UXデザインと子育て
こんにちは。Timee Product Advent Calendar 2024の20日目を担当します、コミュニケーションデザイナーのyashikiです。
タイミーのコミュニケーションデザイナーは、webやバナーなどのデジタルコミュニケーション以外にも、事業所向けの資料やノベルティなど、様々な媒体を通してタイミーの魅力を届けています。
デザインのアウトプットだけでなく「媒体を通じてユーザーの体験が前後でどう変わるか」「そもそもユーザーの何を変えたいのか」などデザインの領域を広く捉えた際に、デジタル領域でなくともUXデザインの考え方が必要になってくるのではないかと私は考えています。
新しく取り入れる考えや学びは自分の身近な事柄に置き換えると理解が早い!ということで、UXデザインを日々の子育てに置き換えて考えてみます。
UXデザインとは?
「ユーザーの視点で考え課題を解決する」ことが目標で、中でも使いやすさや機能だけでなく「楽しさも含めて統合的に設計する」という点で子育てとの共通点を感じます。
子育てをしている親が意識していることは「親もこどもも、いかに機嫌を損ねずに過ごすか」。
日々降りかかる小さな問題に対して、楽しさを取り入れながら解決しくことで子育てが楽しいものに変わっていきます。
こどもの視点で捉えてみると、成長の過程で立ちはだかる障壁も、楽しさが含まれていることで良い成功体験につながります。そのことでこどもの挑戦する心を育てるのではないかと思います。
子育てからUXデザインを学び、UXデザインから子育てを学んでいこうと思います!
1.エンパシー(感情)中心のアプローチ
UXデザインでは、表面的な事象ではなくユーザーの本質的な課題を知るために感情や行動を観察することが重要です。
問題だけを見るのではなく、その前後を含めた行動・感情・発言をよく観察することで感情と行動のギャップを発見します。
子育てでも、こどもがその時どんな感情を抱いているのか、どんな行動をとっているのか、発言と行動に矛盾はないか、などを観察することで問題の本質に気がつく場面がよくあることに気がつきました。
例えば、子育てで一番多く直面する「つくったごはんを食べない」問題。
これは子育てする親にとっては一番の試行錯誤の場面であり、ストレス要因のひとつではないでしょうか。「さっさとごはん食べなさい!」とつい叱ってしまいますが、それでは解決につながりません。
UXデザインの考えを取り入れると「ごはんを食べてもらう」という問題のために「こどもが食べないのはなぜか」という課題の本質を、こどもの感情・行動・発言をよく観察すると以下のように様々な仮説が立てられます。
嫌いな食材が入っているのではないか
食材が大きすぎて噛み切れないのではないか
味付けが薄い(濃い)のではないか
食具が食べづらいのではないか
テレビに夢中になっているからではないか
おやつを食べすぎたのではないか
観察して見えてきた仮説を元に、食材や味付けを変えてみたり、ごはんの前のお菓子を減らしてみたり、こどもをよく観察し毎日少しずつ改善を繰り返していきます。
まさにUXデザインにおけるエンパシー中心のアプローチと同じ考え方ができます。
2.ユーザーテストとプロトタイプ
UXデザインではユーザーテストをしながらユーザーが最も良い体験につながるよう改善していくプロセスが重要です。
最初のプロトタイプがうまくいかなくても、フィードバックを取り入れながら改善していきます。
こどもの場合は、成長に合わせていろいろな習慣が変化していきます。
特に私の息子の月齢3歳児は、トイレ・歯磨き・お着替え・お箸など、こどもの自立に向けた習慣の変化が重なるため、日々改善を繰り返すことが欠かせません。
どんな習慣も一度でうまくいくことはないため、日々失敗と改善の繰り返しです。そんな中でも、こどもの良い成功体験を生むためにサポートをしていくことが親の役割です。
例えばトイレトレーニングで考えてみます。
最終的なゴールは「自分がしたいタイミングでトイレに行き、用を足す」です。私の息子の場合も、思い返すといくつか改善を繰り返しました。
こども用の便座を取り付けるといったトイレの環境を整えるところから始まりますが、それだけでは息子が自らトイレに行くことはできません。
まずは息子の自主性を引き出すために、オムツを卒業しパンツを履いてもらうところからスタートします。息子が好きなキャラクターのパンツを何種類も用意し、毎日選ぶ楽しみをつくることで自発的にパンツを履く習慣をつくります。
