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エッセイ:6行目のつづき*3「電車」

うたた寝をしていたことに気付く。

緩急のついた揺れや、情報量の多い音たちさえも
心地よい子守歌になっていたらしい。

ゆっくりと目を開けると、
向かい側にはおじいさんが座っていた。


その背中よりも少し大きいくらいの
深緑のリュックを前に抱えて、
マスクの上に見える目はぱっちりとしていて
一点を見つめている様子は可愛らしい。

隣には仕事帰りらしい女性が座っているけれど
さらにその隣には同じようにリュックを抱えた
同じ年代の男女が談笑していた。

眠気を引きずったままの頭で記憶を辿る。
たしか5人ほどで同じ駅から乗り込んだ気がする。
それから一列に座って皆で話をしていて、
それから…


またうたた寝をしていた。

目の前あたりから床を踏む感じが伝わってきて
目が覚める。

向かい側のおじいさんが
立ち上がりながらリュックを背負うところだった。
めいっぱい膨らんだリュックの重みが伝わる。

隣の隣の人たちに別れを告げて
また来週と返事を受けて
人混みに紛れながら降りていく。

あの可愛らしい様子には、
仲間たちと話したくてうずうずしている姿も
含まれていたな、と考えながら席を立った。

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