追放されたチート付与魔術師は気ままなセカンドライフを謳歌する。 ~俺は武器だけじゃなく、あらゆるものに『強化ポイント』を付与できるし、俺の意思でいつでも効果を解除できるけど、残った人たち大丈夫?
今7巻まで出てる。全部買ってしまった。最近知ってwebで無料になった回を数話分読んでいたが、普段見ないサイトで連載されてるので毎回存在を忘れるし、覚えておかないといけないのもストレスなので買ってしまった。しかしタイトル長過ぎるのどうにかならないんだろうか。タイトルだけであらすじの説明できるメリットとか考えてこうしたんだろうけどデメリットもそれなりにあると思う…。覚えられないし。
追放ものという流行りのジャンルなのも最初小馬鹿にして遠ざけていたのだが(そのようなハンデを乗り越え)話がめちゃくちゃ面白かったので結局買った。
冨樫フォロワー
何が嬉しいって展開のスピードとか粒度が丁度いいってところで、いちいち説明しなくても分かることは当然のように端折って先へ進んでくれるのでストレスがない。(学術書でも何でもそうだけど)話が冗長過ぎるとダルいし疲れる。長い上に大した話でもなかったりすると最悪。
話が十分に単純化されていて余計な肉付けがない、でもその精髄となる要所だけしっかり描いてるというのが大きくて、展開スピードを維持できるのも物語の解像度をやや低いところに敢えて保っているおかげだと思う。
異世界ファンタジーっぽいのに通貨の単位が「円」だったり、脇役の名前が田中とか佐藤だったり、猟友会が出てきたり、そんな細かい設定どうでもいいし、読者が知ってるモチーフを適当に流用して済ませるのはむしろ賢いと言える。重要でないところにコストを割く必要はない。
内容は正当な冨樫フォロワーという感じ。前述の展開スピードが速くて快適というところも含めて『呪術廻戦』と面白さの形は相似してる。
最近面白いマンガと言えば呪術廻戦だったので、自分はずっとマンガに「丁度いい冨樫」を求めてたのかなあ…と今気付いた。特別冨樫ファンという自覚はないのだが。
反少年ジャンプ
これは毎回言ってる不満なのだが、最近ジャンプ本誌があまりにも腐女子向けになり過ぎてしまって、程々に性的で魅力的な女性キャラを出すだけで人気が傾く、BLが捗る構成でないとそもそも連載が続かないなどの問題がある。その“コード”がない作品だったので本当にすがすがしい新鮮な空気を吸った気分になれた。
二次創作とファンダムからの文化的逆流によって本流の方が影響を受ける現象は多分そう珍しくもないし、むしろ好ましいという見方もあるかも知れない。ジャンプは単にその最先端になってしまっただけで、それが嫌なら別のマンガ誌を読めってことなのか…?
不満点
登場するキャラクターがみんな同じ思考パターンをしてるのが気になった。現実の世界ってそもそも別の思考体系で物を考え、別の行動原理で動いてる人というのがいて、速い遅い深い浅い以前にまず思考パラダイムそれ自体が全然違っているというところに相容れない強烈な他者性が存在するわけじゃないですか。でもこのマンガだとモンスターまでみんなほぼ同じような物の考え方をしていて「中身全部同じ人なのかな」と思うほどだった。
犬や猫を飼った事がある人は、動物って喜怒哀楽以外の人間にはない別の感情を持ってるのに気付くと思う。首が三個あるドラゴンとかそういう異質な生き物が、市井の人間と同じ考え方をしてるわけないし、500年生きた動物しか持ってない独自の尊厳感情とかあるはずなのに。モンスターがモンスターしてないのが特に気になってちょっと冷めてしまった。(良く考えたら人間の書き分けはそこまで酷くないかも知れない。)
あとこういう育ち方した人がこんな簡単に更生できるかとか、最初対立してた人同士が和解するまでの過程が多少杜撰だったり、トラウマ体験が割と簡単に有耶無耶になってたりと多少気になるところはあった。でも細かく正確に描写したら面白くなるわけではないという原則があるのであまり気にするのも無粋だろう。手が滑って書いてしまった。
マーガレット
最初このキャラがあんまり好きじゃなかった。マーガレットいるから買うのやめようかと躊躇したくらいだ。でもあれくらい猜疑心と警戒心が強い奴じゃないと生き残れない世界なので、読んでるうち段々コイツの性格の悪さに安心感を覚えるようになった。
西洋人はこれをどう読むのか気になる
というのは、この人間のねちっこさ・しつこさ・面倒臭さ、復讐心の強さや悪意の粘着度の高さが、完全に日本のソレというか、東洋稲作文化社会の精神性を反映してる気がするので、人口の稠密度が低い麦作で醸成された西洋文化の人たちがこれを面白いと思って読むのかどうかが少し気になった。(中韓の読者には受け入れられるに違いないという確信がある。)
そもそも「チート級にすごいサポート役だった俺が追放されたせいで古巣が壊滅。俺を正当に評価しなかったおまえらが悪い。ざまあ。」というフォーマット自体が本当に日本的で陰湿だと思う。これが一大ジャンルになるなんてどうかしてる。
続きに期待しています
こんなおもしろいマンガが勝手に供給されてくるの有り難い。