地平線の相談
本日は細野晴臣(人生の師)、星野源(熱心な弟子)著“地平線の相談”を。
日常のゆる〜い困り事から仕事の心配、男女関係の深い悩み事まで。時に深淵でセキララで心和む 〜帯文より〜
この本は雑誌TV Brosで掲載されていた対談連載をまとめたものでたとえば、どうしたら何種類もの鍵を見分けられる /やめられないとまらない。いま「目の前にある食べ物」/なんであんなに可愛い子たちが、たくさんAVの世界へ行くの? などなど…
本書ででてくる話題のほとんどがゆるくて、くだらなくて、どうしようもない。
感動的なはなし、涙なくしては聞けないはなし、勇気を与えてくれるような清らかなはなしとは一切無縁。
しかし、阿川佐和子さん著の“聞く力”で「無口であろうと多弁であろうと、語り方が下手でも上手でも、ほんの些細な一言のなかに、聞く者の心に響く言葉が必ず潜んでいる。決して立派な話である必要はない。オチのないような下らぬ話の隙間にも、その人らしさや人格が表れていて、そこに共感したくなるような、なにか小さな魅力があれば、それだけでじゅうぶん」と綴っていましたが、まさに本書はそれ。
“恋ダンス”で国民的なアーティストになった星野源さんの魅力が十分に文章から滲み出ていて、ファンじゃなくてもボクもファンになってしまいました。
“大したことじゃないのに、すぐ謝っちゃうんです”という相談(問いかけ)で、星野さんに「それは江戸前だね」と細野さんが諭します。“うかつ謝り”と言って、江戸っ子は足を踏まれたほうも「自分もぼんやりしてて、うかつでした」と謝るという文化があったそうで、そのほうが物事がスムーズにいき、足を踏んだ方も、踏まれたほうから謝られたら面白い気持ちになるからと、マスターホソノ。
国際社会では「日本人は誤りすぎだ」と叱咤されることもありますが、世界中でもっと“うかつ誤り”が増えれば、もうちょっと平和になるのになぁなんて本書を読みながら思いました。
ほかにも“無理をしてでも言ってみたい、粋なジョークに憧れていて。”では、東日本大震災で生まれたいろいろなエピソードの中で星野さんが大好きな話として、江頭2:50分さんが被災地に救援物資を届けた際、江頭さんから物資を受け取った被災者の方が書いた日記のエピソードを披露。
「地震が起こった2時46分で私たちの時計は止まっていた。でも、彼が来てから4分進んだ。」
2時50分になったという粋なジョークに、たいへんな状況なのにジョークを言えるバイタリティがカッコイイと綴っていて、ここにも人柄がはみ出してます。
よくビジネス書のコーナーに“ホニャララ雑談力”的な本が陳列されていて、“一流の雑談はお金も人も引き寄せる”なんて品のない帯文をみつけたりしますが、そんなフェイクな雑談ではないリアル雑談集の本書。