超能力者との対話で知った『神社に祭ってある鏡』の話
とある町のホステルへ、超能力者といわれる男性に会いに行ってきた。
その超能力者は、彼の力でどんな痛みや病気でもすぐに治してしまうという。
彼は、賢そうな雰囲気を纏った、眼鏡をかけた推定60代半ばの男性だった。
案内された部屋は、乱雑に置かれた本や謎の石ころが入った容器、曲がったスプーンの入ったペン立てなどが置かれたローテーブル、それを囲むソファ、壁につるされた複数の幾何学的な立体模型、様々なジャンルの本で埋め尽くされた本棚、そして奥に素敵な薪ストーブがあった。壁の一面には、横長の鏡が埋め込まれていた。
「どこを治すのかね?」と問う彼に、
「よくお腹を壊すんです」と答える母。
すると彼は、「太ももが痛むんじゃない?」と腸とは全く異なる位置にある母の脚をグッと押さえる。
「イテッ」と母が驚きの混じった小さい叫び声をあげ、超能力者の治療が始まる。
「すぐに治っちゃうんだよ」という、彼の不思議な治療法の細かな内容は伏せておこう。
星座療法というらしく、何十とある星座の中から、各臓器に対応する星座のパワーを使い、治す。
なぜ効くのかは本人もわからないそうだが、たくさんの患者が噂を聞き彼の元を訪れていることから、ちゃんと治った人が一定数いるのだろう。
部屋を埋め尽くす数えきれないほどの書籍の山を見れば、彼がこれまでの人生で得た膨大な知識と経験に基づいた治療法なのだと思う。
一通り治療が終わり、私は問うた。
「自分で体の不調を治すためにできることはありますか?」
すると彼は、当然のように、
「悪口をいわないこと。不平不満をいわないこと。そして、『ありがとう』『幸せ』『愛してる』といった良い言葉を口にすること」と教えてくれた。
「神様は、人間に素晴らしい力を与えてくれた。それは、【自分が言ったことがその通りになる】ということ。『病気が治りますように』とお願いをすることは、『自分は病気です!』と言っているようなものなんだよ。何かを願うときは、『私は元気だ』『病気が治った』と完了形にして言葉にしなさい。」
なるほど、状態を作り出すのは自分の心なんだと確信した。
そして、正面にある鏡を指さしてこういった。
「鏡の中の自分を見てごらん。鏡に写された自分は、今の自分ではない。未来の自分なんだよ。数か月・数年先ではなく、数日・数時間・数秒後の自分がいるんだ。鏡をみたら、未来の自分にあるべき状態を伝えなさい。『今日も綺麗だね』『今日も元気だね』『今日も幸せだね』と。」
古くから私たちが願い事を唱える場所、神社はその一つだ。神社の御神体は普段目にすることはないが、鏡である。自分の願い事を伝えている神様、つまり鏡には何が写っているか?
自分自身だ。
我々は何かを願うとき、自分自身に未来の状態を伝えているんだ。
そのことがとても腑に落ちた。全て自分が決めているんだと。
神社はお願い事をするのではなく、決意をする場所だったのだ。
彼の治療法は不思議なものだったが、効く・効かないを左右するのは、信じるか・信じないか、ではないだろうか。彼の超能力を信じるかどうかではなく、自分自身がよくなると信じることができる者が、自分を治すことができるのだと思う。
信じるということは、不確かなものに身をゆだねることを決断することであり、それは自分自身を愛することにも繋がっているのではないだろうか。
信じることは難しい。簡単に「信じる」と言うことはできるけど、信じることはとても勇気のいる行動だ。だからこそ自分を信じ、決断できた者は自分を愛することができるのだと思う。
その勇気を持つために何ができるだろうか。
『信じる勇気の育て方』なんでググって出てきたら嬉しいが、きっと自分で考えていくべきことなのだろう。
きっとその方法の一つは、決断をし、その通りに行動していくこだと考えている。決断をすることで、すべてが動き出すのだから。
日々、何事においても、自分の意思による決断を大切にしていきたい。
おわり
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