![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/171139104/rectangle_large_type_2_5d5a77dddfadb9e6cb514d1746b6a739.jpeg?width=1200)
【アジア本】鉄道と愛国 中国・アジア3万キロを列車で旅して考えた
ビジネスパーソンにおすすめのアジア関連書籍を、新刊を中心にNNA編集スタッフがセレクト。今回は、鉄道好きの新聞記者が、中国やアジア各地の高速鉄道商戦の舞台裏を明かす1冊を紹介。
![](https://assets.st-note.com/img/1737450956-M9LvB6F2jy17AaRUhSk3zVJO.jpg)
高速鉄道ビジネスの激戦描く
日本の新幹線商戦を約30年間追う新聞記者であり、「鉄ちゃん」と呼ばれる鉄道オタクの一面も持つ著者。アジア各地に足を運び、高速鉄道計画の舞台裏に鋭く迫る。
第1部では新幹線の技術をあっという間に習得し、高速鉄道商戦で強力なライバルとなった中国の勃興を紹介。第2部の舞台はベトナム、ラオス、マレーシアなど、東南アジア各地を訪ねたルポが中心。現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」を掲げて攻勢を仕掛ける中国と日本のバトルを軸に、各国の思惑を解説する。
鉄道商戦は国のメンツのぶつかり合いでもある。それを示す政府や企業関係者らのコメントが生々しい。今年10月に開業したインドネシア高速鉄道は、日中の受注バトルの末に好条件を提案した中国が勝利。しかし、当初の計画とは違いインドネシア政府が国家予算を投入せざるを得なくなったことに「それみたことか」と吐露する日本の官僚。対して著者は「どちらを選ぶかは、造る国が決める話」と冷静さを忘れない。
各地の鉄道に乗りまくり、利用する庶民たちの声も細やかに伝える。鉄ちゃんならではの観察眼はさすがで、旅情を誘う。
「鉄道は、国家と個人、政治と経済、歴史と現在が交差し、越境しあう場所だ」という著者の言葉をかみしめて、鉄道旅に出たくなる1冊だ。
鉄道と愛国
中国・アジア3万キロを列車で旅して考えた
吉岡桂子(著)
2023年7月13日 岩波書店 2,860円