エッセイ:6行目のつづき*5「愁色」
大学図書館からの帰り道
小腹が空いたので大好きなパン屋へ。
交差点に差しかかったとき
建物の死角にパトカーが停止していた。
少しの予感が湧き起こるとほぼ同時、
やんちゃなバイクがパトカーとは垂直方向に
赤信号を通っていった。
それを見つけたであろうパトカーは
横断する歩行者をゆったりと待ったのち、
やんちゃを目がけて走り出していった。
夜になると、ここの大通りは
バイク集団の音で賑やかになるときが多い。
横断歩道を渡って、
閉店していないか心配しながらパン屋のほうを覗くと
水色の可愛らしい扉から皎々と光が漏れていた。
昼食に捨てた選択肢を思い出して
カレーパンを一つ、あとはシナモンロールを一つ
トレーに乗せてレジへ向かった。
「313円」の文字を見て財布を探っていると
店員さんが「ななひゃく・・・」と言うので、
少し驚いて顔を上げると彼女は恥ずかしそうに笑う。
目の前の駐車場に止まっていた車のナンバーに
気を取られていたらしい。
私も微笑み返して店を出た。
昨日買ったボディソープは
予想以上に好ましい香りで気分は晴れやかだが、
ここを旅立つまでに使い切れるのかは分からない。
明日実家から米が届くが、
ここの住所に宛てられた荷物もそれが最後だろうか。
嗚呼。
どんなに小さなことたちでも
今の私を寂しい気持ちにさせるには
どれも十分すぎるくらいだな。
私は春に就職する。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?