「ない仕事」の作り方
デビューして今年で35年、「仏像ブーム」を牽引してきた第一人者であり、「マイブーム」や「ゆるキャラ」の名付け親としても知られるみうらじゅん。とはいえ、「テレビや雑誌で、そのサングラス&長髪姿を見かけるけれど、何が本業なのかわからない」「どうやって食っているんだろう?」と不思議に思っている人も多いのでは?本書では、それまで世の中に「なかった仕事」を、企画、営業、接待も全部自分でやる「一人電通」という手法で作ってきた「みうらじゅんの仕事術」を、アイデアの閃き方から印象に残るネーミングのコツ、世の中に広める方法まで、過去の作品を例にあげながら丁寧に解説していきます。「好きなことを仕事にしたい」、「会社という組織の中にいながらも、新しい何かを作り出したい」と願っている人たちに贈る、これまでに「ない」ビジネス書(?)です。〜(「BOOK」データベースより)〜
生活の糧を得るために働く。この事が技術の進歩によって失われてしまうかもしれません。
その一つに人口知能が人間の知能を超え(シンギュラリティ)、今ある仕事がロボット(元々ロボットはチェコ語で労働という意味)に取って変われてしまい、いま必要な仕事ほどなくなってしまうという予測もありますが、今ある仕事がなくなってしまうのなら、今ない仕事を作り出そうというのが今回の推薦書“「ない仕事」の作り方”です。
自らを“一人電通”と称し企画、プレゼン、接待まですべてを一人で行うみうらじゅん氏。どんな仕事であれ、「やりたいこと」と「やらねばならぬこと」の間で葛藤することが多いと思いますが、それはみうら氏も同じだと本書で語っています。そこで肝心なのは、そのときに「自分ありき」ではなくて、「自分をなくす」ほど、我を忘れて夢中になって取り込んでみることで、そこから新しいことが生まれると。
ゆるキャラブームを例にしてその仕事っぷりが説明されていくのですが、思っていた以上にハードワーク。
全国各地の物産展で所在なさげに立っていた妙な着ぐるみ(当時はマスコットという呼び方が一般的だった)にたまらなく「哀愁」を感じ、そんな地方マスコットには名称やジャンルがなかった事に気づいた、みうら氏。
それを「ゆるキャラ(macの変換でもきちんとゆる(平仮名)キャラ(カタカナ)と変換される!)」と名付けそこから自分洗脳へ。人に興味を持ってもらうためには、まず自分が、「絶対にゆるキャラブームがくる」と思い込まなくてならなくそれに必要な事として「無駄な努力」をあげてます。好きだから買うのではなく、買って圧倒的な量が集まってきてから好きになるという戦略。人は「大量なものに弱い」という分析からわかってきたそうです。
ただ集めただけだとただのコレクターになってしまうため、それを「発表」し書籍やイベントに昇華させて初めて「仕事」になると説明。
また人はよくわからないものに対して、すぐに「つまらない」と反応しがちで、それでは「普通」に終わってしまう。「ない仕事」を世に出すには、「普通」では成立しないため、「つまらないかも」と思ったら「つま...」ぐらいのタイミングで、「そこがいいんじゃない!」と全肯定し、「普通」な自分を否定することで、より面白く感じられ、自信が湧いてくると叱咤激励しています。
本書を読んでいてわかった事は、「逆境は面白がったモン勝ち」という事。そして「好きなものは誰も勝てない」という事。ピンチはチャンス、いま置かれている状況も見方ひとつで好転するという事例が多く収められています。
経済学者のジョンメイナードケインズは「孫の世代の経済的可能性(1930年)」の中で“100年後人類は歴史上初めて余暇をどう楽しむか悩むようになる”と仕事がなくなる事についてユニークな見方をしています。
今の世の中では無駄で必要ないと思われていても自分にとって“これいいんじゃない?”と思っているコトやモノの中にこそ人生を楽しむヒントやビジネスチャンスが隠れているのかも。