令和4年度神戸大学法学部第3年次編入学試験 合格体験記

 はじめまして、ひろです。
 私自身が受験期に、先輩方が残して下さった編入関連の情報に助けられたため、僭越ながら、私も自分なりに編入試験の情報発信をしていこうと思います。
 本記事が、皆様の合格の一助になれば幸いです。

1.はじめに

ステータス

 私のステータスは以下の通りです。本記事の情報を、どのような人間がどの立場から発信しているのかを把握する際に参照してください。

出身大学:関関同立
出身学部:非法学部(文系)
GPA:3.5/4.0
英語スコア(出願時):TOEFL iBT 80、TOEIC 805
予備校の有無:有(6月から半年ほど利用)
受験校(受験結果):京都大学(×)、神戸大学(○)、広島大学(昼間)(○)

※追記(2022/08/21)
 令和4年度神戸大学法学部第3年次編入学試験の成績開示結果は以下の通りです。上記の情報と併せて、本記事の情報の背景を知る際に参照してください。

〔成績開示結果〕
総合点:234/300
順位:B

※順位のランクについて
 A:1位〜9位
 B:10位〜18位
 〜合格ライン〜
 C:19位〜33位
 (以下、Fまで続く)  

全体的な流れ

 私が編入合格を志してから合格をいただくまでの流れは以下の通りです。

2〜4月
・編入合格を志す。出身学部の兼ね合いから、経済学部の編入合格を目指す。なお、当時はコロナの影響で英語のスコア提出が免除になる可能性もあったため、某経済編入サークルに加入し、専門科目対策を重点的におこなっていた。
5月
・法学に興味をもつ。正直、対策が間に合うか不安はあったが、法学編入へのシフトを決意。
・編入予備校の説明会に参加。そこでの話から、TOEFLの目標スコアを80に設定。同試験の対策を開始。
・TOEICは800あればとりあえず大丈夫との情報から、既に持っていた805で終了した。
・専門科目に関しては、説明会で勧められた本(末川)を読み始めた。
6月
・TOEFL 65取得。
・編入予備校に入校。本格的に専門科目の対策を開始。
7月
・TOEFL 74取得。
・専門科目はインプット重視。アウトプットは予備校の授業内でするもののみ。
8月
・TOEFL 80取得。目標を達成したため、TOEFL対策を終了。
・(自主的な)過去問演習開始。この段階では、どのような問題が出るのかとどのような回答が合格答案なのかを把握することに重点をおいた。できそうな問題はアウトプットもした。
9・10月
・過去問をひたすら解いて、必要な知識を補完する。正直、試験直前まで知識を詰め込んでいた。
・京大受験(10/31)
11月
・神戸大受験(11/3)
・広大受験(11/20)
12月
・京大不合格、神戸大・広大合格。編入試験終了。

2.試験対策

英語

TOEFL

 私がTOEFL 80を達成するために行ったこと、及び使用した参考書は以下の通りです。参考程度に参照していただければと思います。

・単語帳に関して、以下に挙げる単語帳を一通り全部やりましたが、正直、RANK4はやらなくてもいい気がします。とりあえず、RANK1・2は完璧にし、RANK3を時間と相談しながら仕上げていく感じでやればいいと思います。

・ETSの公式問題集は、問題形式と時間配分、必要な単語レベル等を把握する目的で使用しました。私は、TOEFL試験に関しては全くの初心者であったため、この問題集は試験の全容を知るのに大いに役立ちました。

・各パートの対策においては、『TOEFLテスト 大戦略シリーズ』を用いていました。一応、各パートの分を全て買いましたが、時間が足りず、スピーキングとライティングの対策はできませんでした。リーディングとリスニングに関して共通して言えることは、とにかく問題数をこなして慣れることが大切だと思います。その点で、この参考書は問題数が豊富であったため、かなり役立ちました。

 TOEFLは4技能の対策をしなければならず、内容も大学レベルにアカデミックであり、かなりハードな試験であると思います。しかし、目標点数から逆算して対策すべきパートとそうでないパートのメリハリをつけ、一定の量をこなして問題のレベルに慣れていけば、限られた対策期間内でもきっと点数は伸びてくれると思います。最後まで諦めずに頑張って下さい。

