【新国立劇場 初台アート・ロフト】マネキン工房のモノづくり~株式会社七彩のアトリエから~
本記事は、2021年2月に新国立劇場「初台アート・ロフト」ウェブサイト上で紹介したものに一部加筆・再構成しました。
”かわいい” も ”かっこいい” も、時代によって変わってしまいます。本当に”良いもの”を長く使う、そのためには価値を見抜く目が必要なんです。
国内外を問わず幅広くマネキンを製造されている、株式会社七彩さん。
新国立劇場では、1997年開場後間もない頃から展示用にマネキンを揃えてきました。それらのマネキン製作を手がけていただいたのが株式会社七彩さんです。オペラやバレエの舞台衣裳を展示するために、トゥシューズで踊っているようなポーズであったり、豪華な衣裳を着て歌うオペラのワンシーンを想起させるようなポーズのマネキンを特別に作っていただきました。
まずベースとなるマネキンを決め、そこから作り変えるために、マネキンの全関節をばらし、作りたいポーズに組み替えていったそうなのですが、そこでは、バレエダンサーが実際にしている動きを参考に樹脂を組み、筋肉の動きを再現していったのだそうです。そして、さらなる驚きは、トゥシューズで立つ瞬間の再現です。つま先の小さな一点だけで、重心全てのバランスをとっていますが、衣裳を着ても傾いたり、倒れたりすることはありません。その緻密なバランスも職人さんの卓越した技術から生まれているのです。
そうしてできた「新国立劇場 初台アート・ロフト」のマネキン。
ここで、同じマネキンを使った着せつけの例を2つご紹介します。
まず1つめはこちらです。
頭飾りの有無や、着物とドレスの違いがあっても、衣裳の個性が際立っているのがわかります。同じマネキンとは思えないですね!
次は、立て膝をついた、こちらの3つを見比べてみましょう。
衣裳が和服か、洋服かの違いだけではなく、人間か、動物かという違いにも見事に対応しています。衣裳がしっくりと場に馴染み、それぞれの持つキャラクターを最大限に表現できるのは、「いつでも衣裳が一番前に見えるように、空間演出の中心として存在するように」作られているからこその効果なのかもしれません。
展示では毎回、様々な演目のキャラクターに衣裳を着せつけます。そのとき、これらのマネキンに「原型のまま」衣裳を着せつける場合と、別の腕や足に入れ替えて、マネキンの動きや表情に変化をつけて着せつける場合があります。マネキン、衣裳、キャラクターの組み合わせをどのようにするか。経験値と感性が求められる瞬間でもあります。
このように多彩な表現力を持つマネキンの制作過程を、株式会社七彩のアトリエを訪問して動画に収めました。そちらを、ARCHIVE PICKUPとして再びお届けします。
■ARCHIVE PICKUP③
前編となる、vol.1はマネキンの原型になる人型を作る過程を見せていただきました。元々、作家集団からスタートした会社というだけあり、彫刻家が美術作品を創り上げる様子と変わりはありません。
「マネキンは目立ってはいけないのです」
「人間はもともと左右非対称のアンバランスなもの。だからこそ手仕事で作る面白さがある」とお話する職人さんたち。経験と感性が積み重なっていき、その人にしかできない手仕事となるマネキンの制作。
■ARCHIVE PICKUP④
後編は、【新国立劇場 初台アート・ロフト】マネキン工房のモノづくり~株式会社七彩のアトリエから~ vol.2をお届けします。型枠作りからいよいよ量産の準備に取りかかりますが、それでもまだまだ手仕事は続きます。
知られざるマネキン制作の裏側は一体一体に手を尽くす職人さんたちの世界でした。職人さんたちのマネキンにかける想いもぜひ映像でご覧ください。
次回より、現在開催中の「新国立劇場 初台アート・ロフト」『針と糸で繋ぐ未来への扉』展の各ブースの展示詳細をお伝えします。お楽しみに!
『新国立劇場 初台アート・ロフト』
現在の展示は、下記でご案内しています。
https://www.nntt.jac.go.jp/centre/news/detail/62_027592.html