エッセイ:6行目のつづき*1「人柄」
その日は2時間後に雨が降る予報で、
傘を持って部屋を出た。
夏らしい日差しの中に
この傘は溶け込まないだろうけど、
濡れて帰るよりは良いと思って空を見る。
ドアを閉めて向き直る間に、
同じように部屋を出る様子の男性が
少し小さく見えた。
一階の扉のところで鉢合わせるのを避けるために、
いつもよりゆっくりと鍵を閉めることにした。
大学まで歩く間ずっと、彼は少し前を歩いた。
手に傘を持っていたので
彼も天気予報を確認してきたのだろう。
近くを歩く群れの中に傘を持つ人は少なかった。
もう着くというところで、彼は急に左へ曲がった。
てっきり授業に向かっているのだと
思っていたけれど違ったらしい。
と思うと同時に、彼がどこへ向かうのか気になって
目で追っていた。
大学の近くにカフェがある。
彼はそのマスターらしき人に
挨拶をしに行ったということがわかった。
それじゃまた、と言ってこちらに戻ってきた。
彼の人柄を
僅かながら垣間見たような気がした。
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