【使用した参考書】

TOEIC

 私の場合、英語のスコアはTOEFLで十分でしたが、昔TOEIC対策で使ってとても良いなと感じたアプリがあったので、一応この機会に紹介させていただきます。
 そのアプリが『abceed』というものです。有料アプリではありますが、このアプリで少なくともリスニング(part1〜part4)は全て対策できると思います。実際、私はリスニング対策としてこのアプリのみ使用しましたが、445/495取ることが出来ました。リスニング対策に苦戦している方は、一度試してみるのもありなのではないかと思います。
 もちろん、このアプリでリーディングも対策できますが、私にはあまり合わなかったのでリーディング対策では使いませんでした。詰まるところ、当該アプリをどのように使うかは、無料トライアルで実際に使ってみるなどして、ご自身で判断されれば良いと思います。
 なお、合格に求められる平均的なスコアレベルに関してですが、近年のスコアのインフレ傾向を鑑みると、最低でも700台後半、安心ラインは800〜850くらいかなと個人的には思っています。余力がある人は850以上を目指してみてください。


 英語のスコアに関しては、私よりも高いスコアを持つ方が惜しくも合格に届かなかったり私や私よりも低いスコアの方が合格している現状を見ると、今後万が一英語の点数が奮わなくても合格を諦める必要はないと思います。その一方で、このことは、英語で高いスコアを得ても専門科目をおろそかにすると合格に届かない可能性も十分にあるということも意味しているので、結論、英語のスコアには一喜一憂しないことをお勧めします。
 また、情報集めにおいて、経済編入組の方が高スコアを取っている方が多い印象がある(もちろん、法学編入でも非常に高いスコアを取得している方は一定数いますが)ので、法学編入だけでなく経済編入の先輩方が発信している情報を参照するのも有効だと思います。

専門科目

〔法学概論〕
・法学全体の基礎は、末川博の『法学入門』と『ウォーミングアップ法学』、TwitterのN先生や予備校同期自作のプリントで固めました。また、憲法、民法、刑法は『ウォーミングアップ法学』を主軸として、それぞれの分野でもう少し深く知りたいなと思った部分を下記の【辞書的に用いた参考書】を利用して補完していました。加えて、予備校でもらった再現答案を用いて、合格答案の書き方や不足している知識を補っていました。
・法学概論に関しては、『ウォーミングアップ法学』の知識を完璧にしていれば、知識レベルでは十分に対応できると思います。
・辞書的に用いる参考書は正直なんでもいいと思います。周りでは、伊藤真の入門シリーズを用いている者や、各分野の専門書を読んでいる者など様々でした。

〔一般教養〕
・過去問10年分程度を一周しました。なお、過去問を解く際は、問題形式や時間配分を把握することに重点を置いていました。
・過去問をやっていく中で、法学以外の社会科学系の教養知識があると良いと感じましたが、幸いなことに、4月までは経済学や経営学の知識を重点的に身につけていたため、知識レベルでの対策は過去問から知識を得る以外には特にしませんでした。

 点数は試験が終わるその瞬間まで伸びます。故に、最後の最後まで合否は分かりませんので、諦めずに頑張って下さい。

 私が専門科目対策で用いた参考書等は以下の通りです。

【頻繁に利用した参考書】
・末川博 『法学入門』有斐閣双書
・石山文彦他 『ウォーミングアップ法学(第2版)』 ナカニシヤ出版


【辞書的に用いた参考書】
・芦部信喜 『憲法』 岩波書店
・伊藤真 『ファーストトラック 民法』 弘文堂
・伊藤真 『ファーストトラック 刑法』 弘文堂
・久米郁男他 『政治学 補訂版』 有斐閣

その他

〔論文の書き方について〕
 法学編入の試験は大半が論文形式ですが、(小)論文の書き方に関しては『論文の教室』という本を参考にしていました。この本では、論理的に文章を書くためのノウハウや主張の説得力を高めるためのコツなどが、具体例を交えながら事細かに説明されています。
 私は受験生の頃、常に、この本で学んだことを念頭に回答していましたが、添削者から、少なくとも酷評をいただくことはありませんでした(文章構成に関して誉めていただけたこともありました)。したがって、まだ試験まで十分に時間がある方や、自分なりの回答の型が定まっていなくて困っている方などは、一読してみるのも良いかなと思います。