パンツを履けるようになったら、次はトイレに座ってもらうフェーズです。
「便座に座るのがこわい」という息子の恐怖心を拭うため、慣れるまでは親が付き添います。トイレの間は手を握りながら「トイレの実況をする」「歌をうたう」「クイズをする」といったように、トイレで用を足す=楽しいことという感情を根付かせます。
座ることに慣れてくると、次は「トイレに行きたい気持ちはあるけど遊びに夢中で間に合わない」。これが一番厄介です。
そこで「トイレの壁にボードを設置し、ボードに電車のシールを貼れる」という環境をつくり、トイレに行きたくなる仕組みにしました。
何回か繰り返してくるとボードにシールを貼るだけでは物足りなくなったのか、また失敗が続きます。そこで次は「ボードのシールがすべて貯まったらトミカ1個プレゼント」といったように報酬型にしてみるとまた自ら行けるようになり、最終的にボードがなくてもトイレに行く習慣が身につきました。
反応を見ながら少しずつ小さい改善を積み重ねて成功へと導くプロセスは、UXデザインのユーザーテストやプロトタイプの改善プロセスと同じと言えそうです。
3.コンテキストの最適化
UXデザインでは、ユーザーが利用する状況や環境=コンテキストに合わせた設計が必要です。
このコンテキストとは、ユーザーの年齢や能力、文化的な背景、物理的な環境や時間などです。
子育ての場面では、こどもの年齢や能力がコンテキストの主な要素となります。
こどもの成長に応じて環境を見直す必要があり、能力に合わせて障壁を減らしたり、逆にあえて障壁をつくったりしながら、こどもの能力の向上をサポートしていく必要があります。
ひとつ例に挙げると「片付け」に関してある発見がありました。
息子の保育園で保育士体験をする機会があったのですが、片付けの時間になると、床に無数に散らばっているおもちゃを3歳の園児たちが適切な場所に迷うことなく片付けていました。(家ではなかなか自ら片付けをしない息子も、誰よりも率先してお片付けをしていました…!)
よく観察してみると、片付けの環境にいくつか工夫がされていることがわかりました。
おもちゃの収納箱に片付けるおもちゃの写真が貼られている→「おもちゃと同じ写真の箱に入れる」という視覚的なサポートによって行動を直感的に導いている
蓋がついていない→「蓋を外す」という工程がないことで、おもちゃを入れるまでの動作が最小限
棚の高さは3歳のこどもが届く高さに設計されている→物理的な障壁を減らせており、さらに安全性も配慮されている
3歳児はまだ判断力や細かい手の動きが成長段階。その成長過程に合わせて物理的な障壁を減らし、こどもが「自発的に片付けをする」という行動に導く設計がされていました。
まさにUXデザインのコンテキストの最適化の考えが生かされていると感じる場面でした。
さいごに
「相手の視点に立つこと」「絶えず改善し続けること」そして「楽しい体験を生むこと」子育てもUXデザインも「正解がひとつではない」ため、どちらも試行錯誤の連続です。
常に「より良い体験」を目指して改善を繰り返すプロセスが共通点だと感じました。
子育ての中で日々ぶつかる問題も、こどもの成長や感情、環境によって柔軟にアプローチを変える必要があります。これはまさにUXデザインのアプローチと同じです。
最初に考えた案がうまくいかなくても、ユーザー(こども)の反応を観察しながら少しずつ改善を加え、より良い体験を作り上げていくことが求められます。
また、どちらも「楽しさ」が重要とも感じました。
こどもに自発的な行動を促すために「楽しさを含んだ体験」を設計することで、こどもにとって良い成功体験となり、その後のどんな障壁も前向きな気持ちで挑戦していけるようになります。
UXデザインでも、ユーザーが製品やサービスを使っている際に楽しさを感じることで、ポジティブな感情を想起させブランドのファンにつながると感じます。
そして、その前提に提供する側として「ユーザーに寄り添うこと」が最も大切です。
こどもの視点に立ち、その感情や行動をよく観察しサポートをすること。
UXデザインも同様に、ユーザーのニーズや感情に寄り添い、その人にとって最適な体験を設計することが求められます。
子育てとUXデザインの考えを通じて、ユーザーやこどもの視点に立ち、体験がより楽しくなるように心がけていきたいと改めて思いました。
最後まで読んでいただきありがとうございました!