできるわけないのに。(それができると信じているのだ。無能なので。)予測の難しい業界では試行を制限するだけ悪手だ。
 連載してみてダメだったら打ち切れば良い、ゲームバランスが悪くなるのだったら後で調整すれば良い。こういう事後処理の用意があるから気軽に試行できるようになっている。少年ジャンプですぐ打ち切りになるのは連載の始めやすさと表裏一体なのである。

 このマンガの連載が始まって第19話まで続いたのにはそれでも温情があったと思うし、打ち切りは当然でも編集の仕事としては評価されるべきなんじゃないでしょうか。
 あと僕は打ち切りマンガが好きなのでこんなものを書いているけど、ジャンプでは始まっては打ち切りまた始まっては打ち切りが当たり前なので、訓練された読者は大抵生暖かく見守っているはず。

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