〔予備校について〕
 私はECCという予備校に通っていました。一予備校利用者の意見であるという点を踏まえて、下記の情報を参照していただければと思います。
 月並みですが、合格に必要なことは、「一定量の努力」を「正しい方向」で積み上げることです。その点で、予備校の存在は特に、「正しい方向」の把握において大変役に立つと思います。
 編入試験は一般入試に比べ情報量が少なく、それ故に「正しい方向」が見えづらい傾向にあります。したがって、ネット等を通じて情報収集をし、自分で「正しい方向」を模索することは、それなりの時間や労力が伴います。そこで、予備校に「正しい方向」への案内役をしていただいたくことができれば、自分は「一定量の努力」を積むことに専念することができ、より多くの時間を試験対策に充てることが出来ます。予備校利用は、私のような、試験までの時間がない人に特にお勧めします。
 その他にも、過去問や模範解答を入手することができたり、同じ目標を持つ仲間と切磋琢磨することができたりと、上記以外のメリットも多くあるため、高い授業料を払って予備校に通う価値は十分にあると思います。もちろん、独学での合格者も一定数いますので、予備校を利用しなければ受からないなんてことは決してありません。したがって、予備校の利用に関しては、ご自身の経済的状況と相談しながら決めていただければと思います。

〔試験環境について〕
 試験会場内はかなり寒かったので、寒い環境に慣れていない限りは防寒対策をしっかりなされると良いと思います。

3.おわりに

 編入試験対策の過程において、地道な暗記や多量の問題をこなすことに忌避感を覚えることもあると思います。しかし、量の中からでしか拾えない質があるのも確かです。やるべき事と上手に向き合い、合格に向けて頑張って下さい。
 皆様が良い結果を迎えられるよう、陰ながら応援しています。

 最後まで読んでいただきありがとうございました。

※質問箱の回答(追記(2024/01/05))

 質問箱閉鎖に伴い、これまで頂いた質問とそれに対する回答を当該noteに残しておきます。適宜参照していただければと思います。

〈編入受験一般について〉

・何校受験したか
→3校です

・受験校はどこか
→京都大学、神戸大学、広島大学です

・編入は独学か予備校利用か
→予備校(ECC)にお世話になりました

・過去問は予備校から取り寄せたのか、大学から郵送してもらったのか
→予備校にある分のみ利用しました

・編入学の勉強はいつごろ始めたか
→学部を問わず編入試験対策を始めたのは編入試験を受ける年の2月、法学部の編入試験対策を始めたのは同年の5月です。

・各大学の過去問の正答率はどのくらいか
→京大→約6割(60、61あたり)
 神戸大→法学概論は6割、一般教養は年によってまちまち(3〜7割弱)
 広大→(体感)6割以上

・編入試験を受ける大学に下見に行ったか
→ 試験8ヶ月ほど前に、京大には下見に行きました。神戸大と広大には行きませんでした。

・編入試験の勉強は量と質のどちらが重要か
→どちらも重要なのは前提として、より重要なのはどちらかというのであれば、個人的には量だと思っています。

・1日何時間くらい勉強していたか
→平均すれば6時間前後だと思います。

・成績証明書は基本的に1年後期までのものを提出すればいいのか
→基本的にはそれでよいと思います(実際、2年前期の成績を含めず(すなわち1年後期までのもので)出願した合格者もいらっしゃいます)。
 もし、2年前期の成績が必要な大学を受験する予定があり、かつ2年前期の成績が出身大学のシステム上どう頑張っても出願に間に合わない場合は、さすがに何かしらの救済措置があると思いますので、その旨を志望大学の教務係に問い合わせるといいと思います。
 なお、私は2年前期の成績を含めないと出願資格を満たせない大学も受験したので、2年前期の成績も含めて出願しました。
 文系編入なら、基本的には2年前期までのものになると思います。というのも、CAP制との兼ね合い等から、2年前期の成績を含めないと出願資格を満たせない大学もあるからです。しかし、大学によっては出願に必要な単位を「見込み」でも許容するところもあるため、2年前期の成績が必須かは分かりません(私は出願校の全てにおいて2年前期の成績を含めて出したので、2年前期の成績無しでの出願の厳密な可否については分かりません。申し訳ないです)
 よって、どこまでの成績を含めるかは、志望大学の出願資格(ex.単位は見込みでも良いのかどうか)等を考慮してご自分で判断されればと思います。

