"死んじゃった大統領"シリーズ1、2、…3?
いやね。日本語で書くとよくわからないVシネかB級映画のシリーズみたいなタイトルですがJay-zの"Dead Presidents"について書いてみます。
シリーズなんてあったんか?かと思われますが細かく分けると3種類のDead Presidentsが存在しております。
まず本曲が出る経緯として、それまでJaz-OやBig Daddy Kaneらのハイプマンとして長い下積みを経て94年にDame Dash、Kareem "Biggs" Burkeと共にRoc-A-Fella Recordsを設立。
設立当初はDameの車でテープなどをコツコツ手売りで売りさばき、自主制作ながら”In My Lifetime”でソロキャリアをスタートさせます。後にシングルをリリースする契約でPay Day Recordsからこの曲が再リリースされますがロイヤリティ関係で折り合いが付かなかった為に早々に離脱し、契約で得た資金を元にPriority Recordsを配給元にようやくレーベルを本格的に動かす事に。
本作はJay-z自身初で超名作アルバムである96年発の"Reasonable Doubt"より先行カットになります。
プロデュースは盟友SkiでLonnie Liston Smith/A Garden of PeaceのピアノリフとNas /The World Is Yours(Q-Tip Mixの方)の
"I'm Out For Presidents To Represent Me(金はオレから生み出される)"
という一節をフックに添えた1曲で彼の裏稼業であった売人にまつわる事を歌った曲になります。
(95年の時点でも食えてなかったのか当時も運び屋をやってたとか…)
レコードについてはB面にPolitics As Usual、Feelin' It、Can I Live、Can't Knock The Hustle、22 Two'sの5曲のsnippetが入っているのが最初に出た盤となり
後にPriority Records/Freeze Records配給でFoxy Brownを客演に招いた"Ain't No Nigg@"を追加してジャケ付きの正規盤と白ラベルのリプレスが何枚か出ています。
ただカップリングの"Ain't No Nigg@"の方がキャッチーだった為にコチラの方が人気だったようです。
カップリングの人気が出てしまった煽りを受けてか、はたまた彼のハスラーとしての意地かは解りませんが新しくリリックを書き直して"Dead Presidents Ⅱ"と銘打たれてにReasonable Doubtに収録されます。
結果として前のバージョンはシングルのみ、新しいリリック版はアルバムのみと同じ曲でも2つバージョンが分かれました。
Ⅱは韻を踏みに踏みまくってえらい事になっており、Rolling Stone誌の企画「Jay-z's Song Top50」でもこのⅡが堂々2位にランクインするくらいでJay-z本人も2000年くらいに「あれを超えるリリックはまだ書けてない」と言うくらいに相当気合いの入ったものだったのが伺えます。
━━━━それからかなりの時が過ぎて2007年。
自分が記憶している限り、DJ Green LanternとLenny SがRoc-A-Fella所属アーティストのExclusive音源やフリースタイル、Green Lanternがリミックスした音源でまとめられたレーベルオフィシャルミックステープである
"Green Lantern and Lenny S. present the OFFICIAL R.O.C. STARS Street Leak - Jay-Z American Gangster"にて
"DP3"というタイトルでDead Presidentsの3作目が初めて世に出ました。
出た瞬間、ワンバースだけの1:30くらいの音源であったのにも関わらず、さまざまなストリーミングサイトでこの曲だけ抜かれてアップされ時の反応や沸き立ちっぷりたるや凄かったです。
実はこの曲、元々は引退作(ご存知の通り、後に復帰)として出した"The Black Album"に入る曲だったようですが他の曲に埋もれてお蔵入りになりリリックが同アルバムの"Moment Of Clarity"や他の収録曲に流用された経緯があるようです。(Just Blaze談)
確かにBlack Album製作時の裏側を追ったドキュメンタリー"Fade To Black"でもビート選びに苦戦した映像があるように選曲にはかなり慎重だったと思われます。
これは憶測ですが、敢えてリリックも他の曲に流用し一度解体した曲を再び録音した経緯として考えられるのはデンゼル・ワシントン主演で実在したハーレムの麻薬王Frank Lucasの半生を描いた映画"American Gangster"のコンセプトアルバム兼自身10作目で映画と同名のタイトル"American Gangster"のに入る予定があったんではないかと思います。
なんたってDead Presidentsシリーズと映画の内容やテーマが完全にマッチしますからね。
で、実はDead Presidents Ⅲは一枚だけレコードで出ていたりします。
ヨーロッパプレスのブート(多分UKプレス)でAmerican Gangsterに収録されているNasとの"Succsess"とタイトルソングの"American Gangster"の2曲と共にコッソリ収録されています。
が、しかし内容は上記リンクと全く同じ音源。
つまりミックステープのタグやらノイズが入った短い音源をそのままにプレスしたモノなのでメチャクチャ楽しみしていた分、聴いた瞬間に「ああああ」と膝から崩れ落ちましたね〜…
ところが2013年にTwitter上でJay-zにファンからの「Dead Presidents Ⅲって完成してるの?」という質問に対して、この曲のデータを保管していたプロデューサーであるYoung GuruとJust Blazeの2人へ直々に「アップしていいよ」とリプで飛ばして各々SoundcloudやYouTubeに完全版をアップするという急転直下な展開が起こり、突如として約6年も陽の目を見なかった曲の全容が明かされました。
何故2人がこの曲のデータを持っていたかというとJust BlazeがネタであるJoe Haider/Wookey Holeを持ってて、ビートをYoung Guruが作ったからだそうです。
"I'm Out For Presidents To Represent Me, Now You Know(金はオレから作られてんの知ってんだろ)”
と、フックの最後でJay-z自身、録音時であろう2006•7年当時はDef Jamの社長(President)のポストにおり
Ne-YoやRihanna、Young Jeezy、Rick Ross、Nasといったお抱えアーティスト達の売り上げが好調だった事のダブルミーニングを挟みつつ、ちゃんとサンプリングされたNasのヴァースを踏襲してるのも良いですね。
Dead PresidentsⅢは結果としてフィジカルリリースはお蔵入りですが、果たしてJay-z史上シリーズ化している楽曲Dead Presidentsですが「Ⅳ」はこの先現れるのでしょうか?
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