真似事のはじまり
知らないうちにこの人を傷つけたかもしれないと、
飲み会でのその人のさりげない一言を聞いて、私はそう思った。
申し訳ない気持ち、後悔する気持ちが、いつものように心の中に現れ、
あの日私が図々しい口調で言った自嘲めいた言葉を脳裏によみがえらせた。
こういうモヤモヤには慣れている。何をしなくても、自然と消えてくれる。
ささいな罪悪感はほろ苦いというより、むしろちょうどいいスパイスのような感じがする。
それをつまみに、久しぶりに酒を頼んだ。
お互いよく知らない同士だから、余計な気を遣う必要はない。
しばらくして、その人がブログを書いていることを知って、それを読んだ。
少しばかり、その人のことを知った。
楽しいこと、辛いこと、考えたこと、感謝の気持ちなど…
素直な文章を読んで、その人を羨むようになった。
朱に交われば赤くなる。
だからこういう真似事を始めた。
こうやって疎かにしてきた自分の感情を記すことで、空っぽな自分が満たされると願いながら。