エッセイ:6行目のつづき*4「嗜好」
映画を観終わってキッチンに立ったとき
「酒を嗜む」とはどれくらいがそれにあたるのか
そんなことをふと考えた。
アルコール度数だったり、飲む量だったり、
きっと私は嗜むところまで辿り着けていないだろう
と思う。
キッチンに立った
というのは、別に料理をしようとしたのではなく
映画のお供たちを片付けるために、である。
その日は生ハムとポップコーンだった。
あとは、9パーセントのレモンサワー。
おつまみのセンスはさておき、
それらは食器に盛り付けられたわけでもないので
片付けも何もない。容器を捨てるだけで済む。
それでも
キッチンに立った
というのは、缶に残ったレモンサワーを
シンクに流す必要があったから。
飲み切ることはできないだろうと予想もしていた。
9パーセントのものを買うなんて、
私にとっては非常に珍しいことだ。
どうして買ったのか
お酒の力で寝付こうと思った
という、それは少し後向きな理由だった。
その日は長い昼寝をしてしまったせいで
眠れそうになかった。
加えて、その日は布団でじっとしていると
寂しさに苛まれそうで、
どうにかそれを避けようとしたのである。
観ようとしていた映画が長めのものだから
お酒が強ければ、ちびちび飲むこともできる
というのも一応は理由の一つ。
飲めばすぐに眠くなる人間なので
効果は抜群だと思っていた。
ところが、やはり私には楽しめない領域で
残った分を飲み干してくれる人も側におらず
シンクに流すことになってしまったのだ。
もったいないことをするな
との批判も承知である。
洋画に登場するような
小さなグラスでウイスキーやらを一口で飲む姿
あれは成人した現在の私にとっても
憧れのままだろうと思う。
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