・三年時編入でも教員免許の取得は可能か。「教員免許が取りたい!だから教員免許が取れるところに行く!」って理由で受験校を決めてもいいのか。ちなみに、法学部志望で免許は地歴公民

三年時編入でも教員免許の取得は可能か。
→大学によって変わると思いますので、質問者様が編入したいと思っている大学の教務に確認するのが一番確実だと思います。(ちなみに、弊学理学部のとある年度の教職課程のガイドブックには、教職課程の履修について、「編入学生は、教育実習に行くために必要な単位の習得が難しく、卒業時までに取れない場合もある」ため「まずは、必ず所属学部教務担当係に相談すること」という記載がありましたので、ご参考までに)

教員免許が取りたい!だから教員免許が取れるところに行く!」って理由で受験校を決めてもいいのか。
→私個人の意見としては、そのような動機でも何も問題はないと思います。そもそも、どんな動機であれ(例えば「モテたい!」といった動機だとしても)、自分の勉強のモチベーションになるのならそれで十分であり、そこに優劣はないと思います。
 それに、そのような動機は別に悪いものではないと思います。地歴・公民ということは高校の教員免許だと思いますが、その指導経験の中で、大学受験の第一志望には惜しくも届かず、しかし家庭的等の事情により浪人もできずに進学するしかない生徒を持つこともあると思います。そのような時に、質問者様は「編入」という新たな選択肢をその生徒に提供できるという点で、教師として希少価値の高い存在になれると思います。ぜひ頑張ってください
 ちなみに、もし面接等で志望動機を聞かれる機会があり、質問のように答えるつもりなのなら、「なぜ教育学部編入ではなく、法学部編入なのか」についての答えを自分なりに準備しておくとよいと思います。

〈広大について〉

・広大3年次編入試験まで残り3ヶ月だが、3ヶ月でやることを教えてください
→質問者様の現状によって変わると思います。
①現在、英語の提出用のスコアで望む点数が取れているor英語のスコアを提出しない場合
→ひたすら法学のアウトプットに注力していいと思います。
 具体的には、問題を解く(アウトプット)→ 自分が今までインプットで身につけた知識を適切に使えるかの確認と、足りなかった知識の認識 →不足分の知識を補完(インプット)→問題を解く(アウトプット)(これ以降、同じミスには厳しく、新しいミスは許容)の繰り返しです。なお、基礎知識の確認には神戸大や同志社大等の過去問(入手できる範囲)を利用するのも効果的です。また、広大の過去問を解く際は時間配分を特に意識して解くといいと思います。というのも、広大の編入試験問題はしばしば表やグラフが与えられているため、処理する情報量が比較的に多いです。したがって、制限時間のうち情報処理の時間と回答時間とのバランスをどうするかを、過去問を解きながら試行錯誤して準備しておくといいと思います。
 筆記試験用の英語対策は、センター(共通テスト)で8割程度以上取れる方なら、とりあえず後回しでも大丈夫だと思います。
②英語の提出用のスコアで望む点数が取れていない場合
→今月で意地でも目標点数に届かせましょう。私も友人も8月に伸びたのでまだ希望はあります。最後まで自分を信じて頑張ってください。英語が終了したら、①と同じです。

・広島大学法学部の編入試験における小論文では、専門的な知識は問われるか
→ 従来と同様の試験内容であれば、直接的には問われないです。(もっとも、間接的には問われていると思うので、一定程度の専門知識は有しておく必要があると思います。)

〈編入学後について〉

・非法学部出身とのことだが、編入学後はどのくらい単位が認定されたか
→47単位です

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?